マイページ別ウィンドウで開きますでご契約・サポート情報を確認

2017.12.15 (Fri)

元気な企業はどこが違う?成功企業の戦略とは(第47回)

異物混入画像がSNSで拡散!窮地のぺヤングを救った行動

posted by 村上 哲也

 2014年から2015年にかけて食品製造や外食などの食に関する企業において、異物混入という報道が多くありました。即席ラーメン、スナック麺の製造販売を行う群馬県のまるか食品においても、2014年12月2日にSNSのツイッターで、カップ焼きそばの「ペヤング」に虫が混入している画像が投稿されました。それを知った同社は、投稿から9日後に全商品の自主回収と販売中止を決定します。その販売中止期間は約半年間にも渡りましたが、再開されると中止前以上の売上を残すというV字回復をしました。

 食に関わる企業にとって異物混入という事件は、企業経営に大打撃を与える要因の1つです。そのような事件にも関わらず、まるか食品が業績を回復させたのは「誠実さ」を伴った対応を行なったからでした。この事件における同社の対応は、企業の危機管理という観点からも学ぶ点は多い事例でしょう。

初動は最善ではなかった

 2014年12月にペヤングを購入した消費者が、麺にゴキブリの一部が混入していた、という画像付きの投稿をSNSのツイッターに行なったことが、事件の発端でした。翌日に消費者は、保健所とまるか食品に連絡を取りますが、同社の初動対応は良いものではありませんでした。

 まず同社は消費者を訪問して、商品の回収と投稿削除の依頼を申し入れます。すでに投稿が拡散されていたため、一部のメディアが取材を開始していました。その取材で同社は「製造工程での混入は考えられない」というコメントを発表しました。

 同社の削除依頼と、製造工程での混入を否定したコメントから、メディアの報道は、企業の隠蔽や、消費者の捏造という面がクローズアップされることになります。

 当初は、麺に絡まっていたゴキブリの一部は、後から入れることも可能と考えられていました。しかし投稿画像からゴキブリにも麺の製造工程で行われる加熱処理が施された形跡があるという反論がありました。つまりゴキブリと麺は、一緒に加熱処理を施された可能性もあり、同社のコメントを鵜呑みにできないという論調が強くなり、消費者は同社へ不信感を抱くようになります。

深刻な問題と認識し、「スピード」と「誠実さ」で対応

 初動が裏目に出れば、企業の業績も下降し、すぐに信頼を回復させることは難しくなります。しかし、まるか食品は違いました。投稿の翌々日に同社は、回収した商品からゴキブリの状態を確認し、熱処理済みだった事実を即時公表しました。結果的に、この発表は当初コメントとは反する結果だったため、発表当初は激しいバッシングにあいます。

 そして熱処理済みを発表した日に、製造ラインが同じ当該商品4万6,000個の自主回収と生産停止を発表。さらに投稿から9日後には、同社の全工場の生産を停止し、対象商品の販売中止を決めました。

 製造過程での混入に、明確な証拠があったわけではなく、状況証拠のみだったにもかかわらず、このような決定を下せば、自社の非を完全に認めたように映ります。

 しかし、混入の証拠以前に、安全を確保できていないという消費者目線での理由から、同社は工場や販売の中止を決めたのです。そして工場を停止させると、害虫などの異物が混入する可能性のある経路といった衛生面の設備改善に取り掛かり、その情報を同社のウェブサイトなどで発信していきます。

 それだけでなく、販売中止期間中は、社長の丸橋嘉一氏が、直ぐに小売店へお詫び行脚を行ないました。社長自らの行動は、小売店からの信頼回復につながりました。その行動は一部小売店で、販売再開のときに専用の棚を設けるなど支援を受けられる下地作りにもなりました。

 同社は工場の設備改善が整った2015年6月に、ペヤングソースやきそばの生産と販売を再開します。工場だけでなく販売が再開された商品は包装が改善されていたことも、消費者の信頼回復につながりました。

 そして前述の小売店の支援もあり、ペヤングは6月の即席カップめん分野で国内シェア1位を奪還するという大復活を遂げました。同社の発表によると、6月の販売成績は、最初の12日間の販売額が、販売中止前の月単位の売り上げとほぼ同額であり、中止前と比べると倍の勢いで売れていたそうです。販売中止中の地道な活動と情報発信により、同社はV字復活だけでなく、安全というブランドイメージを確立することもできました。

 不祥事が明るみなった際の初動対応で、企業の信頼失墜や業績悪化という事例は少なくありません。しかし、まるか食品のように最善ではない対応を行なった後でも、「誠実に」消費者のことを考えた対応や情報を発信することで、挽回の余地もあります。不祥事が起きた際に、影響を受けるのは「消費者」という目線で行動する企業こそが信頼を回復できるということが、まるか食品の事例から理解できます。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年11月23日)のものです。

【関連記事】
http://www.peyoung.co.jp/
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO83089200S5A210C1H56A00/?df=2
http://toyokeizai.net/articles/-/70654?page=2
https://news.infoseek.co.jp/article/postseven_338112

連載記事一覧

村上 哲也

村上 哲也

コンサルタント兼ライター。ゼロベースでのコンサルタントには定評があり、担当する顧客とは「戦略」から始め「戦術」まで実行させる本格派。2013年より本業の合間にライター業務も行っており、コンサルタント関係に留まらない幅広い記事の記載を行っている。
http://midorinooka2014.wix.com/business-consulta-jp

メルマガ登録


NTT EAST DX SOLUTION


ミライeまち.com


「ビジネスの最適解」をお届けします 無料ダウンロード資料


イベント・セミナー情報

ページトップへ

ページ上部へ戻る