2021.9.9 (Thu)

スマート農業でアグリビジネスはどう変わる?(第2回)

スマート農業が抱える課題とは? 導入費用を抑える方法も紹介

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 新しい農業であるスマート農業が近年注目されていますが、なかなか一般的な普及までは進んでいないのが現状です。今回の記事では、スマート農業が抱えている課題について説明していきます。

◆目次
スマート農業とはそもそも何か?
スマート農業の課題
スマート農業の導入費用をできるだけ抑える方法
まとめ

スマート農業とはそもそも何か?

 スマート農業とは、IoTやAIなどの最新技術を駆使した新しい農業のことです。農業で課題となっている高齢化や人材不足、後継者不足などの問題を、テクノロジーを利用した労働の省力化や効率的な栽培を実現することで解決をめざしています。

スマート農業の目的

 スマート農業を導入する目的は大きく分けて3つあります。

低下する農業人口への対策

 農業に従事する労働人口は減少しているため、スマート農業の推進によって少ない労働力で生産を行うための環境整備が必要です。

食料自給率の向上

 日本の食料自給率はカロリーベースで37%と低く、輸入に大きく依存しています。政府が掲げている2030年での食糧自給率45%を達成するため、スマート農業による生産力の向上が期待されています。

出典・参考:令和元年度食料自給率について
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-16.pdf

農業技術や経験の継承

 農業に従事する人材は高齢者が比較的多く、技術を継承する若い人材が不足しています。スマート農業により熟練の技術や経験をデータ化・ノウハウ化しておけば、テクノロジーを利用して未経験の人材でも一定のクオリティの作物を生育できる環境を整えることが可能に。若い人材の新規参入や農業技術の継承が期待されています。

スマート農業のメリット

 スマート農業を導入することで期待できるメリットを紹介します。

農作業の省力化

 スマート農業ではロボットの利用やセンサー・カメラによる作物の監視により農作業の大幅な省力化が期待されています。

労働の負担の軽減

 農作業は肉体労働がメインで過酷なイメージがありますが、スマート農業では省力化による労働負担の軽減が期待されています。高齢者や力仕事が苦手な人でも農作業を行うことが可能になり、事業継続や新規参入者の増加も見込めます。

農業のデータ化・活用

 これまでの農業の技術は人から人へ受け継がれていて、長年培ってきた経験や勘などにより作物の品質を保っていました。

 スマート農業では、作物の状態・気象条件・どのタイミングでどの作業を行ったかなどを計測します。農業の知識や技術をデータ化することで、未経験者でも品質の高い作物の栽培が可能になります。

環境に優しい農業の実現

 スマート農業で利用される技術の一つにドローンによる農薬散布があります。作物をモニタリングしながら農薬を散布するため、病原の発生リスクが高い箇所に重点的に農薬を散布する、また一度散布された箇所には散布しないなど、最小限の農薬の利用に留めることが可能です。地球環境の汚染を軽減する農業の実現につながります。

スマート農業で利用される技術の例

 スマート農業で利用される技術の例を紹介します。

農業用ロボット

 自動運転トラクター、農薬散布ドローン、自動収穫機、アシストスーツなどの農業用ロボットは、省力化・効率化に大きく役立ちます。肉体労働の負担を軽減することで高齢者や力仕事が苦手な人でも農作業が可能になり、少ない人数で広い耕作面積での作業が実現できるので労働力低下への打ち手として有効です。

センシングデータ

 センシングデータとは、農作物の状態を計測したデータのことです。圃場で活用するロボットなどにカメラや気温・湿度を計測するセンサーが搭載され、作物の状態や気象データを計測します。

 この技術により、遠隔でも圃場の状態を確認でき、効率的な栽培が可能になります。

AIテクノロジー

 上記のセンシングデータをAIが分析することで、作物の収穫時期の予測、病害虫の発見やリスク管理、生産効率の上昇による収穫量の増加などが期待されています。

センサーや各機器を接続する高速Wi-Fi

 センシングデータの活用や農業用ロボットを実際の圃場で利用するには、それらを接続するための通信インフラであるWi-Fi(無線LAN)が必要不可欠です。室内やオフィス内と異なり、屋外の場合はWi-Fi機器にも防水・防塵性能が求められます。スマート農業に対応したWi-Fiを導入することで、遠隔操作などやモニタリングなどが実現可能です。

最新技術によるスマート農業とは? 目的・メリット・課題や事例を紹介!

スマート農業の課題

 スマート農業には便利な側面が多くあるものの、実際に導入するにあたってはまだまだ課題があります。

機械やサービスの導入コスト

 スマート農業に活用される機械やサービスは一般的に高価格です。そのため、小規模な農家では導入しても費用対効果に見合わないことが多いのが現状です。

 スマート農業では低コストでの省力化と生産性の向上を目指していますが、現在はまだ実験的な取り組みに留まっていることがほとんどです。設備投資へのコストの大きさは普及を妨げる一つの原因になっています。

 対策として、政府の支援を通じスマート農業のサービスを提供する企業の提供価格を下げるための研究開発や、他分野のICT導入の助成金制度などと同様、積極的な助成金活用、またレンタルやリース商品などで導入しやすい状況をつくることが期待されています。

