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2016.08.31 (Wed)

あの商品が注目される理由(第2回)

大流行「ポケモンGO」のビジネスの仕組みとは

posted by 高島 ちなみ

 世界中でブームを巻き起こしているスマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」。日本でも7月22日に配信が始まり、配信開始から3日間で1,000万人以上がダウンロードしたといわれるほど、多くの人から注目を集めています。

 ポケモンGOがここまで人気を集める理由のひとつに、「AR(Augmented Reality=拡張現実)」という新しい技術を利用している点があります。ポケモンGOをはじめとするAR技術が、今後どのように新しいビジネスを切り開いていくのか、その可能性を探ります。

現実世界と重なってはじめて成立するデジタルな世界

 ポケモンGOは、AR技術を利用して、実在の風景の中に現れたモンスターを収集・育成するスマホ用ゲームです。ARは現実世界にデジタルを重ねることによって、人間が知覚できる環境を拡大するもので、デジタルの世界だけで完結する「VR(ヴァーチャル・リアリティ、仮想現実)」とは違い、実際の世界で自分が移動することで、スマホ内の世界も連動して変わる点が魅力です。

 少し前に流行したVRと違い、ARは聞き慣れない言葉かもしれませんが、この技術が活用されたゲームは、ポケモンGOが初めてではありません。たとえば、ポケモンGOを開発したNiantic(ナイアンティック)社が、それ以前に作った「Ingress(イングレス)」というゲームは、ARを駆使したコンテンツで多くのファンを集め、周辺ビジネスでも成功を収めています。

 Ingressは、現実世界に設定された「ポータル」というスポットを探すゲームです。プレーヤーは、二つのチームに分かれ、陣地を拡大するために競います。ポケモンGOは、このIngressで培った技術とアプローチを応用したものです。

 今後の戦略についても、Ingressをモデルケースとしたビジネス展開が予想されています。Ingressでは既に多くの企業や自治体とタイアップが行われていますが、その提携のスタイルは、「スポット提携」と「イベント提携」の2つに分けることができます。

ゲーム内の要所になれば、自然と人が集まる

 「スポット提携」は、ARの位置情報を利用して、店舗や施設にゲーム内での意味を持たせるものです。たとえば店舗に立ち寄ることで、ゲーム内のアイテムがもらえたり、ゲーム内のイベントに参加できる、といったことがプレーヤー側にもたらされます。

 スポット契約にはもちろんスポンサー料が発生しますが、店側はそのぶん来訪客が見込めます。言ってみれば、AR内に広告を掲示しているようなものです。

 ポケモンGOの元となったIngressでは、ローソンが国内でいち早くこのスポット提携を結び、店舗をポータルにすることで、集客につなげました。さらに、ソフトバンクや三菱東京UFJもスポンサーに名乗りを上げ、伊藤園は実店舗ではなく自販機を「ポータル化」するという試みにも成功しています。

 ポケモンGOでは、日本マクドナルドがスポット提携を結んでいます。ゲーム内では、日本各地に存在するマクドナルドの店舗が、アイテムが貰える「ポケストップ」や、プレーヤーが育てたモンスターを戦わせる「ジム」として登場し、ゲームの要所となっています。

 スポット提携について公式発表されているのはマクドナルド1社のみ(8月時点)ですが、Nianticの創業者であるジョン・ハンケ氏は、ポケモンGOについて、ポケストップやジムをもっと増やしていきたいことを明らかにしています。

街全体で取り組めば地域振興にも効果アリ

 Ingressで見られたビジネス展開のもう1つが、「イベント提携」です。これは広告の意味合いが強いスポット提携は違い、自治体と地元企業が一体となって集客を行うものです。プレーヤーは実際にその土地に訪れて街を歩きながらゲームをするため、結果的にその街に経済効果がもたらされるというわけです。

 Ingressのイベント提携で有名なものとして、仙台で行われた大規模公式イベント「Persepolis(ペルセポリス)」が成功例として挙げられます。これは国内外からおよそ4,000人のプレーヤーが集まり、仙台の街を移動しながらゲームをプレイするというものです。今年は東北復興の意味合いも含めた合同記念イベント(陸前高田・相馬・女川など)も行われています。

 また横須賀市は、一昨年Ingressと提携し、観光地を回りながらゲームを楽しめるコースを用意した集客促進事業を始めました。ソフトバンクの店舗でロボット「Pepper」にヒントを教えてもらうイベントや、Ingressの画面を見せると乗船料が半額になる「Ingress割」など、期間限定の誘客を積極的に行っています。

 8月時点では、ポケモンGOのイベント提携については、Niantic社から公式な発表はまだありませんが、自民党の特命委員会が任天堂に地方創生への協力要請をするとの報道もあり、Ingressと同じようなイベントが地方都市で繰り広げられる可能性は大いにあるでしょう。

ARの世界を利用して現実世界のビジネスに繋げる

 AR技術により、リアルとデジタルが一体化し、現実の街がゲームのフィールドになりました。つまり、AR技術によってスマホに映し出される世界も、現実の一部であり、ビジネスのフィールドの一部なのです。まだ始まったばかりの技術ですが、それだけに、アイディア次第では、現実以上の効果を生み出してくれるかもしれません。

 まだポケモンGOやIngressをプレイしていない方は、まずはスマホにインストールして、ARの世界を覗き、ビジネスの可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

高島 ちなみ

高島 ちなみ

フリーライター。2012年より執筆活動を開始し、ビジネスコラム・グルメレポートなどを執筆。無類の図書館好き。趣味が高じて司書資格も取得。ライブラリアン・検索技術者として、WEB媒体向けのレファレンス支援も行う。

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