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2021.03.19 (Fri)

最初に覚えておくべきBCP(事業継続計画)のノウハウ(第11回)

企業におけるBCPの策定率や問題点とその進め方

 日本という地震や台風などが非常に多い国において、災害からいかに迅速な復興を行うかというのは大きな課題です。企業においても同様に、迅速な復興と経済活動への復帰が求められます。その重要な要素となるのが「BCP」の策定になりますが、残念ながら企業におけるBCP策定率は現在国が定める目標に達していません。ここではBCP策定が進まない理由、メリットやデメリット、BCPを進めるにあたって必要な事項について説明します。

BCPの現状

 まずはBCPの概要と、現在のBCPの普及状況について解説します。

BCPとは

 BCPとは「Business Continuity Plan」の略であり、「事業継続計画」と訳すことができます。具体的には、「災害が起こった後の速やかな復興」を目的とした計画です。

大企業・中小企業のBCP策定率

 帝国データバンクによる2020年5月の「事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について」の調査結果によると、BCPの策定状況について「策定している」と回答した企業は16.6%「現在、策定中」は9.7%「策定を検討している」は26.6%でした。いずれも前年度調査より数値が伸びています。

 大企業と中小企業別にBCPの策定状況を見ると、大企業は30.8%、中小企業は13.6%となっており、企業の規模によって策定状況に差が出ていることが分かります。政府はBCP策定率の目標を「2020年までに大企業100%、中小企業50%」と定めていました。現状、大企業・中小企業ともに、国の定めた目標からはほど遠い状況にあるといえます。

企業におけるBCP策定が進まない理由

 なぜBCP策定は普及が進まないのでしょうか。理由としては「BCPの必要性を感じない」「策定の仕方がわからない」「法律・規則がない」「人手が足りない」というものや、「そもそもBCPを知らない」といったものがあります。

BCPのメリットとデメリット

 さまざま理由により普及が進まないBCPですが、そもそも策定する意義はどういったものなのでしょうか。メリットやデメリット、政府が推奨する理由について解説します。

BCPが進まない理由

 BCP普及が進まない理由の1つに、「策定の必要性を感じない」というものがあります。しかし、長期的な視野に立って事業継続について考えると、BCP策定は事業継続のために必須といえます。

 BCPとは自然災害やテロなどにより大規模災害が起きても、速やかに事業を立て直し、事業を再開・継続させるための計画のことです。予期せぬ事態によって事業が中断に追い込まれたとしても、BCPが確立されていれば、速やかに代替手段を実行して事業を再開することが可能になります。

 BCPとは、単に災害への備えとして行うものではありません。災害が起こることを前提に事業を継続するための計画を立てておくことが、BCPの本質です。

BCPのメリット

 BCPのメリットは主に3つあります。1つ目は「顧客の確保」です。災害にかかわらず事業が長期に中断すれば、当然ながら顧客が流出し、業界でのシェア率低下を招きます。したがって、BCPによって災害時でも速やかに事業を再開することは、顧客の流出を最低限に防ぐことに役立ちます。

 2つ目のメリットは「企業への信頼が高まること」です。事業の中断は自社だけでなく、取引先にも被害をもたらします。BCPによって事業を安定させることは、リスクマネジメント能力の評価につながり、信頼性を向上させます。

 3つ目のメリットは「従業員の意識改革・意識向上」です。日ごろからBCPを意識することで、万が一の事態が起きても、従業員1人ひとりが同じ目標の下に、スピード感をもって行動しやすくなります。

BCPのデメリット

 BCPのデメリットとして、「想定通りに機能しないこと」が挙げられます。たとえばBCP策定時の想像の範囲を超える事態が発生した場合は、BCPが機能しない可能性があります。あるいは、実現不可能なBCPを策定していたり状況に適合したBCPが策定できていなかったりする場合も、やはりBCPの実現は困難です。

 このようなリスクを下げるために、BCPは定期的な見直しが必要です。策定しただけで満足せず、その後は定期的に見直や改訂を行い、実効性の高いBCPを運用する必要があります。

BCP策定にあたって

 BCPの策定の方法について解説します。BCPの策定方法が分からないという企業は少なくありませんが、分からないからと言って放置していると、万が一災害が発生したに事業を守ることができません。ぜひ以下のポイントを押さえて、実効性のあるBCPの策定をめざしてください。

