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2018.03.26 (Mon)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第6回)

企業が仮想通貨で資金調達する時代は到来するか?

posted by 山田 尚明

 2017年10月、金融庁は、仮想通貨によって企業が資金調達を行うこと(ICO)への規制を強化する姿勢を明らかにしました。また世界各国でも、ICOに関する規制や論議が始まっています。しかし、その内容は国によってまちまちです。本記事では、各国のICO規制の現状を紹介します。

ICOは新たな資金調達の手段

 ICOとはInitial Coin Offeringの略で、金融庁では「企業などが電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為」の総称として定義しています。

 トークンとは、資金調達したい企業が独自発行する仮想通貨のこと。トークンを購入するには、企業が指定するビットコインなどの主要な仮想通貨を支払うのが一般的です。企業は独自の仮想通貨を発行し、得られた仮想通貨を現金化して、事業を行います。事業が成功すれば、ICOがその事業で行うサービスなどで利用できたり、主要な仮想通貨として扱われることにより価値が上がるなどで、出資者は利益を得る仕組みです。

 企業がこれまで行ってきた資金調達法といえば、銀行から融資を受けるか、株を交付して出資を募るといったことが一般的でした。しかし、両者とも金融機関の審査や証券取引所の手続きという時間のかかる手間やコストがあったのです。

 一方、トークンの発行には第三者による審査や手続きがありません。インターネット上で出資者を募る企業のみで行えるわけです。このため中小企業や新興ベンチャーだけでなく、個人でも少額から資金調達ができる手段として注目されました。

 革命的な資金調達手法に見えますが、トークンは発行時に第三者の審査や確認がないため、事業計画や企業の実態を出資者が見抜かなければなりません。そのような点を悪用した詐欺事件が海外では起こっており、金融庁はICOを資金決済法や金融商品取引法などの規制対象とすることを発表しました。金融庁は監視を行うために、取り扱い事業者に対して内閣総理大臣への登録や関係法令の履行を定めたのです。

禁止・管理・推進・検討中と各国で違う規制事情

 2017年はICOに対して規制をかけようという流れが、世界各国で起こりました。

 その中で一番強い規制を行ったのは中国でした。同年9月に中央銀行である中華人民銀行が「ICOは違法な資金調達方法である」として取引の全面禁止措置を発表します。

 それに続いたのが韓国で、同月にICOの全面禁止措置を発表しました。しかし現在、今後は緩和されるかもしれないという見通しもあります。

 禁止とまでは行かずとも、管理を強化したのがアメリカです。2017年7月に、ICOが規制の対象になりうるという判断を示し、取引所の登録義務化と同時に事業者の活動までを管理下に置くと発表。過去の詐欺行為に関しても法的な対応を検討しているとのことです。

 逆に積極的に促進しているのが、スイスとカナダです。カナダは2017年9月に政府が認可したICOを誕生させています。スイスは同年9月に正式な規制ガイダンスを発表。ガイダンスでは、法的及び道徳的な義務の履行に言及しながらも、そのイノベーションを支援することを前面に押し出しています。

 ロシアも2017年11月、中央銀行が「ICOはスタートアップに資金を調達するチャンスを与える」という発言を行っていることから、容認の方針であると考えられています。

 ヨーロッパでは、ドイツが規制を検討中、イギリスは警戒しながらも容認、フランスは一部を認めるなど国によって対応はさまざまです。しかしEUの政策執行機関である欧州委員会は、ICOや仮想通貨がテロリスのマネーロンダリングにつながることを以前から危惧しており、2017年9月には仮想通貨犯罪の罰則強化を決定しました。

2018年3月のアルゼンチンでのG20に注目

 ICOはインターネット上で行われるため、国という概念で規制することは難しいといえるでしょう。前述のようにある国で禁止されたとしても、他国では推進されているからです。その特性から、世界で統一した規制が必要だという見方もあります。

 ドイツ中央銀行は「ICOを世界レベルで規制すべきだ」という見解を示しており、フランスと共同で2018年3月19日にアルゼンチンで開かれるG20においてICO規制を議題に挙げるように提案する姿勢を表明しています。これによって各国の思惑が顕在化し、規制に向けた議論が始まるでしょう。

 法整備の有無や度合いは違えども、各国で問題視されているICOのリスク。規制の議論もG20を経て、世界的レベルで活発になってくるでしょう。ICOのイノベーションを推進しつつも、規制によって安全性・安定性をどう担保するのか、今後に注目したいところです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年3月4日)のものです。

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http://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/06.pdf
http://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency02/index.html

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山田 尚明

山田 尚明

大学院卒業後、メーカの営業企画部署にて5年半、カタログ・Web制作や展示会の運営などのプロモーションに携わる。その後IT企業にて1年半インターネット広告の運用を担当。現在はフリーランスとしてIT、ビジネス、健康、金融、ニュースなどさまざまなジャンルの記事を執筆するとともに、Webサイトの制作やコンテンツマーケティング、インターネット広告の運用などの業務を行う。

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