2021.9.14 (Tue)

自治体のICT活用の勘所(第2回)

自治体に導入進むか、AI活用の高度災害予測システム

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 かつては「50年に1度」「100年に1度」とされていたレベルの激甚災害が、近年、頻繁に発生しています。そこで国や各自治体が力を入れているのが、災害の予測です。ビッグデータやAI、デジタルツインなどの技術を活用し、災害を発生前に検知、いち早く対策を行う取り組みが行われています。国内における災害発生状況の推移、現状や最新動向、開発が進められている災害予測ソリューションなどを紹介します。

12件から47件へ、自然災害の発生件数は大幅に増加

 中小企業庁が作成したデータによると、1971~1975年の日本における自然災害の発生件数※は12件だったのに対し、1991~1995年は28件、2011~2015年は47件と、年々、発生件数が増えていることがわかっています。
※ここでの自然災害とは、「死者が10人以上」、「被災者が100人以上」、「緊急事態宣言の発令」、「国際救援の要請」のいずれかに該当する場合

 また、国土交通省白書2020では、「日降水量が200mm以上となる年間の日数を『1901年から1930年』と『1990年から2019年』で比較すると、直近の30年間は約1.7倍の日数となっている」ということも報告されました。

 これらのデータからもわかる通り、日本の災害発生件数は、多少の増減はありつつも全体としては右肩上がりで増加し続けています。直近では、2020年に熊本県を中心とした「令和2年7月豪雨」(死者84名)が、2021年に静岡県や神奈川県を中心とした「令和3年7月1日からの大雨」(死者22名)が発生しており、ニュースなどで、連日、警戒を呼び掛けるアナウンスと被害状況が報道されました。

 これらに加えて、2020年からは、新型コロナウィルスの感染拡大が続いています。地震、豪雨、感染症、あらゆる災害が私たちの生活を取り巻き続けており、日本はいまや「災害とともに暮らす国」と言っても過言ではないほどの過酷な状況に置かれているのです。

死者の数は横ばいか微減傾向。防災技術の発展が顕著

 こうした状況がある一方で、「死者の数は増えていない」というデータも発表されています。内閣府の令和元年防災白書によると、阪神淡路大震災、東日本大震災の発生年を除けば、1960年以降の災害による死者・行方不明者の数はほぼ横ばいかわずかに減少していることが判明しています。

 災害が増え続けているにも関わらず被害の拡大を回避できている理由は、防災体制の整備・強化が進んだことや、国土保全の推進、気象予報の向上などにあると考えられています。また、災害対策の一環として、国や自治体を挙げて開発が進められている災害予測ソリューションも一役買っていると見てよいでしょう。センサーデバイスやビッグデータ、AIなどを活用したソリューションにより、高度な災害予測技術が多数生み出されており、現在も続々と、新たな技術の実証実験や実用化などか進められています。

高度な災害予測ソリューションが続々と開発

 災害予測ソリューションを活用すれば、豪雨をいち早く予測して避難を促したり、地震の前兆を検知して先回りの対策を講じたり、よりスムーズな避難所運営や災害救助を行うことなどが可能になります。実際にどのようなソリューションが開発され、役立っているか、その内容や事例を見て行きましょう。

 内閣府は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のなかで、避難・緊急活動支援統合システム「CPS4D: Cyber-Physical Synthesis for Disaster Resilience」(以下、CPS4D)の開発を進めています。CPS4Dは、東日本大震災を受けて開発された「SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)」をさらに進化させたもの。SIP4Dで集めたデータを活用し、例えば、台風が発生した際にどの地域にどの程度の水害が起きるか、これに伴いどのように道路状況の変化が生じるか、各自治体の職員一人が何人の被災者に対応する必要があるかといったことを時系列で予測することができるようになると言います。フィジカル空間(現実の空間)で取得したデータをサイバー空間(仮想空間)に落とし込み、AIなどを使って分析、再現、予測する「デジタルツイン」の概念を用いたソリューションで、2022年度に完成する予定です。

 民間の企業でも、災害予測システムの研究が進められています。2019年、国内の大手保険会社が、世界最大級の気象情報会社、アメリカのスタートアップ企業と提携し、ビッグデータとAIを活用した防災・減災システムを開発すると発表しました。こちらのシステムの特長は、気象情報会社が保有するビッグデータに、保険会社や自治体がもつデータを掛け合わせて活用しているところです。複数の組織がもつビッグデータと災害科学、AIを組み合わせ、洪水や地震の被害状況を予測。地図上に、最大3日前から予測データが表示されるようなっています。2019年から九州の自治体と共同で実証実験が行われており、現在、実証実験の対象地域を拡大する方向で取り組みが進められているところです。

災害の減少は見込めない。継続した対策を講じ「災害に負けない地域づくり」を

 日本は、もともと地震、洪水、土砂災害が多い国です。国土交通省白書2020でも「全国土の約7割を山地・丘陵地が占めており」、また日本の河川は「世界の主要河川と比べ、標高に対し河口からの距離が短く、急勾配で」、結果として、「洪水や土砂災害がたびたび発生している」と指摘されています。加えて、「地震の発生回数は、世界の18.5%と極めて高い割合を占めている」、「世界には約1,500の活火山があると言われているが、我が国にはその約1割が集まっている」との記述もあり、そもそもの地形や環境が、非常に災害を誘発しやすいものであることが垣間見えます。

 ここに、地球温暖化をはじめとした世界規模での環境変化が重なっているのですから、災害の増加を避けることはほぼ不可能です。「災害は必ず起きるものである」と認識し、事前に徹底して対策を講じることが欠かせません。今後も継続して、建築物の耐震性強化、治水システムの構築、そしてテクノロジーによる災害予測システムの開発などを、幅広く推進していく必要があると言えそうです。

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