2021.2.16 (Tue)

いまさら聞けない働き方改革のイロハ(第20回)

働き方改革でのパート社員の労働時間と有給の変化

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

 2019年に始まった働き方改革では、「働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」をめざし、多様な働き方の創出や、労働者間の待遇格差の解消が進められています。特にパート社員と正社員の待遇格差解消は、働き方改革における大きな焦点です。各企業は、パート社員と正社員の格差解消のために、どのような対策を講じるべきなのでしょうか。本記事では、労働時間の上限規制や有給休暇取得義務に触れながら、パート社員のあり方や待遇改善の方法について解説します。

働き方改革におけるパート社員のあり方について

 日本では、パート社員などの非正規雇用と正規雇用の待遇の格差が問題視されてきました。2019年の働き方改革には、パート社員などの非正規雇用と正規雇用の格差解消のための規定も盛り込まれています。働き方改革によって期待されるパート社員の待遇やあり方の変化について、解説します。

パート社員の不遇待遇を理解する

 パート社員は日本の産業を支える重要な働き手です。しかし、パート社員は正社員と同じ仕事量をこなしても、両者の待遇には大きな差があります。たとえばパート社員は低賃金であるだけでなく、昇給や賞与の点でも正社員と差がある傾向にあります。住宅手当などの各種手当や福利厚生も充実しているとは言い難い状況です。

 待遇の格差は仕事への意欲減退や労働参加率の低下の原因となります。そこで日本政府は、2019年の働き方改革に、非正規雇用と正規雇用の格差解消を盛り込んでいます。パート社員と正社員の格差を是正することで、パート社員の仕事へのモチベーションや労働参加率の向上につなげることが目的です。

パート社員の働き方を把握する

 働き方改革では、パート社員と正社員の待遇格差を解消するための方策として、「若者・女性雇用の場の確保」「職業のキャリア支援形成」「不合理格差の解消」の3つを挙げています。それぞれについて見ていきましょう。

若者・女性雇用の場の確保

 日本では少子高齢化に伴い、労働人口の減少と労働生産性の低下が問題視されています。労働生産性を上げるためには、まず労働参加率の向上が重要です。そのためには、労働者がそれぞれの事情に合った働き方を選択できるような環境づくりが大切です。

 たとえば子育て世代の女性や学生などの若者は、働く時間や日数に制限があることが多く、働きたいと思っても働くことが難しい場合もあります。そこで、企業側には短時間業務や短期業務の創出が求められます。

 多様な働き方が提示されることで、働き方に制限のある人々でも、個々の事情に合わせて働くことができるようになります。さらに企業側にとっても、繁忙期などの臨時的に人手が欲しいときに人員配置を柔軟に行えるというメリットが生まれます。

職業のキャリア形成支援

 パート社員の働き方で最も問題視されているのが、低賃金による長時間労働です。仕事へのモチベーションが下がると、企業への定着率の低さにつながり、結果として人員不足を招いてしまいます。

 パート社員の定着率を上げるためには、やりがいのある環境づくりや賃金アップといったキャリア形成支援が必要です。仕事ぶりや能力に応じた昇給制度や、積極的な正社員登用制度の導入は、パート社員の仕事へのモチベーションを向上させ、企業の労働参加率や定着率の上昇につながります。

 さらに一人ひとりのキャリアアップを支援するための取り組みも必要です。たとえば能力や技術向上を目的としたセミナーや研修の実施のほか、セミナー参加費の補助などの支援対策などが求められます。

不合理格差の解消について

 パート社員などの非正規雇用と正規雇用の待遇の格差は、パート社員の意欲低下につながります。意欲低下を防ぐためには、不合理格差の解消が何よりも重要です。さらに、待遇差の理由や背景を明確にすることも、パート社員の意欲低下を防ぐ有効な手段となります。

 そのためにも、企業側はパート社員が納得できる賃金設定と、賃金設定における明確な根拠について従業員に真摯に説明することが求められます。今回の働き方改革に伴い、従業員は雇用主に賃金格差の理由の説明を求めることも可能になりました。

働き方改革におけるパート・アルバイト賞与について

 これまでパート社員やアルバイトについては、賞与がないケースや、賞与があっても正規雇用に比べると金額が極めて小さいケースがほとんどでした。今回の働き方改革では、パート社員やアルバイトへの賞与の待遇について言及がなされています。

働き方改革における同一労働同一賃金を理解する

 働き方改革ではパート社員などの非正規雇用と正規雇用の待遇格差にあたり、「同一労働同一賃金」の原則を採用しています。同一労働同一賃金とは、同等の労働には同等の賃金体系を設定するという考え方です。

 同一労働同一賃金の原則は、大企業では2020年4月から適用が開始されています。一方、中小企業での施行は2021年4月のスタートとなっています。

全社員を均等に処遇する理由

 働き方改革における同一労働同一賃金の原則は、賃金は、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、能力や仕事ぶりに応じるべきというスタンスを取っています。同等の仕事をしていても、非正規だからという理由で賃金が安ければ、仕事への意欲の低下や労働生産性の低下は免れ得ません。

