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まさかのために備える知識(第20回)

ビルの老朽化が社会問題にあなたの会社は大丈夫?

posted by 廉 宗淳

 IT化は私たちの社会に多くの恩恵をもたらしてきました。しかしその一方で、これまでになかったリスクも背負うことになりました。たびたび社会を揺るがす情報漏洩や、企業の存続にもかかわるシステムダウンといった、ITの盲点や弱点を突いたトラブルです。これらトラブルを助長するオフィスビルの老朽化も今や社会問題となっています。加速するIT化社会における課題とその対策を、今一度見つめなおしてみましょう。

IT社会の光と影

 企業や官公庁のシステムがIT化され、アメリカのGoogleやAmazonに代表されるWEBサービス企業が成長して、私たちの仕事と暮らしは加速度的に便利になりました。IT革命がもたらした恩恵を実感しない日はないといって過言ではありません。今後もIoT、ブロックチェーン、AIによる技術革新でさらに社会は変わるでしょう。すでにドイツでは工場のIoT化で産業を変えようという「インダストリ4.0」が始まっており、世界各国でドイツに続こうとする動きが見られます。日本では2017年3月に「コネクテッドインダストリーズ構想」を発表し、自動走行やロボティクスなどの5分野を、重点的に研究開発しようとしています。また仮想現実を応用して現実をより便利にする「Society5.0」という取り組みもあります。

 一方でIT化の流れは急速かつ過渡期にあるため、予期せぬ形の反動が現れているのも事実です。セキュリティが徹底できず、脆弱性を突かれて起きる情報漏洩。ホストコンピューターに障害が発生するとシステム全体が停止してしまう集中処理システム。SNSの情報拡散力が負の方向に働いてしまい制御ができない炎上。2018年3月に発覚したFacebookの情報漏洩事件では、8,700万人の個人情報が流出し、これが大統領選挙に不正利用された可能性があるとして社会問題に発展しました。ITの活用は、扱い方を一歩間違えると、企業にとって大きな損害につながりかねないのです。

老朽化したビルの中身はボロボロ?!

 情報漏洩に代表されるITの問題は、システム上やネットワーク上で起きる、すなわちソフトウェアの世界の話と思われがちです。けれどもその認識は必ずしも正解とはいえないでしょう。なぜならノートPCの盗難・紛失といった物理的な損害によっても情報漏洩は起きるからです。さらには、より身近なことでトラブルに繋がることがあります。震の揺れによって、自社のサーバがダメージを受けてシステムがダウンする。漏電や落雷といったトラブルが原因で、大切なデータを保管していたサーバが起動しない。もっと単純な話をすると、ビル内の配管設備の老朽化で天井から漏れた水がサーバにかかってしまうという様なリスクです。

 近年、ビルとビル内のインフラの経年劣化によって引き起こされるBCP関連トラブルのリスクが特に高まっているといわれています。そのために老朽化したビルを補強・改装したり、取り壊して建て替えたり、他のオフィスビルに移転したりする企業が増えています。2015年には、東京・渋谷のNHK放送センターも建て替え工事をすると発表しました。1950年代中頃より始まった、高度成長期の建築ラッシュから半世紀以上が経過した昨今、もちろん例外はありますが、当時建てられたオフィスビルの多くが、外側も内側も限界を迎えつつあるとしてもなんら不思議ではありません。

意外な落とし穴? 担当者を悩ます法定点検

 経年劣化への対策として、建築物には、電気系統、防火、貯水・配管などの設備が正常かをチェックする「法定点検」が法律で義務付けられています。しかしながら、この法定点検への対応そのものが、リスクになる可能性もあります。

 例えば電気保安点検であれば必ず年に1回で、点検時はビル全体を停電させます。PCやサーバなど常に起動している状態のマシンは、停電に備えて事前にシャットダウンする必要があるわけです。仮に法定点検の予定を忘れ、サーバの電源が停電のため突然落ちでもすれば、恐ろしいことにデータが飛ぶ危険があります。

 そうならないようにするため、システム担当者はしっかり準備をしますが、日常業務ではないため慣れていない、管理しているサーバの数が多い事業所などでは、電源の落とし忘れといったミスが十分に起こり得ます。絶対に電源を落とせないサーバは大容量の外部電源を使うことが考えられますが、停電中は空調もダウンしており、サーバルームの空調は落ちているため熱がこもり、サーバダウンというアクシデントが起きる可能性もあります。老朽化したビルで、点検時間が長くかかりそうであれば、その危険度は高まるでしょう。古いサーバでは、点検終了後に何らかの理由でうまく立ち上がらないといったトラブルも珍しくありません。システム担当者にとって法定点検は悩みの種で、少なくない負荷とコストがかかります。

外部の専門サービスを使うBCP対策のメリット

 オフィスビルの老朽化や法定点検に起因するトラブルの解決策としては、データ管理やシステム運用を外部委託する方法があげられます。具体的にはデータセンターやクラウドコンピューティングといったサービスを使う選択です。信頼できる外部のサービスに頼るメリットは、第一にコスト削減効果。第二は安全性と信頼性。データセンターは無停電で、セキュリティがしっかりしており、地震や水害への対策も万全な上、外部の専門知識を持ったスタッフが管理します。こうした高いレベルの設備投資を自前で整えるよりも、外部に委託する方が圧倒的にコストは低く抑えることができます。

 さらにこれまで本社に一極集中していたデータやシステムを、外部にデータセンターやシステム運用の拠点に分散させることは、災害時のBCP対策としても効果的です。そこに巨大な自然災害が発生し、どこかの拠点がダメージを受けたとしても、例えば業務に使う需要な一部ソフトウェアをクラウド化できていれば、個人のPCからアクセスして仕事をすることができます。このように災害リスクを最小限にしようとするシステム環境を作っておけば事業を継続できる可能性が高まります。

 理想をいえば複数のシステム運用拠点を持っておくとより安全でしょう。冒頭で触れたように確かにIT社会には光もあれば影もあります。しかしその影を乗り越えるのもまたITの力です。せっかく登場した新しいサービスなのですから、一度試してみましょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年8月31日)のものです。

 

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廉 宗淳

廉 宗淳
【記事監修】

1962年ソウル市生まれ。イーコーポレーションドットジェーピー代表取締役社長。1997年にITコンサルティング会社、イーコーポレーションドットジェーピー(株)を設立、代表取締役に就任。青森市 情報政策調整監(CIO補佐官)、佐賀県 統括本部 情報課 情報企画監を歴任。主な著書に『電子政府のシナリオ』(時事通信社、2003年)、『行政改革に導く、電子政府・電子自治体への戦略』(時事通信社、2009年)など。

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