BCP策定のステップ

 BCPを策定するには、主に4つのステップがあります。1つ目は「目的設定」です。目的設定を行うにあたっては、その企業の経営理念や基本方針を振り返りましょう。そのうえで、従業員の人命保護や、クライアントの利益・信用を守るなどの観点からBCPの目的を設定します。

 2つ目は「リスクの洗い出し」です。BCPにおける具体的な対策や行動を導き出すためには、企業にとって「起きたら困るリスク」を明確にしておく必要があります。リスクにはたとえば台風や地震といった自然災害の他、テロや地盤沈下、伝染病の流行があります。事業に直接影響を持つリスクは何か、具体的に書き出して検討します。

 3つ目のステップは「リスクの優先順位化」です。災害時にはリソースが限定されます。その限られたリソースを集中させるべきものは何か、優先順位をつけ、それに従ってBCPを策定します。

 4つ目は「実現可能な具体策を決める」です。実効性を高めるために、BCPは実現可能な範囲で策定しましょう。災害発生時に誰が指揮を執り、どのような指揮系統で動くのか、具体的な事柄を決めることがポイントです。

 このとき、災害発生時~平時に戻るまでの期間を大きく3つに分け、それぞれ「人的リソース」「施設・設備」「資金調達」「体制・指揮系統」「情報」の5つのポイントを抑えておきます。

BCPの運用方法

 BCPは策定することがゴールではなく、緊急時でも事業を継続させることが真の目的です。そのため策定するだけでは意味がなく、きちんと運用されてこそ真価を発揮することができます。

 なお、BCPの運用とは「BCPサイクルを回すこと」と捉えることができます。BCPサイクルとは「事業を理解すること」「BCPの準備」「BCPの策定」「BCPの定着」「BCPのテストと維持・更新」から成ります。前項の策定手順に準じてBCPを策定したら、定期的にチェック・見直しを行い、必要であれば改訂することで、BCPの実効性を維持できます。

さまざまな企業におけるBCP策定の事例

 実際にBCPに取り組んでいる企業の事例を紹介します。BCP策定や運用を行うときの参考にしてください。

大企業におけるBCP策定事例

 大成建設株式会社では、BCPとして災害時の従業員・家族の安否確認システムを導入しています。システムの導入にあたり、サーバー管理が必要のないサービスの利用や、通信回線増強による通信速度の向上を図りました。結果として、緊急事態時での迅速な安否確認が可能になり、災害時初動体制の確保が容易になりました。

 「ヤマハ発動機株式会社では、BCP強化とコスト削減の両立が課題でした。基幹系システムをクラウド化し、システム拠点をコストが低い地域に分散させることで、課題を達成しています。

中小企業におけるBCP策定事例

 北良株式会社は、東日本大震災をきっかけに実践的なBCPに取り組んでいます。同社ではBCP文書は策定しておらず、災害時に必要な行動はすべて「経営手帳」に記されています。この経営手帳に基づいて毎朝10分間のスキルアップドリルや、朝礼の中で電話対応のロールプレイングに取り組むことで、運用可能なBCPを日常的に積み重ねています。

 株式会社生出のBCP策定は、2009年に世界で大流行した新型インフルエンザがきっかけとなりました。具体的なリスクを洗い出し、その対応策を策定。さらに定着のために、社員1人ひとりの意識改革にも力を入れています。これにより、社内のコミュニケーションが活発化して団結力が高まっただけでなく、取引先からの信頼も大きく向上しています。

テレワークという手段

 災害時や伝染病の流行により、従業員の出勤・通勤が困難な場合には、テレワークが有効です。テレワークは従業員の安全を守りつつ、出社しなくても事業を継続させることが可能です。このように、テレワーク導入はそれ自体がBCPといえます。

BCPの目的と進め方

 BCPの策定は緊急時にも速やかに事業を再開・継続を可能にします。事業継続が最終目的であることを念頭に置けば、BCPは策定だけでなく、的確に運用することが重要だと言えます。もしBCP策定の方法に迷ったときは、前項の「BCP策定のステップ」や政府のガイドラインを参考にしてください。

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