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こっそり聞きたいネットワークのキホン(第18回)

ネットワークの品質を向上させるQoSについて解説

 ICTを支えるネットワークインフラですが、今トレンドでもあるDXやRPA、IoTなどは、ネットワークがなければ成り立ちません。ネットワークとは通信を行うために設計、構築されるものですが、「ネットワークの品質」とは何をもって良いとされるのでしょうか?それは、遅延が小さい、パケットロスが少ない、パケット到達間隔の差が小さい、この3つになります。本記事では、これらの説明に加え、QoS(Quality of Service)について解説していきます。

QoSの必要性について

 QoSは「Quality of Service」の略語で、ネットワークサービスの品質の尺度です。QoSを実装すると、特定の通信を優先して伝送したり、通信量に制限をかけたりすることが可能になります。

 逆にQoSを実装しない場合、例えばネットワークが混雑している時に、優先データの取捨選択ができなくなり、データの送受信に遅延などの問題が発生します。つまり、QoSはインターネットサービスの品質を向上させるためのもので、実装している場合は快適にサービスを利用できますが、実装していない場合には、通信サービスにさまざまな障害が生じます

ネットワークの品質が良好かの判断基準

 前述のように、QoSはネットワークサービスの品質が良好であるかを表す尺度です。それでは、品質の良いネットワークの定義とは、どのようなものでしょうか。ネットワークの品質は、以下の3つのポイントで判断することができます。

遅延が小さい

 1つ目のポイントは「遅延が小さい」ことです。ネットワーク世界における遅延とは、データパケットがクライアントとサーバ間の往復に要した時間を指し、「pingコマンド」で表示される「ms単位」で表されます。なお、遅延には以下の4種類があり、この4つの合計時間が私たちが体感する「遅延」にあたります。

プロセス遅延

 プロセス遅延は処理遅延や「Processing Delay」とも呼ばれます。ネットワーク機器のNICに入ってきたパケットのヘッダを書き換え、出力NIC用のOutput Queueに格納するまでにかかる時間です。

伝送遅延

 伝送遅延はシリアル化遅延とも呼ばれます。コンピュータデータは、0と1の数字の集合体である「パケット」として成り立っています。伝送遅延とは、パケットがポートから送出されるときに、先頭~末尾の数字の転送が完了するまでにかかる時間のことです。

 簡単に言えば、データの伝送が始まって終わるまでの時間を伝送遅延と呼びます。データのパケットサイズが大きく、かつ、ネットワークの帯域幅が狭いときに、伝送遅延は大きくなります。

伝搬遅延

 伝搬遅延とは、伝搬する電気や光が、ケーブルなどの媒体を進むのに要する時間です。言い換えれば、物理的な距離のために発生する遅延です。伝搬遅延はWANのような長距離で通信を行う際に起こりやすい遅延です。

キューイング遅延

 キューイング遅延とは輻輳(ふくそう)遅延とも呼ばれ、パケットが出力インタフェースである「Output Queue」に入っている時間です。

 とある回線に、その回線の帯域幅よりも大きなサイズのパケットが到達したとします。この時、回線上から機器にデータを送る役割のルータは、回線を超過した分のパケットを一時的にバッファという領域に保存します。バッファに溜められたパケットは、ルータによって順番に機器に伝送されます。このように、データがバッファに保存されて機器に伝送されるまでのタイムラグがキューイング遅延です。

 なお、キューとは基本的なデータ構造です。キューにあるデータは最初に格納したものから順番に取り出されます。データを格納することを「enqueue」、取り出すことを「dequeue」と呼びます。

パケットロスが少ない

 QoSの2つ目のポイントは、「パケットロスが少ない」ことです。パケットロスとは、伝送したデータの一部が行方不明になり、相手に届かないことです。パケットロスの原因には、主に以下の3つがあります。

回線速度に対してデータ量が大きい

 回線速度に対してデータが大きすぎる場合、ネットワーク機器はパケットを破棄してデータの容量を軽くする場合があります。無理に大きなデータの処理を続けると、機器への負荷が大きくなり、ソフトウェアが破損したり、セキュリティ上の問題が発生したりするためです。

 例えばオンラインゲームをするときに、画面が固まるなどして、プレイできないことがあります。これは、回線の速度に対してオンラインゲームのデータが大きすぎるために、パケットが破棄されていることが原因です。

回線が混雑している

 ネットワーク回線は、その大きさ・速度によって一度に送受信できるデータ量に限界があります。そのため、一度に多量のデータが到達した場合は、回線速度を低下させてデータの容量を小さく分割することで、各データの処理を調整しなければなりません。この回線速度の低下によるデータの分割が頻繁に起れば、パケットロスにつながります。

 例えば夜のゴールデンタイムに動画視聴やオンラインゲームのプレイに支障が出るケースがあります。これは、回線速度に対してデータ量が大きくなりすぎたため、回線への負担を減らすためにパケットロスが発生していることが原因です。

ネットワーク機器の処理能力

 インターネット接続に使用しているハブやルータ、ケーブルなどの機器が古い場合、パケットロスが起きる大きな要因となります。古い機器には古い規格が適用されており、古い規格はそれ以降の新しい通信方式に対応していません。

 そのため、高速回線を契約し、最新のパソコンやスマートフォンを接続しても、それらをつなぐケーブルやルータが古い場合には、回線速度は低下し、パケットロスが起こりやすくなります。

パケット到達間隔の差が小さい

 3つ目のQoSのポイントは、「パケット到達間隔の小ささ」です。パケット到達間隔とは、パケットが届いてから次が届くまでの間隔のことです。パケット間隔が0に近づくほど、回線使用率は向上します。反対に、この到達間隔がバラつくと、機器は正常にパケットを受信できなくなるリスクが高まります。

QoSの内容と制御方法について

 QoSの内容について、もう少し詳しく解説します。QoSは以下の仕組みによって、ネットワーク通信サービスの品質を向上させています。

データを通す順番や量を調整する技術

 QoSとは簡単に言えば、回線上のデータを取捨選択して効率的に通信を行う仕組みです。複数のデータを検討し、優先順位の高いデータを先に伝送したり、他データの伝送を邪魔するデータの量を調整したりする役割があります。前者の役割を「優先制御」、後者を「帯域制御」と呼びます。

優先制御

 優先制御は、優先順位の高いデータを先に伝送する仕組みです。決められた方法でパケットの順番の入れ替えを行い、重要なデータを先に伝送します。優先順位の高いデータとは、例えば動画や音声データなどがあります。なお、優先制御は前述の「キューイング遅延」を小さくすることができます。

帯域制御

 帯域制御とは、特定のデータ通信を制御し、回線の中で使用できる総量を制限することです。回線速度には限界があるため、特定のデータを制御することで、使用できる回線の帯域を一定に保ちます。例えば携帯電話において、契約している通信量を超えると速度制限がかかるのは、帯域制御を行っているためです。

QoSを用いてネットワークの品質を高める

 QoSを実装することで、ネットワーク通信を快適に行えるようになります。つまり、快適な通信にはQoSへの理解を深めることが大切です。安定した通信サービス環境を確保するためにも、QoSに基づいて必要なデータ制御を行い、ネットワークの品質を高めましょう。

 このとき、現在の使用している回線ネットワーク機器の品質を確かめ、新しい回線に適応した規格のものを利用することを忘れないでください。

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