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2019.06.25 (Tue)

自治体ならではのICT活用(第1回)

定型業務を効率化するICT投資は決して高くない

posted by 岩元 直久

 自治体にはさまざまな業務があり、多くの人手を必要としています。一方、超高齢社会の到来は生産年齢人口の減少につながり、近い将来、3人に1人が高齢者となれば、自治体の運営基盤となる税収が減少します。求められる公共サービスに対して十分な人手をかけられなくなるリスクが顕在化しているのです。そうした中、最新のICTツールが自治体の定型業務を効率化するとして注目されていますが、その投資対効果はどう考えればいいのでしょうか。

 最新ICTツールの代表が、ロボットソフトウェアによってPC操作を自動化できる「RPA」(Robotic Process Automation)や、人工知能(AI)によってより高い精度で文字を読み取れるようになった「AI-OCR」(AI-Optical Character Recognition)です。企業や自治体の導入事例記事などを読んだことのある人も多いでしょう。「書類を入力する業務が自動化できたら、業務改善できるのは分かった。しかし、コストが高いに違いない」。そんな声が聞こえてきそうです。

ICT投資は人件費とのバランスで考える

 自治体の庁舎内で皆さんが忙しく立ち回っているその業務は、もしかしたらRPAとAI-OCRを組み合わせて自動化できるかもしれません。自治体の職員の方々からは、「書面からのデータ化と、システムへの投入などの後処理に追われている」という声を聞くことがあります。検索、ダウンロード、申請といったPCを使った単純な作業はもちろん、メールの定期的な配信、ふるさと納税への対応のような時期が集中する申請への対応など、紙を扱ったりシステムを手作業で動かしたりする業務は、それこそ庁舎内のあちらこちらに山積みされているのです。

 例えば、検索、ダウンロード、申請の業務に1件当たり10分の稼働が求められるとしましょう。1日に5~6件の作業があったとしても、月に換算すると120件ほど、年間に積み上げるとおよそ1500件の作業量になります。これは、年間250時間の労働時間に相当します。1日に数件の業務だとさほど現場としては大きな労働負荷と意識しないかもしれませんが、年間を通してみれば1人の職員などが1カ月半もの単純労働をしていることになります。

 この労働時間に相当する人件費と、ICTツールの導入や運用コストのバランスを考えることが重要です。ICTツールを導入すると、そのコスト面ばかりに目が行きがちです。しかし、ここで年間250時間の業務が削減できた場合、ICTツールの導入コストは業務削減によるコスト減少で相殺できるかもしれません。そうした視点を持つと、RPAやAI-OCRといった最新ICTツールの導入は、臨時職員や契約職員を苦労して雇って人件費を支払うよりも、コストメリットをもたらす可能性があることに気づくでしょう。紙を読み取ってシステムに登録するような仕事を自動的にこなすICTツールを新たな「労働力」として位置づけることで、戦略的なICT投資が可能になるのです。

 また、新たに人を雇ったり、配置転換したりする場合には、研修費用などがかかる場合もあります。そうしたコストも無視できません。

 「そうはいっても、本当に効果が得られるかどうか分からない」という声もあります。そのような場合には、ICTツールを提供するベンダーなどと手を組んで「実証実験」を行う方法が有効でしょう。導入してみて効果を検証し、確かな効果を知ってから本格導入するという多段のフェーズでICT投資の最適化を図れます。

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職員の役割はより良い住民サービス提供にシフト

 RPAやAI-OCR のようなICTツールには、こうして単純に人手を置き換えるコストメリット以外にも着目すべき点があります。

 1つは、稼働時間です。人間は1日8時間の労働が基本です。一方でICTツールは24時間365日稼働できます。人間とICTツールで同じ業務処理効率だったとしても、1日に3倍の仕事を済ませてくれるのです。ICTツールのほうがより効率が高い場合もあり、その場合は差がさらに開きます。

 もう1つは、ミスが起きにくい点です。人間は、繰り返し作業をしていると、慣れや疲れから注意力が低下し、ミスを起こしがちです。一方、ICTツールならば、指定した通りの作業であれば間違いなく業務を遂行します。例えば、メールを定期的に配信するといった業務では、人間の作業だと送信先リストの選択間違いなどといった操作ミスがありえます。万が一、操作ミスによる誤送信が情報漏えいなどを起こしてしまったら大問題です。情報漏えい事故の対応コストは計り知れません。RPAで自動的に配信するようにすれば、操作ミスのリスクが減ることになります。

 このように、単純に人手の作業をICTツールに置き換えるコストメリットに加えて、業務効率化やミスの低減といったメリットも得られるのです。ここで得られるメリットは、「ICTツール導入で職員削減」ということとは異なる価値をもたらしてくれます。人間の職員は、ミスが許されない単純作業を繰り返し行う業務をICTツールに任せて、より創造性や独創性のある業務へとシフトできるからです。

 自治体には、魅力あるまちづくり、持続可能な地域づくりが求められています。職員が目先の単純作業で手一杯だったら、こうした新しい取り組みにかけられる時間も労力も生まれてきません。ICTツールの適切な導入で、より良い住民サービスの提供から新しいまちづくり、地域づくりへの取り組みまで、職員がやりがいのある業務に力を入れられるようになるのです。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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