採用活動の「基本」は、会社説明会や面接です。しかし、新型コロナウイルスの影響でそれらを対面で実施するのが困難となったことで、オンラインによる採用活動を行う企業が増えています。オンラインで採用活動をするにはどうすれば良いのでしょうか。必要なツールや、オンライン採用を行う企業の事例を紹介します。
オンライン説明会は「ライブ型」と「録画型」の2種類
会社説明会をオンラインで実施する形式は、動画をリアルタイムで配信する「ライブ配信型」と、録画した動画をインターネット上に公開する「録画配信型」の2種類があります。
ライブ配信型の場合、企業は求職者とリアルタイムでコミュニケーションが取れるため、求職者の生の反応を見ることができる、質疑応答ができるというメリットがあります。実施にはウェブ会議システムを利用するのが一般的です。企業側がURLを発行し、そこに求職者がアクセスするだけで参加できるものや、求職者がより気軽に質問できるチャット機能が搭載されているものを選ぶとよいでしょう。
録画配信型は、視聴者と直接コミュニケーションを取ることができません。しかし、インターネット環境があれば、時間・場所に関係なく視聴できるため、より多くの求職者にアピールできます。映像の撮り直しや編集も可能なので、情報の伝え漏れが防げる、印象に残る映像が制作しやすいメリットもあります。
求職者の個性を、オンラインでどう引き出すか?
企業からの情報発信が主となる会社説明会と違い、面接ではリアルタイムでの対話が必要となります。入室時の所作や話す時の姿勢といった全体的な雰囲気も対面より見づらくなるため、オンライン面接では「求職者の素をどう引き出すか」が課題となります。
では、実際にオンライン面接を実施している企業では、どのようにして求職者本来の姿を引き出しているのでしょうか。
音楽配信事業などを手掛ける株式会社USEN-NEXT HOLDINGSでは、求職者の緊張を和らげるため、面接官に「開始5分は必ず雑談」「意図的にジェスチャーを多く」「明るい服を着て画面をにぎやかに」といったルールを設けています。
クラウド人事労務ソフトを扱う株式会社SmartHRでは、「企業側もオンライン面接には慣れていないことを正直に伝える」「圧迫感を与えないよう、カメラに顔を近づけすぎない」「笑顔など明るい表情を意識する」といった工夫をしています。
管理職などのハイクラス人材に向けた転職サイトを運営する株式会社ビズリーチでは、人物像をより多角的に掴むため「面接回数や面接官を増やす」といった対応を行っています。これは同時に、企業や社員の雰囲気を求職者に伝える有効な方法と言えます。
遠方や海外、優秀な人材の獲得チャンスが広がる
では求職者は、採用活動がオンライン化されることについて、どのように感じているのでしょうか。
ITエンジニア・プログラマ専門の求職・学習サイトを運営するpaiza株式会社が4月末に就活生に行ったアンケートによると、同サイトを利用する80%の就活生がオンライン面接やオンライン説明会の「経験がある」と回答。さらに、オンライン採用の経験がある就活生のうち、約70%はオンライン採用に「抵抗はない」と回答しています。就活生側としては、選考形式の変化に柔軟に対応してきている様子が伺えます。
ビズリーチが4月末に実施した調査では、66%の企業がオンライン採用は「デメリットよりメリットのほうが大きい」と回答しています。具体的には「遠方の候補者との接点が増えた(66%)」「面接等の工数削減・選考のスピード向上につながった(48%)」「候補者と気軽に接点を持つことができた(43%)」といった点が挙げられています。
オンライン採用によって、企業は遠方や海外の求職者とも接点を持てるようになります。人材不足が叫ばれるこれからの社会において、優秀な人材獲得の可能性を広げる「採用活動のオンライン化」は不可欠になっていくでしょう。
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