2021.3.26 (Fri)

テレワーク・リモートワークとは何か?(第6回)

普及率7割をめざすリモートワークと推移を解説

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 新型コロナウイルスの対策として政府がリモートワーク率7割の指針を発表しました。実施率、そして割合の推移はどうなっているのでしょうか。また、リモートワーク普及率7割をめざすためには何が必要なのでしょうか。新型コロナウイルス問題以前からリモートワークは存在します。この記事ではリモートワークにおける本来の目的を見直し、リモートワークを行うべき意義を明確にして、メリットや実施を阻害する理由を挙げながら、リモートワーク実施率向上の道しるべを探ります。

リモートワークの目標7割に対する現在の実施率

 2021年1月7日、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた2回目の緊急事態宣言の発出に伴い、菅総理大臣と西村経済再生相によって、企業に対し、出勤者の7割削減をめざす考えが示されました。同時に示されたのがリモートワークの推進です。

 もともとリモートワークは、2020年4月の1回目の緊急事態宣言以降、「出勤による感染リスク低減」を目的に強く推奨されていました。本記事では、リモートワークの実施割合の増加の重要性について解説します。

リモートワークの7割実施、達成率は30%と低調

 2021年1月20日~1月21日にペーパーロジック株式会社が行った「テレワークの実施率にまつわる比較調査」を参照します。同調査によると、緊急事態宣言前と比べて「出社人数が7割以上減少している」と回答した企業は30.9%に留まりました。政府が推奨するリモートワークの実施率7割に対し、現状の達成率は3割程度ときわめて低調であると言えます。

 リモートワークが普及しない主な理由として、「テレワークと連携した業務体制が整っていない」「オンライン業務でのストレス増加」「紙ベースのためオンライン業務に対応できない」といったものが挙げられます。

リモートワークに7割対応できるという調査結果も

 現状ではリモートワークの実施率30%程度にとどまっています。政府が推奨する「7割の出勤者削減」は可能なのでしょうか。この問いに対し、デル・テクノロジーズが2021年2月8日に発表した「Remote Work Readiness Index(テレワーク対応度指数)」の調査結果をもとに解説します。

 同調査では、「日本の多くの企業ではリモートワークに7割対応できる」という結果が出ました。この背景には、調査対象者の多くは雇用主に対するリモートワークのサポート体制の充実を望んでおり、それは実現可能だと予測していることがあります。

 そのため、現状では「出社率7割減」を達成できていない企業でも、長期的に見れば「達成可能」という見通しが立っています。達成可能と回答した調査対象者は54.7%に上ります。以上の結果から、リモートワークの7割実施は決して実現不可能な目標ではないことがうかがえます。

リモートワーク実施率の推移と要素別実施率

 経済産業省が2020年8月に発表した「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う現時点での社会・国土の変化について(8月更新) 」を参照します。同資料によると、2020年3月におけるリモートワーク実施率の全国平均は約10%でした。

 同年4~5月になると、リモートワークの実施率は約25%に増加しますが、緊急事態宣言解除後の6月には約17%に減少します。2021年1月発出の2回目の緊急事態宣言後には、前述のようにリモートワークの実施率は約3割に増加しています。以上のように、1回目、2回目の緊急事態宣言を通し、リモートワークの実施率はゆるやかではあるものの、着実に増加していることがわかります。

企業の所在地、従業員数、業種から見るリモートワーク実施率

 同じく経済産業省の「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う現時点での社会・国土の変化について(8月更新)」を参照し、リモートワークの実施率をより詳細に検証します。以下の数値は2020年6月時点のものを引用します。

 同資料によると、都道府県別(居住地)のテレワーク利用率は、東京都が33%ともっとも高く、次いで神奈川27%、埼玉県23%、千葉県23%となりました。全国平均は17%であることから、首都圏、とりわけ東京都はリモートワークの実施率が高い傾向にあると言えます。

 業種別に見てみると、「情報サービス・調査業を除く通信情報業」が50%、「情報サービス・調査」が45%、「金融・保険業」が30%となりました。「情報サービス・調査業を除く通信情報業」での実施率がもっとも高い結果となりました。さらに会社の企業別では、「500人以上の規模の企業」の実施率は30%で、最も高い割合です。

新型コロナ対策だけではない、リモートワークの理由

 リモートワークへの移行を開始した企業は、実は新型コロナウイルスの影響が出る以前から見られました。その背景には、働き方改革の実施があります。働き方改革の一環としてリモートワークが推奨されている理由について、リモートワークが本来持つ意義の観点から解説します。