 同一労働同一賃金の原則を適用することで、働きぶりに応じた報酬や賞与を得ることが可能になります。報酬の支給に公正な尺度を設けることは、雇用形態による格差を感じていたパート社員やアルバイトの意欲向上や労働生産性・質の向上を期待することができます。

働き方改革におけるパート社員の時間捻出について

 パート社員の多くは、職場の仕事以外にも育児や介護などの仕事を抱えているケースが多く、さまざまな仕事に追われて身体的・精神的な疲労を感じています。働き方改革では、多様な仕事に追われるパート社員に対する時間の捻出対策も盛り込まれました。

パート社員の時間捻出における課題

 雇用主から労働時間の増加を強いられ、育児や介護などの家庭での仕事に時間を割けないというパート社員の声は多く聞かれます。低賃金かつ不当な長時間労働はパート社員の離職率の上昇につながります。意欲低下や離職を防ぐためにも、まず企業側はパート社員の待遇や労働時間が適正かどうかを把握しなければなりません。

企業側の時間捻出における対策

 パート社員の待遇を把握するための手段として、働き方改革では「職務分析」が推奨されています。職務分析とは、実際に就業している人にインタビューを行い、業務内容や責任の程度を「職務説明書」などに整理する方法です。

 働き方改革では、職務分析に加え「職務評価」の実践も提示されています。職務評価とは、職務分析で整理されたデータを相対化して比較する方法です。職務分析や職務評価により、事業主は自社の正社員とパート社員の待遇差を客観的に比較することが可能になります。

 人手不足の企業にとって、パート社員は重要な働き手です。パート社員の定着率と労働参加率を上げるためには、パート社員が満足できる職場環境の充実が必須となります。正規雇用と非正規雇用における待遇の公正さは、パート社員の職場への満足度を上げるための重要な要素です。

 企業側は職務分析や職務評価を積極的に行い、自社がパート社員にとって魅力ある会社かどうか客観的に把握しておくことが大切です。なお、自社の働き方改革の達成度を測る方法には、職務分析や職務評価の他に、「職務チェックシート」を利用してセルフチェックを行う方法もあります。

キャリア形成促進助成金

 パート社員の残業時間の短縮を図るには、パート社員一人ひとりの能力向上も求められます。企業側はパート社員の能力向上のため、キャリア形成支援にも力を入れる必要があります。働き方改革では、従業員のキャリア形成支援対策として、「キャリア形成促進助成金制度」も展開されています。

 キャリア形成促進助成金は、労働者のキャリア形成を効果的に促進するための制度です。キャリア形成促進助成金では労働者に対して、職務に関連した専門的な知識技能の習得を目的とした職業訓練や人材育成制度を行った場合に、その訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などが支給されます。

 パート社員のキャリア形成と仕事能率向上のために、企業は助成金を活用しながら、積極的に支援を行っていきましょう。

企業内での専門知識の取得

 企業内で従業員に対する研修を行うことは、第一に一人ひとりのスキルアップ、すなわち労働生産性の向上につながります。さらに研修を通して上司と部下のコミュニケーションが活発化したり、従業員全体の一体感が深まったりするというメリットも生まれます。

研修施設での専門知識の取得

 新人社員や中間管理職に、それぞれに特化した知識や技術の研修を行うことは、一人ひとりの能力アップにつながります。新入社員は仕事に慣れていないため、通常の従業員より業務にかける時間が長くなりがちです。新人研修の段階で仕事に関する深い知識や実践的なやり方を伝授することで、必要以上の長時間労働を防ぐことができます。

 一方、中間管理職は各従業員の労働時間を監督する立場です。働き方改革では従業員全体の労働時間の短縮が叫ばれていますが、それぞれの労働時間をチェックしなければならない中間管理職層はむしろ仕事量と労働時間が増えたという実態があります。そこで企業側は、中間管理職に特化した研修を行うことでそれぞれの能力や仕事効率をアップさせ、業務負担を軽減させる必要があります。

パート社員含めた全社員の労働時間の緩和について

 働き方改革では、パート社員を含めた全従業員の長時間労働の是正をめざしています。そのための取り組みについて見ていきましょう。

労働時間インターバル制度の推進

 今回の働き方改革では、新たに「勤務間インターバル」という制度が導入されました。勤務間インターバルとは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻に一定の休息時間を設ける制度です。一定の休息時間を設けることにより、労働者の十分な睡眠時間や生活時間を確保することを目的としています。

 勤務間インターバル制度は、日本では馴染みのない考え方であるため、具体的なインターバル時間の判断は各企業に委ねられています。ちなみに、日本政府が推奨する勤務間インターバル時間は11時間です。たとえば前日の終業時刻が23時であった場合、翌日の始業時刻は11時間後の10時となります。

 以上の例のように、たとえ残業で終業時刻が深夜になったとしても、勤務間インターバル時間を設けておけば、従業員は充分な休息時間を確保することができます。休息時間や生活時間の確保は、個々の事情に合わせて労働と生活の調和を図る「ワークライフバランス」の実現につながると期待されています。

