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2021.02.09 (Tue)

いまさら聞けない働き方改革のイロハ(第16回)

働き方改革「3本柱」の詳細と目的、その課題を解説

 そもそも働き方改革の「3本柱」とはどのようなものでしょうか。この記事では、働き方改革3本柱の詳細と目的、課題について説明していきます。この記事を読むことで、働き方改革3本柱の知識を身につけてください。

働き方改革「3本柱」とは?

 働き方改革という言葉は知っていても、詳しい内容は知らないという人は一定数存在します。

 2019年4月1日より、働き方改革関連法案が順次施行されました。一口に働き方改革と言っても、その具体的な内容は「労働時間の是正」「正規・非正規間の格差解消」「多様で柔軟な働き方」の3つの柱をもとに成り立っています。

 それぞれの3つの柱の具体的な内容について、以下の見出しで詳しく解説します。

労働時間の是正

 働き方改革の1つ目の柱である「労働時間の是正」とは、過労死の問題を解消し、防止するために掲げられたものです。

 具体的には時間外労働の指標を示すものとなっており、原則として月45時間、年360時間までと定められています。ただし、例外も設けられており、特別な理由がある場合のみ、月100時間未満、年720時間までとされています。

 ちなみにこの労働時間には、休日の労働時間も加算されます。複数月の場合、月80時間が上限です。

 また、労働時間の是正は、プライベートと仕事との調和を目的としたワークライフバランスの推進にもつながります。プライベートと仕事を両立させることは、労働時間の適正化の第一歩と考えられているからです。

正規、非正規間の格差解消

 現在、日本の労働環境では正規と非正規間での賃金や収入の格差が問題視されています。この賃金や収入などの格差を解消するために掲げられました。

 大企業の場合、正規雇用と非正規雇用での賃金や収入には、年収に換算して100万円以上の差があるとされています。これは中小企業の場合も同様です。

 雇用形態にかかわらず、労働内容が同じなら同等の給与を支払わなければならないというのがこの柱の具体的な内容です。

多様で柔軟な働き方の実現

 「多様で柔軟な働き方の実現」とは、簡単に言えば「高度プロフェッショナル制度」についての基準です。

 当たり前とされていた勤務時間に対する給与設定だけではなく、仕事の成果などによって収入を得る働き方などを、労働者側が自分の意志で選択できるように定められたものです。

 ただし、経営者や雇用する側の中には、裁量労働制と勘違いをし、自分たちの都合の良いように活用する可能性があります。そのため、以下のような基準が設けられています。

・高度な専門知識やスキルが求められる業務
・「平均給与額」の3倍以上の年収を支払う
・雇用主による保険確保措置などの実施
・労働者本人の希望

 これらの条件をすべて満たさなければ、高度プロフェッショナル制度は適用されません。

 その他の柔軟な働き方の例として、フレックスタイム制が挙げられます。朝早い出勤が難しい人は出勤時間を後ろへずらし、その代わり夜遅くまで業務にあたるという働き方です。

以前まで存在していた働き方改革「5本柱」とは?

 働き方改革という言葉は、ニュースなどで良く取り沙汰されています。現在の働き方改革は上記の3本柱がもとになっていることは解説しました。

 しかし、以前は働き方改革の「5本柱」が存在したことをご存じでしょうか。どのような内容だったのかについて、以下の見出しで詳しく解説します。

働き方改革の「5本柱」の紹介

 「働き方改革」そのものは、安倍晋三元首相が中心となって行われてきました。しかし、その内容については何度も見直しなどがされ、2016年9月~2017年3月までで合計10回も実現会議が行われました。その詳しい内容については以下の通りです。

・同一労働同一賃金
非正規雇用の処遇改善を目的としたパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正

・長時間労働の是正
新たな労働時間の上限の規定を目的とした、36協定の見直し

・配偶者控除から「夫婦控除」への移行
夫婦控除の最大の問題とされている103万円の壁を取り払い、もっと働きたいと考えている人が働きやすい環境を作るための新たな所得制限の設置

・雇用のミスマッチ解消
人材育成や社会人の学び直しを目的とした、返済不要の給付型奨学金の創設

・外国人労働者受け入れ
介護関連などの人材不足を解消するため、移民とは違った外国人労働者の受け入れ

働き方改革「3本柱」の目的とは?

