ICTで製造業はどのように変わるのか(第5回)

ファクトリーオートメーション(工場の自動化)とは?今後はどうなる?

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 ファクトリーオートメーション(工場の自動化)とは、工場で行われている加工、組み立て、原材料・製品などの運搬や、全体の管理の自動化のことを示します。従来、人の手によって行われていた作業を自動化することで、生産の効率化、品質の安定、人件費の削減などが期待できます。今回はファクトリーオートメーションの特徴や、今後について整理していきます。

ファクトリーオートメーションとは

 繰り返しとなりますが、ファクトリーオートメーション(工場の自動化)は工場内の生産に関わる受注、設計、出荷などさまざまな工程を自動化するためのシステムのことで、生産効率の向上やコストダウンが期待できます。すでに一部の設備を自動化している工場は少なくありません。より高度な技術を用いて、品質向上や製造過程の変更に柔軟に対応できるよう設備投資する工場も増えています。

 では、ファクトリーオートメーションには具体的にどのような機械が導入されているのでしょうか。

 一例として、産業用ロボットが挙げられます。産業用ロボットは、加工、組み立て、検査などさまざまな作業を人間に代わって行う機械です。日本工業規格では、産業用ロボットを「産業オートメーション用途に用いるため、位置が固定又は移動し、3軸以上がプログラム可能で、自動制御され、再プログラム可能な多用途マニピュレーター」と定義しています。

 これらを踏まえたうえで、いくつかの産業用ロボットを紹介します。

垂直多関節ロボット

 人の腕はひじや手首など7軸の自由度を持つと言われます。垂直多関節ロボットは4~7程度の可動軸をもつタイプで、軸数が多いほど動きの幅が広がります。人間の腕と似た動きができるため、人間の動きに近い作業を得意にしています。

スカラロボット

 スカラロボットは、水平多関節ロボットとも呼ばれています。垂直多関節ロボットとは異なり水平方向からの作業しかできませんが、部品の押し込み作業や、つかんで別の場所へ置く作業に適しています。物体をつかみ上げる場合は、水平方向の軸回転の組み合わせでハンド(ロボットの手)を対象物の真上まで動かし、垂直の直線軸でハンドを近づけます。

パラレルリンクロボット

 複数のアームで1つの先端を支持するタイプの産業用ロボットです。ゲームセンターにあるクレーンゲーム(クレーンを操作して景品を持ち上げるゲーム)のアームのような形をしています。先端には吸着ユニットなどが取り付けられます。ベルトコンベアーの上などに取り付けられ、流れてくる製品を素早い動作で持ち上げ、運ぶことができます。

直交ロボット

 単純な構造で、直線的な動作しかできません。主に部品の搬送や組み立てに使われます。複雑な動作はできないものの、仕組みがシンプルなため低価格であることが特徴です。

 ファクトリーオートメーション化を進めるうえで、産業用ロボットと並んで欠かせないのがセンサーです。センサーとは対象となる物の情報を集め、電気信号やデータに変えて出力する装置です。センサーで得た情報を収集・分析して、それぞれのロボットの動作に対する指示を出すという一連の流れをシステム化することで、自動化を進めます。

ファクトリーオートメーションのメリット

 ファクトリーオートメーションにがもたらすメリットについて解説します。

コスト削減

 自動化が進むことで、必要な人手は少なくなり、人件費の削減につながります。現在、人件費が安い国に工場を設立し、生産の拠点を海外に移す企業は少なくありません。しかし生産拠点として工場を移した国が経済的に豊かになった結果、人件費が高騰する事例も多く報告されています。工場の自動化を進めることで、生産拠点に人件費が左右されない体制を構築できます。

品質の安定

 人の手で作業を行うとどうしても品質に差が出てしまいますが、自動化することで品質が安定します。

工場稼働率の上昇

 産業用ロボットでの作業は、メンテナンスの時間を除けば24時間稼働が可能になり、生産性の向上につながります。

作業環境の改善

 重労働や危険な作業を産業用ロボットに任せることで、従業員の負担やリスクを軽減することができます。

ファクトリーオートメーションの事例

 一般社団法人 日本ロボット工業会の「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018」より、ファクトリーオートメーションの事例を紹介します。

少量多品種生産に対応したレトルト製品パレット積み工程のロボット化

 株式会社釜屋は、レトルト製品製造工程における、箱積工程にパレタイズ(荷積み)ロボットを導入しました。多様な形状の段ボール、多様な積み方に対応すべく専用ハンドを開発し、省力化を実現しています。

