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持たない経営で強い企業を目指す(第1回)

「小よく大を制す」経営を実現するクラウドERP

posted by 佐京 正則

 かつて経営資源の3要素として語られていた「ヒト・モノ・カネ」に「情報」が加わり、経営資源の4要素として語られることが珍しくなくなりました。経営資源としての情報は、年々重要さを増しています。これに伴い、経営資源の効率化や事業拡大に寄与する基幹システムが、新たな局面を迎えています。その局面とは「外部化」です。基幹システムの外部化は、中堅・中小企業の海外進出や新規ビジネス参入において特別な意味を持つ施策といえます。

従来の基幹システムが「足かせ」になる理由

 本来、基幹システムは「業務効率化」や「経営判断の迅速化」を目的として導入されることが多い仕組みです。しかし、その存在が経営の足かせになっている例は少なくありません。基幹システムは企業が導入する情報システムの中でも、最も巨大かつ影響範囲の大きい仕組みで、導入・運用には大量の経営資源が必要です。

 たとえば、ある大企業向け基幹システムとしてERPパッケージ(Enterprise Resource Planningパケージ、基幹システムを担うソフトウェア群を1つのパッケージにまとめた製品)を導入するには、「サーバ費用」「ソフトウェアライセンス費用」だけで数千万円の資金を必要とします。ソフトウェアライセンス費用はシステムを利用する社員の数だけ必要になるので、社員数が多いほど費用はかさむわけです。

 また、導入する企業の業務に合わせて細かいパラメータ設定や追加開発を行えば、新たな費用が必要になります。これに加え、業務用端末の追加購入、ERP導入コンサルタントへの報酬を含めると、投資額は億単位に膨らむことも。ちなみに、中堅・中小企業向けのパッケージを選択しても、やはり種々の費用で数千万円規模の投資になる可能性が高いでしょう。さらに導入後は運用・保守費用がのしかかることも忘れてはいけません。

 基幹システムでERPパッケージが円滑に運用できなければ、企業の業務進行に支障をきたすので、運用・保守には専任チームが必要です。一度運用を開始したERPパッケージは、長期にわたって企業の屋台骨となる仕組みになります。だからこそ安易に切り捨てるわけにはいかず、経営の足かせになっている例が少なくありません。

基幹システム外部化の鍵は「クラウドERP」にあり

 このように基幹システムへの投資は、企業にも多大な負担を強いるため、潤沢な資金を持つ大企業の専売特許といわれた時代がありました。未だにそのイメージから投資に対して二の足を踏む中堅・中小企業の経営者は少なくありません。

 しかし、基幹システムを含むICTへの投資が企業の成長を左右する今、たとえ中堅・中小企業であっても、無策ではいられないというのが実情でしょう。特に基幹システムへの投資は、うまく機能すれば経営の攻守両方に効果的な施策です。経営改革へ踏み切った中堅・中小企業の中には、ICTへ投資したことが自社を新たなステージへ押し上げる契機となった例も少なくありません。

 近年、基幹システムへの投資を成功させた企業の多くに共通しているのは、自社保有(オンプレミス)型ではなくクラウド型を選択したことで、IT資産を外部化できたという点です。特に注目すべきは「クラウドERP」の存在でしょう。クラウドの特性とERPの強みを掛け合わせたクラウドERPは、中堅・中小企業の基幹システムを低リスク・低コストで外部化できる仕組みなのです。

クラウドERPの特徴とメリット

 従来のERPパッケージは、情報資産を保管するサーバやシステムを自社で保有するオンプレミス型が主流でしたが、クラウドERPではこれらを外部化できることが大きなメリットです。また、導入・運用コストが低いことも特徴といえるでしょう。

 クラウドERPの中には、あらかじめ用意したビジネスシナリオを元に、短納期かつ低コストで導入を完了できる製品があります。これによって導入コンサルタントへの報酬やパラメータ設定費用、追加開発費用などが圧縮できるわけです。また、クラウドサービスという特性上、企業はサーバなどハードウェア面はもちろん、全てのアプリケーションはベンダーが保有するインターネット上のサーバから提供されるため、ソフトウェア面でもIT資産を抱える必要はありません。

 このようにクラウドERPは、ソフト・ハード両面においてコンパクトかつ迅速に基幹システムを構築できるというメリットを持っています。たとえば新規事業の立ち上げや海外拠点の構築時には、限られた予算と時間で経営のベースを作る必要があります。ここでいう経営のベースとは、財務会計・販売管理・在庫管理・生産管理・人事給与など、従来の基幹システムが担っていた機能です。

 さらにこれらの仕組みは、国内外の拠点で統一したほうが、その後の運用・保守などで混乱が少なくできると考えられています。このようなとき、物理的な制約を受けずに短納期かつ低コストで基幹システムを構築できるクラウドERPが役立つのです。

 また、IT資産を外部化するクラウドERPは、BCP(事業継続計画)対策としても有効です。オンプレミス型のERPパッケージでは、災害やテロで自社サーバなどのIT資産にダメージを受けたとき、業務が中断してしまうリスクがあります。一方、クラウド型ではこれを回避でき、緊急時でも事業を継続できる可能性が高まるわけです。

中堅・中小企業だからこその外部化

 クラウドERPは、特に中堅・中小企業の強みである「フットワークの軽さ」「意思決定の早さ」「独自性」を維持しつつ、強固な経営基盤を構築できる仕組みといえるでしょう。

 今後はAIやBIツール(ビジネスインテリジェンスツール=経営判断に必要なデータ分析ツール)との融合で、「小よく大を制す」経営には欠かせない存在にもなりえる可能性を秘めています。限られた予算・ヒト・時間の中で、いかに効果の高いIT投資を行っていくか。この命題に対する答えの1つが、クラウドERPによる外部化ではないでしょうか。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年5月7日)のものです。

佐京 正則

佐京 正則

法学部を卒業後、IT業界にて約10年間、エンジニアやERPコンサルタントとして勤務。2015年よりフリーライターとして活動し、主にIT系ビジネスや不動産投資、社会人の転職事情などについて執筆中。文理両方の知見を活かし、テクノロジーとビジネスが結びついた話題を得意としている。

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