 働き方改革は、「一億総活躍社会」というスローガンを掲げ、働く人の目線に立って生産性などを向上させることを目的としています。

 日本企業は今まで、働くルールが存在しない「無限定正社員」を想定してきました。正社員に過酷な労働条件を強いてきたのです。

 しかし、働き方改革では、このような働く人に過酷な労働条件を強いるのではなく、従業員に合わせた多様で柔軟な働き方を増やすことを目的としています。

 具体的な内容については、以下の見出しで掘り下げて解説します。

働き方改革が必要となった背景

 働き方改革が必要となった背景の最大のポイントは、少子高齢化です。働き盛りの若い人たちが少なくなったことで労働力不足が深刻化し、労働条件や職場環境などの見直しをせざるを得なくなりました。

 具体的な見直しのポイントとして注目されたのは、「長時間労働」や「過労死問題」です。労働力不足から1人にかかる仕事の負担などが大きくなり、長時間労働を強いられ、損結果過労死をするという問題がクローズアップされるようになりました。

 ただでさえ労働力不足になっている中で、貴重な若い働き盛りの人たちが減ってしまうことは、日本の労働生産性低下させる原因にもつながります。

 働き盛りの若い人たちがより良い条件や環境の下で仕事をし、日本の労働生産性を向上させるためには、働き方の見直しをしなければいけません。このような理由から、働き方改革が必要になったのです。

働き方改革の目的

 働き方改革の最大の目的は、「労働者にとっての働きやすさ」です。労働者にとって働きやすい環境や条件を設けることは、生産性の向上にもつながります。

 労働者にとって働きやすい環境を作るために具体的に行ったのが、働く人の意思や能力などで働き方そのものを選択できるという社会づくりです。

 労働者個人にとって働きやすい環境であるかどうかは異なります。一人ひとりに対応した労働環境や条件が提供されるような社会づくりを積極的に行うことが、生産性の向上にとっても重要だと考えたのです。

働き方改革「3本柱」の課題

 働き方改革は、3本柱をもとに行われる労働者の視点に立った社会づくりです。しかし、実際に働き方改革に取り組む上で、いくつかの課題や問題点も存在します。

 具体的な課題や問題点の多くは、働き方改革を取り入れる企業に存在しています。労働者の視点に立った環境や条件に取り組むことは、企業側にとっては容易なことではないのです。

 以下の見出しで、具体的な課題や問題点について解説します。

働き方改革を進めていく上での課題

 働き方改革を進めていくためには、企業に働き方改革の考え方などを浸透させ、行動してもらわなければいけません。そのための課題とされているのが以下の3点です。

1.経営トップによる明確な方針の打ち出し
自社が抱える問題点を明確にし、企業と従業員がどのようにその問題点に取り組み、競争力などへ結び付けていくかということを示す。

2.実際の働き方の見える化と、制度や施策の検討
時間外労働の割合や年休取得率などを数字などで見える化し、問題点を浮き彫りにする。その上で具体的な解決策を検討し、実施していく。

3.従業員の意識改革
働き方改革の重要性を従業員一人ひとりが納得し、意識を変えて働き方改革の実施に取り組む。

 上記の3つの中でも特に重要なのは「3」です。どんなにすばらしい内容の解決案を打ち出しても、従業員一人ひとりが自分の意識を変え、自主的に取り組もうとしなければ意味がありません。そのため、この点が特に大きな課題なのです。

働き方改革によって生じる問題点

 働き方改革は、進めていくことだけが目的ではありません。働き方改革に取り組み、改善などを行っていかなければいけないのです。しかし、改革を行う中で様々な問題が企業側の負担として浮上します。

1.コストアップ
仕事の内容や効率の見直しを行う場合には、それに伴った設備投資が必要です。生産性向上を目的としたICT設備の導入などには、それなりに費用が掛かります。

2.生産性の低下
時間外労働の短縮などに取り組む場合、今までよりも短い労働時間で仕事を行わなければいけません。これにより生産性が低下するという問題が生じます。

3.人件費の増加
時間外労働の短縮などで労働時間が減少すると、生産性が低下するという問題が生じます。この問題を解消するために人員を増やすという方法があります。しかし、新たに労働者を雇い入れることは人件費の増加につながります。

4.管理職の負担増加
従業員の労働時間を管理するのは、管理職の仕事です。それ以外に有給休暇の取得なども把握しなければならなくなり、管理職の仕事が増加します。

働き方改革「3本柱」の見直しも必要

 働き方改革は、「労働時間の是正」「正規・非正規間の格差解消」「多様で柔軟な働き方の実現」の3本柱をもとに、労働者にとって働きやすい社会づくりを目的としています。

 しかし、働き方改革を取り入れる企業側の負担が大きく、実際に取り組む上では多くの課題があるというのが現状です。特に人件費の増加などは、企業側にとってのデメリットと言えるでしょう。

 労働者側の視点に立つのも重要ですが、それと同様に企業側の立場に立った見直しもある程度は必要となるのです。

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