求められる自治体の生産性(第6回)

地方創生や雇用拡大も、自治体BPOの成功例を紹介

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

 行政サービスに対する市民ニーズの多様化に伴い、自治体職員のリソース不足が課題となる中で、一部業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に注目が集まっています。コールセンターでの問い合わせ対応や通常の窓口業務の一部を民間委託するほか、コロナ禍以降は補助金やワクチン接種に関わる事務作業をBPOで対応する自治体も見受けられます。ここでは、自治体BPOの現状や、事例をもとに各自治体がどのようにBPOを活用しているのかを紹介します。

リソース不足の中で多様化、煩雑化が進む自治体業務

 自治体がBPOを進める目的の一つは、職員がコア業務に集中できる環境を作ることです。少子高齢化や在留外国人の増加、マイナンバー交付・新型コロナウイルス感染拡大といった社会情勢の変化に伴い、自治体では新たな業務が次々と発生しています。

 行政サービスは生活の基礎的な部分を担っていることから、例え利用者が少ないサービスであっても簡単に廃止するわけにはいきません。結果、職員の仕事は多様化・煩雑化の一途をたどっています。そこで、自治体職員でなくとも対応が可能な一部業務を民間企業に委託することにより、職員がコア業務に集中できるようにし、より良い行政サービスの提供につなげようとしているのです。

 自治体業務のBPOは、2016年のマイナンバー交付に関わる対応から増加を始め、コロナ禍以降は各種補助金や給付金の支給、ワクチン接種事業が自治体の急務になったことから、さらに需要が高まりました。BPOを請け負う企業側の状況も変わってきており、アウトソーシングの専門企業以外にも、旅行会社や航空会社といった他に本業をもつ企業が参入を始め、市場拡大に拍車がかかっています。

コロナ禍の補助金受付やワクチン接種会場運営など、各自治体のBPO事例を紹介

 では、実際にどんな業務が民間企業によって代行されているのでしょうか。いくつかの事例を紹介します。

 千葉県白井市は、国民健康保険や国民年金、後期高齢者医療に関わる届出などの受付対応、システムへの確認入力、交付といった業務にBPOを導入。近年、少子高齢化や医療制度改革に伴い、各申請件数が増加したり、窓口での対応時間が長期化することで負担が増していましたが、導入後は保健事業や保健指導に関するコア業務に職員が注力できるようになりました。

 同時に、受託企業が各業務に専任することで、来庁者の待ち時間は最大1時間から20分程度に短縮。受付や誘導に関する受託企業のノウハウをもとに、番号札取り忘れ防止の声掛けや、押印もれなど資料不備の事前確認を実施し、窓口での手続きも円滑になっています。

 2020年に実施された定額給付金関連事業では、神戸市が大手派遣会社のアウトソーシング事業部に業務を委託することで、スピード支給を実現しました。同派遣会社は過去にも神戸市の定額給付金業務を請け負った経験から、受託した場合、どのような業務が発生するかや、印刷・システム設計などの発注先を先んじて試算し、受託後3日でコールセンターを始動。申請書のデザインにまで携わり、記入ミスや不備が起こりにくいレイアウトで差し戻しの少ないスムーズな進行につなげるなど、ノウハウを駆使して仕事にあたりました。

 約250名体制で対応した結果、住人約152万人を抱える同市において、6月末には9割の給付を終了。スピードを求められた事業でBPOの力が生かされた一つの好例と言えるでしょう。

 新型コロナウイルスのワクチン接種においては、BPOを他業種に依頼するケースが相次いでいます。例えば東京都世田谷区は、大手旅行会社に一部会場の事務運営業務を委託。また、2021年5月に東京・大阪に設置された大規模接種センターの運営業務も、防衛省が別の大手旅行会社へ委託しています。各自治体は、予約管理やコールセンターでの問い合わせ対応といった、旅行会社が本業で日常的に行っている作業で培ったノウハウを活用し、大人数相手の事務運営業務を円滑に進めています。

自治体BPOの拡大は、地方創生や社会課題解決の一助にも

 自治体によるBPOの副次的なメリットという意味では、受託企業の各地への進出を地方創生の一助とする動きも見られます。秋田県と同県大仙市は、2021年6月、大仙市内にビジネスソリューション事業を主体とする国内企業の、ワクチン接種に関するコールセンター業務、事務代行業務などを想定したBPOセンターを誘致しました。開設されたセンター内には、住民の問い合わせに対応する行政サテライトカウンターも設置されています。

 同市は民間企業と協力して行政サービスのさらなる利便性向上を図ると同時に、センターでの働き手として半年間で地元住民を中心とした約50人の雇用創出を見込んでいます。

 また宮崎県延岡市では、生産者の販路拡大をめざした、延岡産製品のECサイト「のべちょる」の運用を障がい者特化型のBPO事業会社に委託しました。全国の障がいや難病のあるワーカー1万名以上のネットワークを活かした、ECサイトの開発および運用を実施する同社に委託することで、社会課題の解決にも寄与していく狙いです。

 自治体職員の業務負担の軽減にプラスして、業務不振で苦境に立たされる民間企業や求職者の助けにもなる自治体BPO。今後の展開やさらなる広がりについても、引き続き注視していきたいところです。

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

「ビジネスの最適解」をお届けします 無料ダウンロード資料


メルマガ登録


「人材不足」を働き方改革で乗り越える


教育機関向け特集


自治体向け特集


イベント・セミナー情報


ICTコンサルティングセンタ

ページトップへ

close