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2020.12.23 (Wed)

いまどきのテレワーク事情(第11回)

成果が出るテレワーク、出ないテレワークの違いとは

 コロナ禍の中で企業はテレワークをどう実践すればよいのか。テレワークICT協議会会長で、テレワークに関するコンサルティングを手掛けるactuarise株式会社代表取締役の三島浩一氏が、多くの中小企業の相談を受け現場の実態をよく知る立場から、課題や改善のポイントを解説します。

<目次>
まず「わからないから感じる不安」を取り除く
生産性低下の原因は「紙とハンコ文化」にある
メールやチャットの使用時間を限定して業務に集中
「朝メール・夜メール」で仕事を見える化

まず「わからないから感じる不安」を取り除く

 2020年4月7日の緊急事態宣言をきっかけに、多くの企業にとってテレワークは、「働き方改革に含まれる可能性のひとつ」から、「いま解決しなければならない目の前の課題」となりました。IT企業によるテレワークの全面導入や、オフィスの削減といったニュースを目にすると、テレワークはすでに一般化したような印象を受けますが、三島氏は「大企業と中小企業でテレワークの浸透の状況に大きな差がある」と語ります。

 大企業の多くは、緊急事態宣言の前から、テレワークに必要なツールや環境をある程度整備していました。またITベンチャー企業も、コラボレーションツールなどを普段から使っていたことでテレワークでの業務にスムーズに移行しましたが、「中小企業の多くはいまだにツールの導入すら進んでいない」というのです。

 ツールの導入をためらう理由として、コストの問題を挙げる経営者が多いそうですが、「サブスクリプション方式で提供されるクラウドサービスなら少額から利用できます。テレワークのために必要十分な機能を備えているので、ためらわずに導入を進めてほしい」と三島氏は話します。

 テレワークに必要な環境が整っていない企業からは、「セキュリティ面が不安」という話も出るといいます。この状況に対し三島氏は、「テレワークでセキュリティに不安に感じるのは、どんな脅威があるのかよくわかっていないからです。何がどれだけの脅威になるのかをきちんと理解すれば、気を付けるべき点も明確になります」と強調します。

テレワークICT協議会会長
三島浩一氏

 「例えば、ファイルの重要度を分類して、『情報漏えいが許されないファイルは在宅で使わない』ルールを作れば、心理的障壁も取り除けるでしょう。パソコンの持ち出しによる紛失が不安なら、ハードディスクごと暗号化する方法もあります。具体的なリスクを挙げて対策を検討すれば、それほど恐れる必要がないこともわかってきます」(三島氏)。

 一方で、「ウチの社は大して重要な情報を持ってない。こんな小さな会社をわざわざ狙ってきたりしないだろう」と楽観的に考え、セキュリティ対策がおろそかになっている企業に対しては、「そういった企業のネットワークを踏み台にして大企業を狙うケースもあるため、セキュリティ対策はどんな企業でも必要です」と警告しています。

 脅威を知り、正しく恐れ、正しくセキュリティ対策をしたうえでテレワークの環境を整えるのが、どの企業にとっても重要なのです。

生産性低下の原因は「紙とハンコ文化」にある

 「テレワークで通勤時間がなくなり、デジタルツールをフル活用して生産性を高めている企業が存在する一方で、仕事がこれまで通りに進まず戸惑っている企業も多い」と三島氏は指摘。その差については、「オフィスでしかできない仕事があると効率が下がります。テレワークによって生産性が下がった企業は、今までのオフィスワークに問題があったと考えていいでしょう」と説明します。

 問題とは、ペーパーレス化が進んでないことや、ハンコ文化から脱却できていないことなど。顧客先からの注文をFAXで受けている場合も、オフィスにいなければ受注内容がわかりません。

 「オフィスでしか仕事ができない働き方をしていた企業は、今そのツケが回ってきています。それに、承認のハンコを押すことで仕事をしたような気になっているのは『仕事ごっこ』に過ぎません。もちろん、ツールが整っている大企業でも、オフィスに人がいなければ生産性が下がってしまう事態は起こり得ることなので、注意が必要です」(三島氏)

メールやチャットの使用時間を限定して業務に集中

 では、テレワークのツールを活用するに当たって気を付けることはあるのでしょうか。三島氏は、「用途に応じてツールをうまく使い分けること、そしてそのルールを全員に周知することが重要です」とポイントを説明します。

