ICT活用事例

高齢化する地域を支えるデマンド交通システム、10年以上の取り組み実績からスマートシティ構想への進展

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

2020年2月5日、茨城県笠間市とNTT東日本茨城支店は、スマートシティコンソーシアムの協定を締結しました。この取り組みの発端は、笠間市のデマンド交通事業運営のパートナーとしてNTT東日本がシステム提供をしていたことです。日本各地の自治体で進行する住民の高齢化。そうした中で、日常の通院や買い物などの移動手段を、自家用車以外に確保するために、笠間市は、2006年の市町合併をきっかけに新しい社会交通事業を検討。「デマンドタクシーかさま」の運用を始めました。現在はNTT東日本の「Bizひかりクラウド お出かけデマンド」が使われています。地域の移動手段を確保する取り組みから、さらに今後のスマートシティ構築に向けた戦略まで、笠間市のご担当者にお聞きしました。

笠間市

  • 笠間市笠間市

(左から) NTT東日本 茨城支店 第一ビジネスイノベーション部 第二バリュークリエイトグループ バリュークリエイト担当 主査 国府田 裕氏、笠間市 市長公室 企画政策課 主幹 三ツ石 泰大氏、笠間市 市長公室 企画政策課 課長 北野 高史氏、NTT東日本 ビジネスイノベーション本部 テクニカルソリューション部 第四プロジェクトエンジニアグループ 佐藤 百華氏岡直樹氏、栃木県 産業労働観光部 観光交流課 観光地づくり担当 主査 丹野佳奈氏、栃木県 産業労働観光部 観光交流課 課長 手塚章郎氏、栃木県 産業労働観光部 観光交流課観光地づくり担当 副主幹 垂石彰氏、NTT東日本-関信越 栃木支店 ビジネスイノベーション部 第一バリュークリエイトグループ 担当課長 平沼邦光氏

ご利用いただいたソリューション

Bizひかりクラウド お出かけデマンド

ソリューション導入効果

  • 地域の実情に合わせたデマンド交通事業用のシステムの導入、運用をサポートし、10年以上にわたる安定した運用を実現した
  • オペレーターへのきめ細やかな導入研修とオペレーターが使いやすいユーザーインターフェースで、利用者に安定した質の高いサービスが提供できた

NTT東日本を選定した理由

  • 導入検討時期に実用化されていて安定した運用状況を視察できた唯一のデマンド交通事業用のシステムであり、実績から信頼できたこと
  • 具体的なシステム導入の作業も含めて、笠間市の課題や要望に応えてくれたこと

デマンド交通事業で地域高齢者の「足」を継続して確保したい

――笠間市ではデマンド交通事業として、「デマンドタクシーかさま」を10年以上にわたって運用していらっしゃいます。まず、「デマンドタクシーかさま」の導入経緯についてお聞かせください。

北野氏:現在の笠間市は、2006年に旧笠間市、旧友部町、旧岩間町の3自治体が合併して誕生しました。合併前から民間の路線バスが採算に乗らず撤退を始めるような時期で、公共交通の今後のあり方について検討が必要な状況でした。その中で、旧3自治体でそれぞれ事情が異なっていたこともあり、2007年に地元のバス事業者やタクシー事業者も交えた公共交通会議を設置し、デマンド型の公共交通を市全域に導入しようという方針が固まりました。

高齢化が進む中で、路線バスは採算が合わなくなる一方、タクシーは自宅や目的地をドアツードアで結ぶ利便性はありますが利用者には料金の負担がかかります。デマンド交通は、バスとタクシーの中間に位置するもので、乗り合い型で乗車効率を高めながら、ドアツードアの移動をサポートします。料金もバスとタクシーの間で、公的負担をすることが前提ですが、利便性と利用者の負担のバランスが取れます。そのような観点から、高齢者の通院や買い物の足を確保するために、デマンド交通事業を開始することを決め、その事業に必要なシステム導入を検討することにしました。

――2008年2月に「デマンドタクシーかさま」の運行を始めています。デマンド交通事業用のシステムとして、NTT東日本の「デマンド交通システム(Bizひかりクラウド お出かけデマンドの前身)」を採用されましたが、選定のポイントはどこにありましたか。