労働時間の上限規制の取り決め

 2019年の働き方改革により、時間外労働時間について上限規制と罰則が設けられました。具体的な時間外労働時間の上限規制については、以下の表をご覧ください。

原則 例外(臨時的に特別な事情がある場合)
・月45時間
・年360時間
・年720時間以内
・複数月平均80時間 (休日労働を含む)
・月100時間未満 (休日労働を含む)

 もともと雇用者が労働者に法定労働時間を超える時間外労働を行わせる場合は、両者間で36協定の締結が必要です。36協定とは、時間外労働に関するさまざまな事柄を記したものです。

 しかし36協定には厳格な罰則規定がなく、さらに締結さえすれば内容は青天井という抜け道があったため、労働者を不当な長時間労働から守るための実質的な効力はありませんでした。今回の働き方改革に伴い、雇用者は臨時的に特別な事情がある場合でも、「年720時間・月100時間」を超える時間外労働を強いることはできません。

 上限規制に違反した場合には、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。そのため、雇用主はパート社員を含む全従業員に対し、適切な労働時間を守らせるための取り組みや環境整備を行うことが必要となります。

働き方改革における有給休暇取得について

 日本では有給休暇の取得率の低さが指摘されています。その背景には、従業員側から有給休暇を申請しにくいという状況があります。そこで働き方改革では、従業員が有給取得を有効活用し、長時間労働の是正やワークライフバランスの実現が可能となるように法整備が行われました。

有給休暇について把握する

 2019年4月より、全企業で、労働者に対し年5日以上の有給休暇取得の義務付けがスタートしています。有給取得の対象となるのは、1年に10日以上の年次有給休暇が付与される労働者です。この10日間の有給休暇の内の5日間については、雇用者が時季指定を行い、労働者に取得させる義務があります。

有給休暇の取り決め方

 雇用者が有給休暇を時季指定する背景には、従業員側からの申請がしにくいという理由があります。そこで、雇用者が労働者一人ひとりに聞き取りなどを行い、できる限り従業員の意志を尊重した有給休暇の時季指定を行うことが義務付けられています。

 従業員は有給休暇を取得することにより、休息時間や生活時間の確保が可能となります。休息時間や生活時間の確保はワークライフバランスの実現や、労働生産性の向上につながります。労働生産性の向上は企業側にとってもメリットとなります。

 そのためにも、企業は従業員に有給休暇の取得を促すことが必要です。ただし、従業員に長期の有給休暇を取得させる場合には、繁忙期を避けるなど、業務との兼ね合いを図る必要があります。有給休暇を適正かつ、業務に差し障りが出ない範囲で取得させるには、「年次有給休暇管理簿」の作成や、社内全体で共有するなどの対策が必要です。

増加する駆け込み有給休暇

 年に5日間の有給休暇の取得は、労働者が労働と生活時間の調和を図るワークライフバランスの実現を目的としています。しかし「年に5日間以上有給休暇を取得すればいい」という考え方から、年度末に駆け込みで有給休暇を5日間取得するケースも少なからずあります。

 駆け込み有給休暇は、本来のワークライフバランスの実現とはかけ離れた考え方です。企業側は、駆け込み有給休暇を是正するための取り組みが必要です。たとえば駆け込み有給休暇により業務に差し障りを防ぐためにも、「有給休暇計画」を練っておく必要があるでしょう。

 併せて、担当者は各従業員が計画通りに有給休暇を取得できているか定期的にチェックを行い、必要があれば声かけなどを行う必要があります。有給休暇の取得により業務に支障が出る場合には、半日ずつこまめに有給休暇を取得させ、業務への負担を分散させるなどの対策も必要となります。

 有給休暇の取得率が上がらない背景には、従業員が「有給休暇を使ってはいけない」という強迫観念を抱いていることも理由の1つです。企業側はそれらの不安を払拭し、従業員が安心して有給休暇を取得しやすい雰囲気づくりを行うことも大切です。

有給休暇に関する罰則について

 年に5日間の有給休暇の取得義務については、すでに2019年4月より全企業でスタートしています。違反した場合には経営者に「6年以下の懲役、または30万円以下の罰金」というペナルティが発生します。罰則を受けないためにも、企業側は該当労働者への有給休暇の取得を徹底させましょう。

 なお、有給休暇の取得の管理に当たり、企業には「年次有給休暇管理簿」の作成と、3年間の保存が義務付けられています。

働き方改革を通じて企業成長を発展させる

 働き方改革では、パート社員などの非正規雇用と正規雇用の待遇差の解消も重要な課題の1つとされています。待遇格差を解消し、誰もが働きやすい環境作りを行うには、企業側・従業員側の双方の協力が必要です。

 特に企業経営者はこの点を理解し、定期的に従業員との対話を行う機会を設けるなどの対策を行い、非正規雇用がより活躍できる会社づくりを心がける必要があります。非正規雇用の労働生産性や労働参加率の向上は、結果として企業全体の成長につながります。

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

連載記事一覧

メルマガ登録


「人材不足」を働き方改革で乗り越える


教育機関向け特集


自治体向け特集


イベント・セミナー情報


ICTコンサルティングセンタ

ページトップへ

close