 「何かを告知するだけならメールや掲示板が適しています。リアルタイムに近いコミュニケーションが取りたい場合はチャットですね。ただし、後で検索したい内容が含まれるようであれば、チャットでは検索しにくいため、メールにしたほうがいいでしょう」と三島氏。さらにメールの件名について社内ルールを決め、返信が必要な場合は「要返信」と入れるなど統一すると効率的だといいます。

 集中力を高めるため、ツールを使いすぎないことも重要。メールやチャットに対してリアルタイムで返信していると、なかなか仕事に集中できません。そこで三島氏は、ツール利用時間のルールを決めることを推奨しています。

 例えば、「1時間のうち最初の5分だけをメールの返信に充て、残りの55分は返事をしない」ルールや、「午前9~10時をコミュニケーションの時間に決めて、10時以降は自分の仕事に集中する」ルールです。

会議については、ZoomやMicrosoft Teamsなどの優れたWeb会議ツールが普及していますが、「そもそもその会議が必要かどうか、しっかり考えてください。これはテレワークに限ったことではありませんが、毎週行う定例会議も特に議題がないときはやめる、決議しないような会議はやらないといったように、『会議の仕分け』が重要です」と三島氏は指摘しています。

「朝メール・夜メール」で仕事を見える化

 さらに三島氏は、「部下の管理」を、テレワークを円滑に進めるポイントとして挙げています。「管理と監視は違います。部下がサボっていないか監視するのは『監視』であって『管理』ではありません。進捗管理やタスク管理など、『管理』という名の付くものでマネジメントしましょう」。これが管理者としてテレワークを機能させる適切な方法だと三島氏は話します。

 適切な管理として三島氏が例に出したのは、1000社以上の働き方改革を成功させた株式会社ワーク・ライフバランスが提唱する「朝メール・夜メール」。朝メールでは、社員それぞれが当日の時間の使い方を15分単位で区切って書き出し、チーム全員にメールします。夜メールでは、朝メール通りの1日だったかどうかを実際に報告するのです。

 「もちろんすべてが予定通りに進むとは限りませんが、報告義務があるため社員一人一人が働き方を意識して1日を過ごすようになり、残業が減ります。成果が出ない日もありますが、何をしたのか上司に説明できる働き方ができるようになります」(三島氏)

 誰が何をするのかをチーム全員が把握することで、チームワークが強化され、業務の属人化解消にもつながると三島氏は話します。チーム内の業務を「朝メール・夜メール」で見える化すると、「この人がこれをやるのであれば、過去に使った資料を渡そう」といったように、協力体制が取りやすくなるのです。さらに、テレワークの場合は同じ空間で仕事をしているのと比較して、その人の業務量がわかりにくくなりますが、仕事を見える化することで、「あの人は忙しいそうだから、急ぎの仕事を頼まないようにしよう」というような、細かい配慮が可能になるのだそうです。

 「管理者側も、部下の忙しさや仕事の期限が把握でき、アウトプットを管理して適切な評価ができるようになります。チーム内のスケジュールを管理し、特定の個人に仕事が偏らないよう調整もできます」(三島氏)。

 同氏が代表を務めるactuarise株式会社では、チームメンバーがスケジュールとやるべき仕事を登録して仕事量を見える化することで、チームリーダーがメンバーの仕事量やアウトプットを把握できるクラウドベースのマネジメントツール『チームToDo』を提供して、企業の働き方改革を後押ししています。

 もっとも、朝メール・夜メールやチームToDoのような管理方法は、従業員にとって申告や報告の手間が増えるため、「導入時に必ず反発を受けます」と三島氏は警告します。導入の際には、必要性をきちんと説明し理解してもらうことがポイントです。従業員に自分の仕事を正しく評価してもらえるメリットを理解させることが管理者にとって重要なのです。

 「監視の一環だと思われてしまってはチームメンバーの協力を得ることが難しくなります。日の業務を共有すれば、チームワークが良くなり、仕事の効率も高くなることを強調するなど、メッセージの伝え方が重要です」(三島氏)

 1日2回、朝と夜の業務報告は、計画性を持って仕事を進めるうえで、チームだけではなく個人レベルでも役立つ方法です。テレワークで仕事の効率が上がらないと悩んでいる人は、まず仕事量の見える化から始めてみてはいかがでしょうか。

<インタビュイープロフィール>

三島浩一(みしま こういち)
パナソニックの販売子会社に新卒で入社後、デジタルアーツ株式会社、EMC(現:Dell EMC)の日本法人を経て2013年8月にactuarise株式会社を設立。2015年にテレワークICT協議会を立ち上げ、全国で講演を行っている。著書に電子書籍『業務効率を格段にあげる「チームToDo」という発想』がある。株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタント養成講座を修了。
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