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2021.03.16 (Tue)

最初に覚えておくべきBCP(事業継続計画)のノウハウ(第10回)

教育機関のBCPとは?重要性とポイントを解説

 BCPは「事業継続計画」のことを表し、緊急事態において業務を継続するための対策を計画することです。BCPは企業だけでなく、事業を行う全ての組織が策定すべきであり、「教育機関」もその一つです。教育機関におけるBCP策定は「学生が在籍していること」や「その公共性」から、一般企業とは異なる観点からも検討を行う必要があります。本記事では教育機関に焦点を当て、BCP策定の重要性やポイントの解説と、策定時に活用できるガイドラインやセミナーを紹介します。

教育機関でBCPが必要な理由

 東日本大震災や新型コロナウイルスの影響により、BCP(事業継続計画)の策定はより重要視されるようになりました。「教育期間」も、その例外ではありません。以下では教育機関におけるBCP策定の必要性について説明します。

さまざまな要因から教育機関でBCPは必要となる

 教育機関におけるBCP策定の必要性については、論文「大学経営における事業継続リスクに関する考察」の中で考察されており、「社会の状況」、「市場の要請」、「行政の要請」が要因として挙げられています。それぞれの内容について以下で解説します。

社会の状況

 「社会の状況」から見た時に外的要因、内的要因のそれぞれの要因からBCP策定が必要となります。

 外的要因としては、日本では地震や津波などの自然災害が多発していることや、その発生が予想される地域に多くの大学が立地していることが挙げられます。他にもアメリカで発生したアメリカ同時多発テロ事件や、新型インフルエンザなどの悪性疫病の蔓延による教育機関の運営リスクが挙げられます。

 内的要因としては、近年のICT依存の高まりによって、教育機関内のICT資産の不具合や停止が運営上大きなリスクとして挙げられます。

市場の要請

 「市場の要請」としては、教育機関に求められる社会的責任からBCP策定が必要となります。

 社会的責任として「エンロールマネジメント」が挙げられます。これは教育機関が学生の入学から卒業までを一貫して支援することを意味しており、学生の安全を確保する責任があります。

 社会的責任は学生に対してだけではなく、教育機関が避難所として使用されることなどから周辺住民の安全確保も求められます。

行政の要請

 「行政の要請」としては、文部科学省が教育機関に対して災害に備えるよう要請していることから、BCPの策定が必要となります。

 「災害対策基本法」をはじめとする特別措置法により、「地震防災対策推進地域」内にある教育機関は文部科学省による指導や助言で「地震防災応急計画」と「対策計画」を作成する事が定められています。

 他にも阪神・淡路大震災をきっかけに「学校等における防災体制の充実に関する基本的な考え方」が発表され、大災害における教育機関のあり方が示されました。

 2004年には国立大学法人評価制度が開始され、国立大学法人は教育計画や経営計画だけでなく、危機管理やリスクマネジメントについても方針と体制を明らかにすることが求められています。

教育機関におけるBCPの策定時のポイント

 上記の内容から教育機関におけるBCPの策定は、社会的に求められていることがわかります。しかし一般企業とは異なるその特性から、BCPを策定する際に考慮すべき内容がいくつかあります。

教育機関全般

 教育機関全般において、考慮すべきポイントを説明します。教育機関においては「自然災害」と「人的災害」の2点を重視してBCPを策定する必要があります。

 自然災害については、教育機関が大地震の影響を受けるとされる地域に多く立地していることや、災害時に周辺住民の避難所となることから職員、学生、周辺住民の安全を考慮したBCPを策定する必要があります。

 人的災害については、教育機関によっては薬物を扱うことや、海外の教育機関でテロが発生していることから、化学的な事故や事件にも対応したBCPの策定が求められます。

学校

 教育機関の中でも学校に焦点を当てると、他にもいくつかのポイントが挙げられます。その一つとしては、学校には併設して病院や博物館などの公共施設を有することがあるため、怪我や病気にかかった人や高齢者が存在する前提で検討しなければならないことです。

 他にも、学校では入試が行われることを考慮する必要があります。学校特有の入試であれば延期することも可能となりますが、全国で一斉に行われる入試では災害によって行えない場合に全国の学生に大きな影響を与える可能性があります。学生への影響が最小となるように検討することが求められます。

幼稚園・保育園

 幼稚園や保育園の最も大きな特徴としては、園児が存在することです。そのため、園児の安全確保が第一となります。園児は一人では安全の確保ができないため、災害発生時から保護者への引き渡しの間まで職員によって安全を確保するよう計画しなければなりません。

 その他にも災害によって営業ができなくなった場合に、保護者の仕事にも影響を与えることから、営業の早期復旧のための計画を策定する必要があります。ポイントとしては、完全復旧の計画を行うだけではなく、段階に分けて営業の再開を検討することで、園児引き受けが復旧できるまでのスピードを高めるなどが挙げられます。

BCP策定時に活用できるもの

 BCPを1から策定するには、膨大なノウハウと時間が必要になります。日々の業務をこなしつつBCPを策定することは難しく、BCP策定のハードルが高くなっている要因になっていることが実状としてあります。そこで国や地域は、BCPを策定する際に活用できるガイドラインの配布やセミナーを実施しており、それを活用することで効率的にBCPを策定することが可能となります。

ガイドライン

 内閣府はBCP策定のガイドラインを作成しており、BCP策定時に活用できます。本ガイドラインは民間企業を対象に記載されていますが、BCPの目的や重要性を学ぶことができますし、記載されている策定の流れやポイントは民間企業にかかわらず活用することができるため、一読することをおすすめします。

セミナー・講義

 地方自治体や協会などで、BCPに関するセミナーや講義を開いています。例えば福島県郡山市では、市がBCP策定の支援セミナーを無料で行っています。講義だけでなく、地域によっては受けることができる補助金の案内も行っているため、ご自身の地域についても調べてみることをおすすめします。

 他にも有料とはなりますが、日本能率協会がBCPに関するセミナーを開催しており、入門編と実践編に分かれていたりするなど、レベルや目的別にセミナーを開催しています。

教育機関におけるBCPの実例

 BCPは事業内容によって策定する内容が異なるため、ガイドやセミナーの内容をそのまま活用できないこともあります。そこで、他の教育機関が策定しているBCPを参考にすることで、その業界特有の内容を把握することができます。

早稲田大学のBCP

 早稲田大学のBCPは一般公開されており、参考にできます。特徴として「学生に予定どおりの卒業と入学を保証」としていることや、「地域、校友等との密接な連携による地域の復旧および復興への貢献」が記載されています。

美山保育園におけるBCP

 美山保育園のBCPも公開されており、「園児の身の安全を第一」にしていることと「保育の継続・早期再開」を重要視していることが特徴です。復旧までの流れが詳細に記載されているため、園児を預かる教育機関にとって参考となる内容となっています。

教育機関の特性を考慮したBCPを策定しましょう

 教育機関におけるBCP策定は「学生が在籍している」ことや、「公共性」から一般企業とは異なる観点を考慮する必要があります。1から策定するにはハードルが高いため、ガイドラインやセミナーを活用したり、他教育機関のBCPを参考にして効率よく効果的なBCPを策定しましょう。

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