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2018.02.14 (Wed)

デキる上司になるための「仕事の流儀」(第6回)

社員を劇的に成長させる経験学習で上司がすべきこと

posted by 塚田 沙羅

 自分が実際に経験した出来事から、学びを抽出する行動を「経験学習」と呼びます。アメリカの組織行動学者デイビッド・コルブ氏は、経験学習の行動プロセスを4つの段階にわけて説明する理論「経験学習モデル」を発表。現在では、その理論をベースにした人材育成方法の研究や発表が行われています。

 人材育成面において経験学習モデルは、経験の浅い若手社員が自ら問題を解決する「状況適応能力」を身につけられるという点で注目されています。

 本記事では、若手社員が経験学習モデルを実践する際の具体的な方法の説明とともに、上司が実践すべき3つのポイントを紹介します。

4つのプロセスからなる経験学習モデル

 コルブ氏の経験学習モデルのプロセスは、「経験→省察→概念化→実践」という4つの段階で構成されています。活動を行い、物事を視覚・聴覚・感情などによって感知し(経験)、その感知したことを深く振り返り(省察)、その振り返りで出てきた「学び」をもとに教訓やその概括的な意味をつかみ(概念化)、さらにその本質を新しい状況に応用する(実践)というプロセスです。

 漠然と活動を行うのではなく、経験学習モデルを意識的に実践することによって、1つ1つの感知(経験)から教訓を抽出できるようになり、次の活動で教訓を応用することが可能となります。

 この「経験」は、成功・失敗のどちらでも大丈夫です。たとえば、新規クライアントに営業へ出かけ、失敗に終わったとします。この失敗経験をもとに、なぜ失敗したかを振り返り(省察)ます。失敗要因から抽出できる教訓やルールなどを概念化し、次の新規クライアントへの営業で成功につなげるために実践するのです。これを繰り返していくと、さまざまな状況での学びが、教訓として自分の中に蓄積されていきます。そして状況に応じた対処法を、教訓の中からピックアップして応用・実践できるようになっていくのです。

 このプロセスにおいて、より効果的な学習を実現するため、上司が実践すべき3つのポイントがあります。

上司は経験の場を用意し、一緒に振り返りを

 経験学習モデルは数をこなすことで、学習の深度も増していきます。ただ、自然に経験する機会を待っていると、数がこなせず学習進度も深まりません。特に、若手社員の場合は任せられる仕事の範囲も限られるので、なおさらです。

 上司が意識したいポイントは、若手社員が経験する機会を増やすようにセッティングし、さらにその経験を若手社員1人で省察するのではなく、一緒に振り返ることです。まずは若手社員が新しい経験をできる機会や場所に連れていき、小さくても新しい仕事を積極的に任せるのが好ましいでしょう。その後、若手社員がその経験から何を学んだかを一緒に振り返り、若手社員にはまだ見えていない「学び」を上司の視点からアドバイスすれば、学びの見つけ方を覚えることにもなります。

 経験学習モデルは「どうやって仕事を進めるか」というパターンを覚えるのではなく、「何をすべきか」を見つけ出す能力を養うことです。それが状況適応能力になります。

若手は批判的思考の取り入れ方を知らない

 状況適応能力を得るには、柔軟性を高めることが必要になります。そこで経験学習モデルを行う際の2つ目のポイントは、若手社員に批判的思考を持つように上司が促すことです。

 人は物事に接するときに、自分の価値観で良し悪しを判断する傾向があります。批判的思考とは、自分が良いと判断した情報に対して「本当に正なのか、否の部分はないのだろうか」と問いかけることです。そのためには、物事を客観的に見ること、事実や根拠のある情報をベースにすることが必要といえます。批判的思考を取り入れながら物事を見ると、その見方はより合理的で偏りの少ないものとなるはずです。

 最初からいきなり批判的思考を取り入れるのは、若手社員にとっては難しいかもしれません。そのような場合、上司は反対方向からも物事を見るように伝えましょう。その際に、裏付けとなる過去の経験や似た事例のデータといった事実を添えることが、論理的かつ客観的な視点を持った批判的思考になるという手本を示しましょう。

失敗でモチベーションを喪失させない

 最後のポイントは、経験学習を行うにあたって最も大切な「モチベーションの維持」です。特に失敗経験の場合、モチベーションのケアが必要になることがあります。成果が出ていないと、その経験を査察したときに、後悔や自責の念を強く引きずってしまう人もいるからです。失敗した理由を振り返る省察は大切なことですが、失敗の中でも成長できていた点を見つけ、それを褒めてあげるのは上司だからこそできる大事な役割です。

 同時に経験を査察する暇がないほど、社員に仕事を詰めてしまわないように気をつけたいものです。精神や肉体が疲弊していると、学ぼうという意欲は薄れてしまいがちです。若手社員だからこそ、経験学習をする時間と心のゆとりを確保することが、モチベーションの維持につながります。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年1月16日)のものです。

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http://www.hj.sanno.ac.jp/cp/page/7709
https://www.recruit-ms.co.jp/research/journal/pdf/j201411/m37_opinion_kusumi.pdf
https://jinjibu.jp/keyword/detl/483/

塚田 沙羅

塚田 沙羅

イギリス・ロンドン在住のライター/英日翻訳者。東京芸大卒業後、出版社編集部を経てフリーランスに。イギリス情報・文化、ビジネス(働く人にとっての学びや気づき、人材育成、グローバル思考など)、アート・カルチャーについてさまざまな媒体で多数執筆。
https://japanesewriterinuk.com/article/contact.html

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