2022.3.4 (Fri)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第11回)

製品開発のDX化のカギを握るCAE解析とは?

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 現在、さまざまな企業にDX(デジタルトランスフォーメーション)化の波が押し寄せています。製造業の現場も例外ではありません。従来の産業製品の開発では、まずコンセプトや仕様を決定し、設計を行い、その後試作機を作成し検証・分析を繰り返したうえで量産品の製造に進む、というプロセスを踏んで開発を行っていました。これに対して、多くの企業でプロセスの一部、あるいは大部分をデジタル化し、試作機の検証・分析をCAE解析によって代替しようとする動きが進んでいます。

CAE解析とは

CAE解析の概要

 CAEとはComputer Aided Engineering(計算機援用工学)の略で、コンピューターによるシミュレーションを活用した解析を示します。場合によっては、解析に用いられるツールをCAEという用語で表現することもあります。

 CAE解析を使えば、何度も試作機を作成して検証・分析を繰り返さなくても、コンピューター上に再現したモデルを用いて、どれくらいの振動や荷重に耐えられるか(強度問題)や熱の伝わりやすさ(熱問題)といった検証・分析が行えます。

 CAE解析ではほかに流体解析や電磁気解析、音響解析など多岐にわたる分野で活用可能で、導入が進んでいます。業界によっては、試作品の作成をまったく行わず、CAE解析で検証のすべてを完結する場合もあります。

 株式会社メイテックが2020年に実施したリサーチによると、製造エンジニアの33.8%以上が「自社でCAE解析を導入している」と回答。従業員1万人以上の企業では、51.9%がCAE解析を導入しているという結果となりました。すでに製造業では、多くの企業でCAE解析が導入されていることがわかります。

従前の設計評価手法とCAE解析の比較

 CAE解析がよく使われる解析のひとつに、製品の強度評価のための「応力解析」があります。従来のやり方では、まず机上の強度計算に基づいて製品を試作し、その後の検証で不具合や強度不足が見つかれば設計を見直して再度試作、というプロセスを何度か繰り返す必要がありました。

 一方で、CAEによる応力解析を用いれば、コンピューター上に試作品を可視化できるため、設計段階で問題点に気づくことが可能になります。

CAE解析の特徴

CAE解析のメリット

 CAE解析の活用には多くのメリットがありますが、その主要なものとして開発期間の短縮とコスト削減が挙げられます。試作品を作成して行う検証には時間・コストがかかりますが、CAE解析ではその必要がないため、材料費や開発期間、工数、人件費などを削減できます。

 コンピューター上のシミュレーションで検証を行うことができるCAE解析であれば、試作機の廃棄なども発生しないため、環境への負荷も少なくて済みます。

 また、試作機を作成して行う評価分析では試行回数の制限なく検証を行えませんが、CAE解析であれば、解析の試行回数を多く確保できます。設計段階で、まだ具体的な方向性が明確になっていない時点でも、「あたりをつける」ためにシミュレーションを実施する、というような使い方もできます。

 特殊な環境下での使用が想定される製品は、試作機のテスト時に同じ環境を再現するのが難しい場合がありますが、CAE解析であれば可能になります。たとえば、「摂氏100万度の場所での挙動」や「時速200kmで雪道を走行している自動車が急ブレーキを行った場合にどうなるか」など、現実の世界では再現が困難な状況下でのシミュレーションも、CAE解析なら実現可能になるわけです。

 さらに、分析結果がコンピューター上の画面に表示されるため、変形や破損といった目に見える結果だけではなく、本来目に見えない応力や電磁波、物体の内部などを可視化することができるのもCAE解析のメリットです。

CAE解析における注意点

 一方で、CAEによるシミュレーションは、精度がコンピューターとソフトウエアの性能に依存する点に関して注意が必要です。複雑なシミュレーションを行う場合は、処理に時間がかかってしまう場合があります。

 これらの課題解決のために、クラウド型のCAEツールの導入も進んでいます。ただしネットワーク環境が貧弱である場合、クラウド型のCAEツールでは効率は大きく低下してしまう可能性があります。CAE解析においてネットワークインフラの整備・増強は検討すべきでしょう。

 なお、CAE解析を行うためには材料力学や熱力学、流体力学などの知識に加えて有限要素法や境界要素法といった数値解析の知識もあり、CAE解析用ソフトウエアが扱えるCAEエンジニアが必要となります。

CAE解析の構成要素

 CAE解析は、解析内容の決定、データ収集、CADソフトによるモデル作成を経て、CAE解析ツールを用いたシミュレーション、という流れで行われます。CAE解析ツールでは、まずプリプロセッサで作成したモデルと解析条件を入力・定義し、ソルバーで計算、計算結果をポストプロセッサで分析するという手順で解析が行われます。

CAE解析の事例

 自動車や住居で使用されるシール材を主に製造しているゴム製品メーカーの西川ゴム工業株式会社では、独自のCAE解析システムを開発・導入し、自動車ドア用のシールの開発において、CAE解析を実施し、製品開発の効率化を図っています。ドアの開閉時のシールの挙動をシミュレーションし、どの部分に圧力がかかるかなどを可視化するのに活用されています。

まとめ

 コスト削減や開発期間の短縮などが期待できるCAE解析。技術の進歩にともない導入の敷居が大きく下がり、さまざまな業界でCAE解析が活用されるようになっています。現在は、試作機によるテストとコンピューター上でのシミュレーションが併用されているケースも多いですが、このまま技術の進歩が進めば、いずれCAE解析が主流になり、試作機によるテストを実施する必要がほとんどなくなる日が来るのかもしれません。

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