リモートワークと働き方改革

 日本では2008年をピークに人口が減少傾向にあります。少子高齢化の影響もあり、今後、労働力不足はますます深刻化することが指摘されています。そのため日本では、少ない人口で高い社会水準を維持するために、生産性を向上させることが急務です。

 働き方改革では、働き手を確保し、同じく生産性の向上につなげることを目的としています。リモートワークは従業員が個々の事情に合わせた柔軟な働き方をできる手段であり、ひいては働き方改革の目的に適う働き方として、推奨されています。

リモートワークが推進される社会的理由

 企業がリモートワークを実施することは、働き方改革の推進以外にもメリットがあります。具体的には、「少子高齢化による労働力減少への対策」「ワークライフバランスの実現」「地域活性化の推進」「環境への負荷軽減」といった社会貢献です。

 リモートワークの普及は、各従業員のワークライフバランスの向上を実現させます。労働者にとって「働きやすい会社」であることは魅力度が高く、優秀な人材の確保や、それに伴う地域への還元が期待できます。さらにリモートワークによってオフィスコストをカットできれば、電力の節約やゴミの削減も可能となります。

世界の中の日本のリモートワーク状況

 リモートワークの先行国について知ることは、日本におけるリモートワーク拡大のためのヒントになります。世界で最もテレワーク導入が進んでいるのは米国で、導入企業は全体の約85%にものぼります。次いでカナダやフィンランドなどの欧米各国が並び、反対に韓国やシンガポールといったアジア諸国は低い順位です。

 新型コロナ感染症の影響が出る前の令和元年の日本におけるテレワークの導入率は全体で約20%です。世界的に見ても、日本におけるテレワークの普及は進んでいないことがわかります。

リモートワークを実施した感想と見えてきたメリット

 2020年の緊急事態宣言を契機に、リモートワークを実施した企業が増加しました。リモートワークのさらなる普及を目指すには、実際にリモートワークを実施したことで判明した「リモートワークへの満足度」や「不安な点」「メリット」について検討することが重要です。

リモートワークに満足しているか、不安など

 2020年7月に発表されたナビプラス株式会社の「社員の現状把握と意識調査を目的に実施した「リモートワーク(在宅勤務)に関するアンケート」の結果を参照します。

 同調査結果では、リモートワークを実施した従業員のうち、約7割がリモートワークでの勤務に高い満足度を示していることがわかりました。さらに、このうちの約6割は、通常勤務に戻ることへの不安を抱えていることも判明しました。

リモートワークを行って実感したメリット

 リモートワークへの満足度が高い理由には、リモートワークならではのメリットが影響しています。たとえば「通勤のストレスが減ったこと」や、「育児・介護の時間が増やせる」といったメリットが代表的です。さらに開発業務においては「リモートワークのほうが集中できる」というメリットも見られます。

リモートワークができない理由

 日本でのリモートワークが普及しない要因には、リモートワークならではのさまざまな課題があります。リモートワークの普及率を向上させるためには、まず、これらの課題を把握し、的確な対策を講ずることが重要です。

捺印や紙による書類管理などリモートワークで対応できない

 日本でのリモートワークの普及を阻害する原因に「ハンコ文化」「紙ベースのワークフロー」があります。日本では紙媒体やハンコを要としたワークフローが根強く、出社しなければ対応できない業務を抱えている企業が非常に多くあります。そのため、リモートワークに意義を見いだせず、導入を見送ってしまうという図式があります。

情報セキュリティの不安

 「情報セキュリティへの懸念」もリモートワークの普及が進まない大きな原因の1つです。リモートワークでは基本的に、自宅や社外から社内ネットワークにアクセスして業務データを利用します。そのため、オフィス内で業務を行う場合と比べて、社外秘資料や顧客データなどの漏えいのリスクが高まります。

リモートでのコミュニケーションに関する問題

 リモートワークでは、「メンバー同士のコミュニケーションの低下」も大きな問題とされています。ウェブ会議や音声チャットツールなどでの対話は、直接対面する場合と比べて、相手の感情が読み取りづらくなります。

 そのため発言を控えてしまう従業員も多く、円滑な連携が難しくなったり、不明点が出ても質問しづらいなどの問題が発生しやすいことが指摘されています。

リモートワークの実施率向上に向けて

 各企業は、政府が示したリモートワーク7割の実施の達成に向けた努力が求められています。目標達成のために、各企業はテレワークが推奨されている意義やメリット・デメリットについて理解し、自社に最適なリモートワーク体制を検討することが重要です。

※この記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています

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