近年よく耳にするようになった無人店舗。アメリカや中国で無人店舗はブームになり、日本でも登場するようになりました。現在どのような無人店舗が存在しており、どのような課題に直面しているのか紹介していきます。
無人店舗には2種類ある
無人店舗についての明確な定義はありませんが、一般的に認証技術やセンサー、カメラなどを駆使して、レジ業務などのオペレーションを省人化した店舗のことを示します。「無人店舗」といっても、店員がまったくいないわけではなく、商品の補充などは店員が行います。あくまで、代行できるところは機械に任せることで、業務の効率化を図ることを狙いとしています。
現在の無人店舗は、大きく2つに分けることができます。ひとつは、商品を読み込むためのセルフレジを設置した店舗。従来店員がレジで対応していた業務を来客が対応するパターンです。2つめは、商品を手に取り、そのまま退店ができるレジなし店舗です。この場合は認証ゲートを通ることなどで精算が完了するシステムになっています。
無人店舗のメリット
無人店舗は、企業にとって以下のようなメリットがあります。
労働力不足の解消
無人店舗の導入に伴う省人化によって、労働力不足の解消が期待できます。少子化に伴い日本の人口は2010年から減少しつづけ、これに伴い労働人口も減少しています。総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、日本の15~65歳にあたる生産年齢人口は2021年で約7,318万人。生産年齢人口は、1990年代半ばから現在まで、毎年減少しています。今後も生産年齢人口が減少していく可能性は十分に考えられます。この状況を打開する解決策のひとつとして、無人店舗が注目されています。
来客の行動データを業務改善に活用できる
無人店舗では、店内に設置されたカメラやセンサーによって、来客のさまざまなデータを取得できます。どのような商品を購入したかがわかるのはもちろん、「一度手に取ったものの、商品棚に戻した商品」などを把握できるものもあります。こうしたデータをもとに、店舗のレイアウトを変更したり、来客の傾向に合わせた販促プロモーションを打ち出したりできるようになります。
顧客層の拡大
店舗の業態によっては、無人店舗にすることで営業時間を長くすることができます。休業日や深夜など営業時間を拡大することで、新たな来客を取り込むチャンスが生まれます。
万引きや強盗などの犯罪抑止
無人店舗に設置されたカメラやセンサーは、万引きの抑制につながります。事前に個人情報を登録しないと入店できないレジなし店舗であれば、より一層の犯罪防止が期待できます。また、無人店舗はキャッシュレスでの支払いがメインとなるので、現金を狙った強盗リスクの減少も考えられます。
無人店舗の事例
古着の販売とリラクゼーションマッサージ店を運営する株式会社ダルマンは、これまで古着をインターネットで販売していましたが、収益性の低さを課題としていました。収益性を高める方法を模索していたところ、無人店舗という販売形態を知り、出典を計画。新型コロナウイルス感染症の影響で非対面のニーズが高まっていたことも後押しとなり、東京都中野区に無人店舗「ムジンノフクヤ」をオープンしました。当初は店舗内の券売機を使った販売方法を採用。来客が自由に要望を書き込める連絡帳を設置し、要望に応えて店舗の改善を続けた結果、約半年で1日平均20~30点を販売するようになり、毎月の売り上げもインターネット販売の2倍になりました。今後はキャッシュレス決済やRFIDタグなどの導入も検討しているとのことです。
無人店舗の課題、今後について
無人店舗には多くのメリットがあり、スムーズな買い物体験の提供にもつながりますが、いくつか課題も抱えています。
費用がかかる
複数のカメラやセンサーなどの設置が必要となるので、無人店舗を実現するには初期費用がかかります。予算に応じて部分的に自動化する、などの対応も考えられます。
事前登録が必要になる
レジなし店舗の場合、入店するために事前登録が必要になります。事前登録は万引き防止や決済の省力化に役立ちますが、有人店舗と比較すると入店するためのハードルは高く、機会損失につながる可能性があります。
業態により完全無人にできない
コンビニエンスストアでは、商品の補充やたばこや酒購入時の年齢確認に加えて、宅配サービスの窓口業務や公共料金の収納代理などの業務もあります。現段階の技術ではこれらを自動化するのは難しい実態があります。業態、業種により何が自動化でき、できないかを把握し、その特徴に合わせて自動化を進めることが大切です。
まとめ
近年はコンビニエンスストアをはじめとするさまざまな業種・業態で、無人店舗を見かけるようになりました。無人店舗は労働力不足の解消、顧客層の拡大や万引きなどの犯罪防止につながりますが、事前登録の手間や導入にかかる多額の初期費用など、解決しなくてはならない課題もあります。しかし今後も無人店舗は増加し、より来客にとって便利な店舗になるように、進化を続けていくものと思われます。
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