2017.10.3 (Tue)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第5回)

社会インフラを激変させる可能性を秘めた仮想通貨

posted by 水本 愛(みずもと このむ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

 昨今、急速に注目を集めている仮想通貨。日本でよく耳にする仮想通貨といえば「ビットコイン」です。NHK『クローズアップ現代+』や日本経済新聞など、各種メディアで取り上げられることも多くなっています。

 仮想通貨は“巨額の利益”という投機面に関心が集まりがちですが、それ以外にも注目すべき点があります。それは仮想通貨の核となるテクノロジー「ブロックチェーン」です。本記事では、ブロックチェーンによって生じると予想されている各産業の今後を紹介します。

ビットコインはあくまで『仮想通貨』の一種

 仮想通貨は、硬貨や紙幣のようなかたちで実在するお金ではありません。ネットワーク上にあるデータのことで、データには仮想通貨の額、所有者移転などの取引情報が記録されています。

 そのデータ(取引データ)を、金融機関のような1つのデータベースで中央管理するのではなく、各コンピューターで管理する分散型であることが特徴です。

 世界で最初の仮想通貨といわれているビットコインが2009年に誕生した背景には、その前年にサトシ・ナカモトを名乗る人物によって発表された、データベース管理を分散型で行う「ブロックチェーン」という論文の存在がありました。

そもそもブロックチェーンとは何なのか?

 ブロックチェーンとは、ピア・ツー・ピア技術を用いて管理する分散型データベースのことをいいます。ピア・ツー・ピアは「対等なもの同士」という意味があり、接続されたコンピューター同士が相互にコミュニケーションできるネットワーク形態を指します。その反対が、中央集権型のクライアントサーバー型システムです。この場合、他のコンピューターに接続するには、仲介者となるクライアントサーバーが存在します。

 ブロックチェーンは、利用者間で取引情報を受け取ると、それが接続された各々のPCで確認されます。多数で正しいと確認されたデータが、取引情報に上書きされます。つまり多数を同時に改ざんしないと不正が難しい技術なのです。それによって、インターネットなどオープンなネットワークで、高い信頼性が求められる金融取引や重要データのやり取りを可能にしました。

ブロックチェーンで医療・物流が変化する

 仮想通貨での利用が手始めだったブロックチェーンの技術ですが、現在はさまざまな分野への応用が検討されています。

 銀行などの金融機関は中央サーバーでお客さまの残高や入出金履歴を管理しており、不正改ざんを防ぐために中央サーバーの維持・保守には巨額な費用がかかっています。ところがブロックチェーンによる分散型データベースを導入することで、中央サーバーが不要となり、維持・保守のコストダウンが可能といわれています。その分、ATMの利用料、振込手数料、国際送金にかかる手数料を安くすることができるでしょう。

 実際に三菱東京UFJ銀行は、ブロックチェーンの技術を活用してMUFGコインを発行する構想を発表しています。みずほ銀行とSBIホールディングスも、数日かかっていた海外送金をブロックチェーンによって数秒に短縮する取り組みに動いています。

 アメリカを本拠とするリサーチ・コンサルティングを行うフロスト&サリバンは、ブロックチェーンが今後ヘルスケア分野へ応用される見通しをまとめた調査を発表しました。投薬や手術などのデータをブロックチェーンによって共有することで、薬の効果や成功率の高い手術方法などのデータを効率よく探せるネットワークが構築されるとしています。さらに医薬品サプライチェーンといった物流管理でも、市場に新たな変化を産み出すことが期待されるそうです。

 イスラエルのスタートアップ企業であるLa Zoozは、ブロックチェーンによる自動車のライドシェアリングサービスを展開しようとしています。ライドシェアリングとは1人で車移動するときに、空いている席を相乗り用として提供するサービスです。従来の中央サーバーで仲介者が管理していた席数の情報を、ブロックチェーンで利用者が相互管理することで、コストダウンと信頼性を確保しようとしています。

 このようにブロックチェーン技術は、さまざまな分野の産業や社会インフラに革新的な変化をもたらし始めています。

ブロックチェーンの未来像

 さまざまな変革の可能性を秘めるブロックチェーンですが、現時点では多くの問題点も存在します。たとえば仮想通貨は匿名性が高いため、ランサムウェアなどの身代金請求で利用されることや、不正資金のマネーロンダリングに利用されるといったことが挙げられます。

 ナカモト氏の理論の発表から10年も経たないブロックチェーンは、世界中の技術者が試行錯誤しながら進化させている段階です。それらが解決された暁には、仮想通貨という限定的なものではなく、取引の商習慣や社会インフラを変革させるかもしれません。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年9月21日)のものです。

【関連記事】
https://innovation.mufg.jp/detail/id=110
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4016/
http://www.asahi.com/articles/ASK4Y5DZDK4YULFA00D.html
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO04967850X10C16A7NN1000/
http://www.frostjapan.com/232/pressrelease07132017/
http://lazooz.org/

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷
水本 愛(みずもと このむ)

水本 愛(みずもと このむ)

理系出身のフリーライター・インタビュアー。国立大学理学部物理学科卒。5度にわたる転職経験を持つ。ジョブホッパーという生き方をポジティブに捉え、企業紹介、求人広告、SNSを活用した企業PR支援などを手がけている。企業経営陣へのインタビュアーとしても活動中。本好きが功を奏し、書評ライターとしてさまざまなジャンルの書評・コラムを多数執筆。

「ビジネスの最適解」をお届けします 無料ダウンロード資料


メルマガ登録


「人材不足」を働き方改革で乗り越える


教育機関向け特集


自治体向け特集


イベント・セミナー情報


ICTコンサルティングセンタ

ページトップへ

close