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2019.07.03 (Wed)

自治体の被災者支援(第3回)

「モバイル&紙」のハイブリッド活用で被災住民を支援

posted by 岩元 直久

 地方自治体にとって、災害時のスマートフォン(以下スマホ)・タブレットなどのモバイルツール活用シーンが増えてきました。自然災害とスマホの関係といえば、被災地の住民や自治体職員の情報源として使われていることは言うまでもありません。しかし、ここで自然災害とモバイルツールの関係に注目しているのは、そうした一般的な情報収集や連絡の手段としてではありません。被災住民の支援を円滑に進めるための業務ツールとして、スマホ・タブレットの存在がクローズアップされてきているのです。

 スマホ・タブレットが被災住民の復旧支援に役立つとは、どのようなシーンでしょうか。被災した自治体には、生活の拠点である家屋を失ったり、損傷を受けてしまったりした住民がいます。そうした被災住民の生活再建には、被災者生活再建支援金の支給や住宅の応急修理など多くの被災者支援策が用意されています。

 一方、こうした支援策を受ける際には、被災住宅の被害の程度を市町村が証明する「り災証明書」が必要になります。すなわち、被害の程度を調査する「被害認定」を速やかに行うことが、自治体に求められる業務の1つになります。ここでスマホ・タブレットの活用の場が広がっているのです。

建物被害認定調査には膨大な手間が必要

 建物被害認定調査について、簡単に復習しておきましょう。災害によって被害を受けた建物について、市町村などの自治体は建物被害認定調査を行う必要があります。実際の調査手法は、国によって標準的な方法が定められています。研修を受けた調査員が2人以上のグループで被災住宅を訪問して、住宅の損傷状況を調査するといったものです。その調査の結果から、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「半壊に至らない」の4段階で被害認定をします。損傷状況の調査のデータは紙の調査票に記入し、同時に写真撮影などによって客観的な状況も記録しておくことが一般的です。

 支援に必要な、り災証明書を発行するための重要な情報が、紙の調査票です。現地調査で調査票に結果を記入し、役所に持ち帰って被害認定の根拠とするわけです。これまで紙の調査票が一般的に用いられてきましたが、課題もありました。数百件、数千件といった大規模な災害に見舞われた場合には、せっかくの調査票の情報がすぐに活用できません。紙のままでは検索性に乏しいですし、システムで処理できるデータにするためには調査票の内容を1枚ずつ入力する必要があったからです。

 被災した自治体は、そうでなくても多くの業務の処理に追われています。データ入力のための手間をかけずに、建物被害認定調査の結果を速やかにデータ化するにはどうしたらいいのでしょうか。

 そこで、スマホ・タブレットの活用が注目されています。スマホ・タブレットを使えば、現地調査の際に入力したデータをリアルタイムに本部の情報として更新できます。紙の調査票に記入し、それを持ち帰って整理し、システムに改めて入力するという何重もの手間が省けるのです。

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モバイルと紙をハイブリッドで使いこなす準備を

 スマホ・タブレットを活用した建物被害認定調査はすでに始まっており、2018年(平成30年)9月に発生した北海道胆振東部地震の際にも実施されました。

 スマホ・タブレットの利用は、紙の調査票からシステムへの入力の手間を省く以外にも効果が認められています。建物被害認定調査向けの専用アプリケーションを利用すれば、現地調査時の計算ミスを防ぐことができますし、現地で撮影した写真の管理も容易に行うことが可能になります。

 しかし、それならば全面的にスマホ・タブレットによる建物被害認定調査に切り替えればいいのかというと、話はそう簡単には進みません。被災地ではさまざまな社会インフラに障害が起こるリスクがあるからです。電力網の途絶、無線通信インフラのトラブルなどがあると、スマホ・タブレットの充電や通信ができずにメリットが活かせない状況も起こり得ます。そもそも、スマホ・タブレットの建物被害認定調査の使い方に習熟した担当者を、調査に必要なだけ確保すること自体が難しいかもしれません。

 被災時の"非日常"の業務環境では、1つの手段だけに業務を委ねることにリスクがあります。スマホ・タブレットを活用した建物被害認定調査のメリットを享受できる準備は整えつつ、紙の調査票という電力・通信インフラへの依存度が低い手法も残しておく必要があるといえます。「スマホ・タブレット」と「紙の調査票」のハイブリッド型の建物被害認定調査の仕組みを整えておけば、業務の効率化と、あらゆる条件下での業務完遂の双方を満たせるのです。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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