北野氏:検討した当時は、NTT東日本と、他社のシステムの二者択一といった状況でした。その中で、実際に安定した運行をしている事例を事前に確認できたのはNTT東日本のシステムだけでした。実績のあるシステムであり、信頼できると判断しました。

当時から現在まで市長を務める山口伸樹市長にも、NTT東日本のデマンド交通システムについて説明をしました。すぐに、市長自身が先行事例を視察され、ご自分の目で確認した上で本格的な導入となりました。

笠間市 市長公室 企画政策課 課長
北野高史氏
※2020年3月時点

新市域を7つのエリアに整理
エリア分けは使い勝手を考え、道路1本にこだわる

――「デマンドタクシーかさま」導入時の概要と、利用を推進するための工夫、そして運行開始当時の状況を教えて下さい。

北野氏:「デマンドタクシーかさま」運行開始当時は、合併してできた新しい市域を7つのエリアに分けて運行しました。エリア内であれば利用者の必要に応じて、乗車と降車が自由にできます。一方、病院、ショッピングセンター、役所といった目的の場所が、自分の住んでいるエリア外にある場合でも、最低1回の乗り換えをすれば移動できるという仕組みにしました。

初期のエリア分け設定は非常に難しい作業でした。どの道路でエリアを区切ればいいのか。道路1本で利用者の使い勝手が大きく変わってしまいます。その際には、NTT東日本の担当者が隣の席に座って、一緒にモニターに表示された地図を見ながら、本当につきっきりでエリアの調整や乗務員などの事前研修に当たってくれました。こうした地道なサポートが、スムーズな導入スタートにつながったと思います。

実際の運行は、市内の4つのタクシー事業者と共同で行うことになりました。バス会社とは、路線バスの路線再編、再整理を行い、導入後の路線バス廃止はなくなりました。バスやタクシーとの利用分担を図るため、デマンドタクシーの運行時間は8時15分から17時まで日中帯の1時間単位の便とし、朝晩はバス、タクシーを利用してもらうように調整しました。

デマンドタクシーの運行開始前には、主に高齢者が集まる施設や会議などに出向き、利用方法の説明やアンケート調査を行いました。7つのエリアに分けて、エリア外でも乗り継ぎによって目的地に到着できるという仕組みは説明が難しかったですが、説明を尽くすことで「理解していただけたかな?」と思いました。ところが、実際に運行が始まったら、当初はほとんど乗ってくれません。事前にチケットを買って予約をして乗るデマンドタクシーの仕組みは、すぐには浸透しませんでしたが、その後は私たちの心配をよそに、利用者は着実に増えました。計画段階で「1日最低200人」の利用者をめざすと言ってしまってどうなるかと思いましたが、1年ほどで目標を達成でき胸をなでおろしました。


10年以上の運行実績を持つ「デマンドタクシーかさま」の車両


「デマンドタクシーかさま」の仕組み

オペレーターの業務をシステムが支える
当初の充実した研修で利用方法を習得

――NTT東日本のお出かけデマンドは、どのように「デマンドタクシーかさま」の運営をサポートしていますか。

三ツ石氏:当初からずっと同じシステムを継続して利用しています。途中でオンプレミスのデマンド交通システムから、クラウド型のBizひかりクラウドお出かけデマンドに移行し、オペレーターが使うパソコンを入れ替えましたが、操作性の良さは変わっていません。

予約受付は3人のオペレーターが電話で行い、システムに利用者や送迎地点の情報を入力します。電話がかかってくると、自動的に利用者情報が表示され、送迎地点の利用履歴もすぐに表示されますので、間違いなく簡単に予約情報を登録できます。複数の利用者の予約情報を調整して、デマンドタクシーの配車を決めていく流れです。

オペレーターに話を聞くと、NTT東日本の担当者が熱心に、システムの操作に習熟するまで協力してくれたので使い勝手の面で困ることはなかったと言います。7人のオペレーターは、コンピューターの操作に詳しいわけではありませんでしたから、スタート時のていねいな研修でゆっくりと慣れていけたことは非常によかったと思います。おかげでスタート時から、10年以上にわたりオペレーターを務めている女性もいるほどで、彼女たちの活躍が事業の安定した運営を支えています。

