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2019.03.27 (Wed)

業務効率化が急務なワケ(第1回)

働き方改革法施行前夜。長時間労働大丈夫ですか

posted by 林 達哉

 超少子高齢化による労働人口減少、働く人のニーズ多様化といった課題解決をめざして成立した働き方改革関連法が、2019年4月1日から本格的に施行されました。今回の法改正は、残業削減や賃金格差を是正するための規制を明文化し、違反には懲役・罰金といった罰則を科して強制力を持たせたのが特徴です。大企業はもちろん、これまで取り組みの遅れが目立っていた中小企業も、速やかな対応が求められます。

 2018年12月、日本商工会議所が全国の中小企業約2000社を対象として行った「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」によると、働き方改革で施行される「時間外労働の上限規制」の内容について、全体の4割近くが「知らない」と回答しています。この上限規制は、2020年4月から中小企業にも施行されます。まだ十分に理解が進んでいないのが実情のようです。

 働き方改革関連法の主な改正点は、
(1)時間外労働の上限規制
(2)同一労働同一賃金
(3)高度プロフェッショナル制度
の3つです。このうち、ビジネスパーソンにとって最も身近なのが「残業時間の上限が決まる」です。この改正で何が変わるのか、そして、どんな対策を講じる必要があるのかについて考えてみましょう。

長時間労働は「指導」から「処罰」へ

 今回の改正では現行の時間外労働の上限を「指導」から「法律」に格上げし、違反を罰則対象としました。さらに、臨時的な特別の事情がある場合にも上限を定めています。ポイントをまとめると以下のようになります。

(1)原則的な時間外労働の上限時間の基準は、1カ月45時間かつ1年360時間まで
(2)特別な事情があっても、1年720時間まで

 ただし、(2)の場合、「単月で100時間未満」「2~6カ月の平均で月80時間以内」「月45時間を上回る回数は年6回まで」のすべてを満たす必要があります。これらの規制に違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

 いかがでしょうか。例えば年末の繁忙期(11月、12月)に月95時間の残業が発生した場合、「単月で100時間未満」の規定はクリアしますが、「2~6カ月の平均で月80時間以内」とはならず、違反になります。これまでは、長時間労働には労働基準監督署から指導が行われてきましたが、今後は労働基準法違反として、いきなり処罰対象になるのです。経営者は厳守を求められます。

「残業するな!」では解決しない

 「残業が減ると売り上げも減る」「繁忙期に残業しなければ、会社がつぶれてしまう」。これらの声は、働き方改革関連法案の成立前後によく聞かれた言葉です。人材不足が深刻化する中で労働時間の削減は企業の体力を奪い、結果的に経済を停滞させるのではないかという危惧には理解できる部分もあります。しかし、多くの労働者が長時間労働に従事し、過労死や精神的疲労による自殺が発生していることも事実です。少なくとも今は「会社の事情」よりも「制度への対応」、つまりコンプライアンスを優先するべきでしょう。

 一方、法改正によって「サービス残業」や「エア退社」が表面化し、深刻な問題となる恐れがあります。タイムカードなど記録上は勤務を終えているにもかかわらず、実際にはオフィスに戻って仕事を続けたり、自宅に持ち帰って続けたりするなどのケースです。働き方改革関連法で残業時間が制限されると、勤務記録と乖離するこのような残業が増える可能性があります。パソコンを業務に使用しているなら、その立ち上げ時間やシャットダウンした時間のデータが取れます。このデータがサービス残業の証拠とされるかもしれません。裁判になれば、法律違反に問われます。

 しかし、長年続いてきた「残業頼み」の状態から、急に脱するのは簡単ではありません。現場の社員にとって、残業は多くの場合「必要性を感じるから行う」ものであり、現場任せではいつまでたっても改善しない可能性があります。もはや「残業するな!」という指示のみでは、解決につながりません。

 違反によって処罰されるのは経営者ですから、残業削減については経営者が先頭に立ち、トップダウンで取り組むのが望ましいでしょう。

ICTを活用した業務効率化で「脱残業」を

 仕事の量を減らさず時間外労働を少なくする方法としては、
・人員の増強(働き手を増やす)
・業務内容の見直し(効率化を推進)
・労務管理の徹底(社員の意識啓発)
などが挙げられます。この中で現在、最も大きな効果が期待されているのが「業務効率化」です。ICTを活用すれば、業務効率化が進み、結果として労働時間短縮につながります。

 新技術として注目されている要素の1つが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」です。これは、定型的な事務作業を自動化ソフトウエアが代替するものです。数年前は大企業での導入が中心でしたが、最近では中小企業も活用しやすいサービスも続々登場し、手軽にトライできる環境が整いつつあります。

 さらに、最近はAIとOCR技術を組み合わせたツールも登場しています。RPAとこのようなツールを組み合わせれば、手書き書類のシステム登録を自動化できます。例えば、手書きのFAX伝票をデジタル化してAI-OCR技術で読み取り、テキスト化した注文情報をシステムに自動登録できます。今後、新たなRPAの活用法も広まっていくでしょう。

 企業にとって、「残業減=売り上げ減」という結果は避けなければなりません。とはいえ、人材不足に悩む現状で人員増強は困難、という恨み節も聞こえてきます。働き方改革関連法の施行を契機に、全社員が「業務を効率化して残業を減らす方法」を真剣に考えてみる必要があるでしょう。

林 達哉

林 達哉

出版社勤務を経て独立。メディアコンテンツ制作、マーケティングに携わる傍ら、IT、ビジネス等の分野で執筆活動を行う。

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