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ICTでコストを削減しよう(第5回)

安かろう悪かろうが通用しない時代をどう生き抜くか

posted by 廉 宗淳

 物もサービスも「安くて当然、良くて当たり前」の時代となりつつあります。消費者が企業に求めるハードルは年々高くなり、安くても悪いものは売れず、良いものも高くては売れません。各企業がしのぎを削るなか、この価格競争時代を生き抜くためのキーワードが「コスト削減」です。ここで重要なのは、どこでどうコストを削減し、それをどう活かすべきかです。生き残りをかけた術について探ってみましょう。

熾烈を極める価格競争

 日経平均株価がバブル後の最高値を更新したり、大企業の好業績を伝えるニュースを見聞きする一方、景気の先行きはいまひとつ晴れません。そんな中、多くの消費者は財布の紐を堅くし、少しでも安いものを買い求める傾向が続いています。それは見方を変えれば、どうやってコストを抑え、より安く商品やサービスを提供できるかが企業成長のカギとなっていることを意味します。

 身近な事例では、ファストファッションの隆盛でしょう。例えば冬のファションの必需品であるダウンジャケット。かつては5万円近くしたものが、有名ファストファッションの店では1万円以内で買うことができます。その結果、従来の価格帯で勝負してきたメーカーは軒並み苦戦を強いられています。

 おなじみのビール類も、いまや「ビール系飲料」と呼ばれるカテゴリーがメーカーの主戦場で、100円台で買うことができる安い製品が消費者の支持を集めています。350ml缶で200円以上するビールは、特別な日にしか飲めない贅沢品になったかのようです。

 価格競争は大企業だけにとどまりません。その波は中小企業にも否応なしにおよび、商品やサービスの質を落とさず、より安価なものでなければ消費者や取引先は受け入れてくれません。

価格競争に打ち勝つためには

 価格競争は、競合企業に勝つための消耗戦の様相を見せています。しかし、熾烈な価格競争であっても、これに打ち勝たなければ企業の成長は見込めません。では、価格競争に打ち勝つために求められる要件とは何でしょう。そのひとつがコストダウンによる消費者への還元です。

 例えば、とあるチェーン展開のスーパーマーケットでは「当日宅配サービス」を行なっています。いわゆるネットスーパーで買い物をすれば、当然のことながら商品は宅配便で送られてきます。それを実店舗で行っているのです。消費者はカートいっぱいに購入した重たい買い物を家まで運ぶ必要はありません。スーパー業界は、商品をより安く消費者に提供しようと仕入れコストを抑え、プライベートブランドを導入するなど価格競争にしのぎを削っていますが、コストダウンによって実現した余剰の一部を「当日宅配サービス」として消費者に還元しているのです。

 熾烈な価格競争の中にあっては、原価を下げて利益を確保することが一般的な手法です。しかし、原価を下げた結果、製品やサービスの質まで下がってしまっては、消費者や取引先の信頼や支持を得ることができないばかりか、コストダウン圧力が売上に悪影響を及ぼして業績不振に陥る可能性すらあります。利益を確保しながらも、コストダウンによって得られた余剰の消費者への還元と、行き届いたサービスの視点が企業の成長に欠かせません。

アウトソーシングの有効性

 熾烈な価格競争に勝つために必要不可欠なコストダウンですが、原価を下げるだけがその手法ではありません。光熱費や賃借料、リース費用などの固定費を抑えたり、運営コストを抑えることも必要で、これを実現するための手法として有効なのがアウトソーシングです。

 アウトソーシングの事例としてなじみのあるのが、顧客向けのヘルプデスクやコールセンターでしょう。もし、ヘルプデスクやコールセンターを社内に自前で設置して運営しようとすれば、たくさんのパソコンやモニターを購入するための費用や、顧客からの問い合わせに対応する大勢のスタッフを雇うための人件費がかかります。当然ながら広いフロアも必要になり、新たな賃借料や光熱費も発生します。

 しかし、ヘルプデスクやコールセンターのアウトソーシングサービスを利用すれば、これらのコストを低く抑えられます。さらに、それぞれの業務に特化した専門チームによるきめ細やかなサービスを提供することが可能です。

 情報システムもアウトソーシングが可能です。情報システムを社内に自前で設置しようとすれば、初期費用や運営費用など多額の費用がかかります。しかし情報システムのアウトソーシングサービスを利用すれば、これらの費用を抑えることができ、さらにサイバーセキュリティー対策も万全なので、自ら費用を捻出せずとも大切な顧客のデータやシステムを堅固に守ることが可能です。

 情報システムのアウトソーシング化は顧客への信頼にもつながることから、導入する企業が増えており、情報システムのアウトソーシング化としてこれらの企業が高く評価し、活用しているのがデータセンターです。

データセンターへ移行した企業の場合

 データセンターを活用している事例をいくつか紹介しましょう。

 オンラインで料金収納システムを提供しているある企業では、システムの運用コストが削減されたり、回線利用コストが3分の1になるといった効果が現れたそうです。

 また、CDや本の買取り販売サービスを行なっているある企業では、ホームページやメールの管理などにかかるコストが削減されたそうです。さらに、長年自社内にサーバーを設置して運用していたある製造業の会社では、運用コストの削減や、停電など社内運用によって発生する可能性がある停電などのリスクの心配がなくなったとのことです。

 ビジネスが軌道に乗り成長している企業にとっても利点があります。

 このように、データセンターの活用によってコストダウンを実現しながら、良質なサービスや製品を提供している企業が増えているのです。いまやデータセンターは、企業にとって価格競争に勝つための有効な「武器」となったと言えるでしょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年9月30日)のものです。

廉 宗淳

廉 宗淳
【記事監修】

1962年ソウル市生まれ。イーコーポレーションドットジェーピー代表取締役社長。1997年にITコンサルティング会社、イーコーポレーションドットジェーピー(株)を設立、代表取締役に就任。青森市 情報政策調整監(CIO補佐官)、佐賀県 統括本部 情報課 情報企画監を歴任。主な著書に『電子政府のシナリオ』(時事通信社、2003年)、『行政改革に導く、電子政府・電子自治体への戦略』(時事通信社、2009年)など。

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