 パレタイズロボット導入前は作業員が重労働を強いられていましたが、作業員の負担を大幅に軽減することに成功しました。それにより、他の工程に人員を割り振ることができるようになりました。

画像処理技術により重量計算を行う焼鳥整列ロボットシステム

 株式会社コスモジャパンは、焼鳥製品の串刺し機への原材料投入工程に、スカラロボットを導入。大きさにバラつきのある原料を3次元画像処理による形・重量・方向・順番を考慮し投入します。

 スカラロボット導入前は、1ラインあたり3〜4人の作業員が必要でした。また、目視による瞬時の判断などが求められていたため、機械化は難しいとされてきました。しかし、画像処理データから、形状、重量などを判別し最適な組合せを決定することができるように。作業に必要な人数は1人となり、従来のような作業技術を必要としないため、熟練の作業員でなくても担当できるようになりました。

免疫検査抗体製造における凍結真空乾燥準備工程へのロボット導入

 トラストメディカル株式会社は、インフルエンザ診断に使用する凍結真空乾燥の準備工程に双腕ロボットを導入。機材の取出し・検査に活用することでランダムピッキングと検査の自動化を実現しました。導入によって、同工程の労働生産性は7.5倍と、想定を超える成果を得られています。

画像処理方法の工夫による食器洗浄ロボットシステムの省コスト化

 株式会社吉野家は、洗浄後の食器仕分け工程において、スタッフから敬遠されがちだった食器の洗浄作業の一部自動化に挑戦。食器に特殊マーカーを付け、画像認識によって食器を判別して洗浄を行います。導入前よりも洗い物にかかる時間が短くなり、スタッフが調理や接客サービスに集中できるようになりました。今後は全自動の食器洗浄ラインの開発にチャレンジするとのことです。

小売店向け現金(釣銭)出荷作業の効率的なSIプロセスの実現

 カンダコーポレーション株式会社は、釣銭作成工程において紙幣投出機から出金された紙幣を搬送する直交・単軸ロボットを導入。従来使用していた産業用ロボットは、複数の関節があり、紙幣投出機から出金された現金をロボットが掴むのに複数の関節をフルに使用し紙幣を搬送していたため、機械疲労が激しく、故障することがありました。ロボットの関節部分を多関節から単軸・直交ロボットに替えたことで、負荷を軽減させることに成功しました。1日あたりに換算すると約2.7時間の労働時間削減にも成功しました。

ファクトリーオートメーションの課題と今後

 ファクトリーオートメーションは、さまざまな進化を遂げています。現在は工作機械や産業用ロボットなどがネットワークでつながり、工場現場のデータを自動的に収集できるようになりました。

 日本は超少子高齢化社会なので、今後さらなる労働人口の減少は避けては通れません。そんな中で、産業用ロボットだけでなく、さまざまな分野でロボットの台頭が期待されています。一般社団法人 日本ロボット工業会の「世界の産業用ロボット稼動台数推定」によると、日本のロボット市場は中国に次いで第2位。また国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が発表した資料によると、国内のロボット市場は、2035年には9.7兆円に達すると見込まれています。

 コロナ禍の影響により部品の生産や流通などに支障がでたため、2020年のロボット市場は振るいませんでしたが、日本ロボット工業会が発表した2021年10月から12月期の産業ロボットの出荷実績(四半期、会員ベース)では、受注、生産、出荷ともに増加しており、総出荷額ではコロナ禍以前の2019年よりも高い数字を出しています。また、日本ロボット工業会の会員、非会員を含めた2021年産業用ロボット年間受注額は1兆円超えを見込んでおり、ロボット市場は今後拡大していくことが想定されます。産業用ロボットも、現在より幅広い現場での導入が期待されています。

まとめ

 ファクトリーオートメーションの説明やメリットなどについて紹介しました。現在、多くの企業が簡易的なファクトリーオートメーションを導入しています。ファクトリーオートメーションの導入には大きな初期費用が必要です。とはいえ、「多機能だからよい」「高性能だからよい」というものではありません。実際の作業内容と照らし合わせると、比較的単純な産業用ロボットのほうが効率やコストパフォーマンスがすぐれているということも考えられます。そのため、使用用途をよく吟味したうえで導入することが大切です。また、機械を扱うには最低限の知識や技術が必要になるため、専門性が求められます。現代の流れではファクトリーオートメーションを導入したほうが生産性の向上が期待できます。自動化によって、使用用途や予算規模に応じた最適な結果を得るためには、さまざまな角度から検討を行うことが重要なのです。

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