これまで長年の経験で、オペレーターは、利用者の電話の声だけで誰からの予約かが分かるほどだと言います。お客さまの電話番号を入力するとすぐにプルダウンで利用履歴が閲覧できることや、また「世帯メモ」には利用者の個別の情報を登録でき、オペレーターが情報を共有できることなど、きめ細やかな住民対応にNTT東日本のシステムが一役買ってくれています。

――「デマンドタクシーかさま」に対して、利用者の反応はどうでしょうか。

三ツ石氏:2014年に市民アンケートを取った際は、88%が満足しているという高い結果が得られていました。直近では2019年に電話調査と県立中央病院での聞き取り調査を行いましたが、否定的な意見はなく、役立つ公共交通機関になっていると感じています。

これまでの間に、7つのエリア間で乗り継ぎをしながら目的地に移動できる仕組みから、市内を3エリアに再編して乗り継ぎなしでほとんどの医療機関や商業施設などの目的地に移動できるように拡大しました。こうしたサービス改定の時も、NTT東日本の担当者が迅速かつていねいに対応してくれました。さらに、平日だけの運行から、土曜日も運行するようなサービス拡大も進めています。ただ、そうした中で、乗り継ぎなしで行けるようになったのはいいけれど、待ち時間などが長くなったというクレームが増える傾向にあります。

北野氏:乗り継ぎなしの利便性を追求すれば、待ち時間や乗車時間は長くなります。車両台数を増やすことも限界がありますので、今後どのようにサービスを提供することが、住民のみなさんの移動手段となるデマンドタクシーを継続するために必要なのか、改めて検討が必要な時期にきているとも感じています。

――今後の展開についてお話が出ました。「デマンドタクシーかさま」の今後や、モビリティなどを含むスマートシティづくりへのお考えをお聞かせください。

北野氏:「デマンドタクシーかさま」の利用は増えてきましたが、同時に市の負担も大きくなっています。そこで2019年11月に、障がい者の割引制度の導入と併せて基本料金を300円から100円値上げして400円にしました。移動手段の継続的な確保を考え、公共交通機関の再々編も視野に入れた施策です。デマンドタクシーは県内の同様のサービスの中でもトップクラスの利用者がありますが、笠間市の高齢化は県の平均を上回っていますから、今後の移動手段のあり方を継続して検討していきます。

国は経済発展と社会的課題を解決する新しい社会として「Society 5.0」を提唱しています。笠間市でもそうした流れを受けて総合戦略を作り変えています。笠間市は、これまで、NTT東日本の協力で「デマンドタクシーかさま」を長年にわたって運用してきたことから、先進的な事業のパートナーとして信頼感を持っています。そうしたことがスマートシティモデルの検討開始につながり、2020年2月にNTT東日本 茨城支店やNTT研究企画部門などと共同で「笠間市スマートシティコンソーシアム」の協定を締結しました。交通と経済活動などの関係を分析し、スマートシティの新しいモデルの確立をめざしています。柔軟で迅速な対応をしてもらえるNTT東日本との関係から生まれてきたコンソーシアムにより、移動をサービスとして捉えたMaaS(Mobility as a Service)などの検討を進めてスマートシティ実現に向かいたいと考えています。

笠間市 市長公室 企画政策課 主幹
三ツ石泰大氏
※2020年3月時点
基本的に3人のオペレーターがBizひかりクラウド お出かけデマンドを使って予約を受け付ける体制にしている オペレーターは市内の地図を見ながら、利用者の希望を聞いて予約を受け付ける

※上記ソリューション導入期間は2008年7月~です。
※文中に記載の組織名・所属・肩書・取材内容などは、すべて2020年3月時点(インタビュー時点)のものです。
※上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷
組織名 笠間市
組織概要 茨城県のほぼ中央部西寄り、東京の100キロ圏内に位置し、水戸市、城里町、栃木県茂木町などに接しています。2006年に旧笠間市、旧友部町、旧岩間町が合併して誕生しました。人口は7万5564人です(2018年1月1日時点)。
メルマガ登録はこちら
「ICT活用事例」の一覧に戻る

ページトップへ