就業者のITリテラシー

 日本の農家の多くは高齢者で、これまでの長い年月培ってきた栽培のやり方が確立されています。一方で、スマート農業では最新のテクノロジーを用いる機械を活用する必要があります。そもそもIoT化があまり進んでいない農業分野において、スマート農業を普及させるには就業者のITリテラシー向上が必要です。

 最新技術を駆使した機械を扱うためには、当事者が使いこなせるようになることを前提とするだけではなく、新しくその作業を担う人材の募集・育成や、技術の活用をサポートする橋渡し的な人材やベンダーの登用が求められています。

機械のメーカーなどによる規格の違い

 スマート農業で利用される機械はたくさんの企業が開発しているため、違うメーカーの機械同士では互換性が低いケースが少なくありません。

 トータルサポートであらゆる機械を提供するサービスなどが登場すれば一般的な普及に役立ちますが、現在はまだ農業作業ごとにバラバラに機械の開発が進んでいる状態です。今後はメーカーによる規格の統一などが期待されています。

一律展開が難しい

 日本の農家は耕作面積が小さいケースも多く、広大な土地を耕すことに便利な自動運転トラクターも、小規模な農作業にマッチしないという声もあります。

 さらに日本では地域ごとに生産している作物の種類が多く、一つの作物に対しては最適な機械やサービスであっても、他の作物には転用できないこともあります。スマート農業の普及のためには、それぞれの作物に対してカスタマイズした製品やサービスが求められます。

日本農業の市場縮小

 日本の農業は市場が縮小傾向にありますが、そもそも市場が拡大しないとスマート農業の普及は活発化していかないという見解もあります。

 スマート農業の製品・サービスを提供するメーカーが生産者や農業共同組合などと連携して生産力の向上や品質の向上に取り組み、収益性の高い農業へと変革することが求められています。

スマート農業の導入費用をできるだけ抑える方法

 スマート農業の課題は特に導入時のコスト面です。ここでは導入するための方法について紹介していきます。

補助金・助成金制度を利用する

 国や自治体で用意している、スマート農業推進のための補助金や助成金の制度がいくつあります。スマート農業の導入時に必要な経費の負担軽減や、その後の継続的な事業の補助、また新たな生産プロセス中に発生する経費などのサポートといった目的があります。

 補助金や助成金制度を利用することで、金銭的な負担を減らしてスマート農業を実施することにつながります。ここでは一例を紹介します。助成金・補助金については、すでに募集が終了しているものもあるため、申請する際には各機関の最新情報を確認してください。

スマート農業総合推進対策事業のうち農林水産業におけるロボット技術安全性確保策検討事業

 農林水産分野の現場において、ロボット技術の安全性の検証とルールづくりの取り組みを支援する助成金です。

 以下の2つの取組みが対象です。

・ドローン等小型の無人航空機による空中散布に関する安全性確保策の検討
・ロボット農機に関する安全性確保策の検討及び遠隔監視によるロボット農機の無人での完全自動走行の実現に向けた検証

 対象となる経費としては、事業を実施するために直接必要な試験・調査備品・物品等の購入などに必要な経費や、事業を行うために必要な改良費・消耗品費などの事業費、また旅費や人件費といった多くの項目が対象となっています。

 上限の金額は、ドローン等では約1500万円、自動走行のロボット農機については約5053万円です。

参考・出典:令和2年度スマート農業総合推進対策事業のうち農林水産業におけるロボット技術安全性確保策検討事業に係る公募について
https://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/seisan/200220_1.html

スマート農業総合推進対策事業のうちデータ駆動型土づくり推進事業

 農地土壌の劣化が農業の課題となっていることを踏まえて、科学的なデータに基づく土作りを推進する環境整備などを推進する取り組みを支援する助成金です。

 以下の2つの取組みが対象となります。

・土壌診断データベースの構築
・土づくりイノベーションの実装加速化

 対象となる経費としては、試験・調査備品等の購入などの備品費や、薬品料や通信運搬料などの事業費、旅費、人件費などの多岐にわたります。

 上限金額は500万円です。

参考・出典:令和2年度における「スマート農業総合推進対策事業のうちデータ駆動型土づくり推進事業」の公募について
https://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/seisan/200327_2.html

リースやシェアリングの活用

 スマート農業に必要な機材の値段を抑えるためには、リース・レンタルの活用も有効です。購入によりすべての費用を払うわけではなく、利用している一定期間の料金だけに抑えることが可能です。

 また、近年ではレンタルする形式で機器をシェアリングする取り組みも行われています。近隣の農家でシェアリングできれば機械のコストを抑えることが可能ですが、利用する時期が競合することが課題になります。

 岡山県では、南北約100km、標高差約500mの地域を対象に、直進アシスト田植え機と食味・収量コンバインのシェアリングを行う取り組みを実証しました。農家同士を競合せずに稼働率を向上させ、導入コストを低減させるなどの効果があり、今後の一般での普及が期待されています。

参考・出典:シェアリングによるスマート農業技術の導入コスト低減の取り組み ー 岡山県における広域シェアリング ー
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/forum/R2smaforum/rice/seika87.html

農機具の売却による資金確保

 スマート農業に本格的に取り組む際には、現在利用している農機具を売却したお金で新しい機械の購入費用を工面するのも一つの手段です。

まとめ

 今回の記事ではスマート農業の課題とその解決策について説明していきました。

 導入コストの高さや技術を使いこなす難しさなどはあるものの、今後の日本の農業が発展していくためにはIoT技術の活用が必要不可欠です。

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