2021.6.23 (Wed)

ビジネスを成功に導く極意(第43回)

コロナ禍で明暗を分ける”与える営業”と”もらう営業”

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「会えない時代」に、営業成績を伸ばすにはどうすればよいのでしょうか。営業コンサル企業のセレブリックスでセールスエバンジェリストを務める今井晶也氏がその秘訣を語ります。

<目次>
「もらってばかり」の営業になっていないか?
顧客の3Cを分析して「与える営業」になる
トーク力よりもリストの精度と鮮度が重要
お客さまの“最初に思い出す人”を目指す

「もらってばかり」の営業になっていないか?

 コロナ禍で、企業の営業担当者は苦難の時代を迎えています。慣れていた対面での営業活動ができなくなっただけでなく、業界業種によっては「これまで売れていたものが売れなくなった」と嘆く方も多いでしょう。テレワークの普及でオフィスに出勤する人数が減り、需要が低下してしまった複合機やオフィス機器などの製造業界はまさにその例です。

 「これまで成績の良かった営業担当者も、実は営業スキルが高いから売れていたのではなく、業績の良い企業を担当するなどお客さまに恵まれていただけだったかもしれません。コロナ禍で営業担当者の本質的な能力が浮き彫りになったといえます」。こう語るのは、営業コンサルティングを手掛けるセレブリックスでセールスエバンジェリストを務める今井氏です。

 「しかも今はオンライン商談が中心になり、対面時の営業力で顧客を獲得していた手法が必ずしもうまくいくとは限りません。特にオンラインでは人間関係を築くことが難しく、本当にお客さまが必要としている製品を提案しないと導入してもらえません。お客さまの課題を解決に導く提案ができる、真の意味での営業力が求められるのです」(今井氏)

 もちろん、先述したオフィス機器といったように、テレワーク環境下でニーズがなくなってしまう商品もあります。この場合、いくら営業担当者ががんばったところでそう簡単には売れません。そこで多くの企業は別の商品にリソースを再分配し、その分野で新規営業を始めることになります。しかし、新規顧客の開拓は営業活動の中でも特に難しい部分。この苦難をどのように乗り越えていけばよいのでしょうか。今井氏は次のように語ります。

株式会社セレブリックス
セールスカンパニー 執行役員 マーケティング本部長兼セールスエバンジェリスト
今井 晶也 氏

 「新規営業が断られてしまうのは、邪魔だと思われているから。ならば、邪魔者から必要な人に変わることを考えましょう。これまで営業は、『アポをもらう』『情報をもらう』『発注をもらう』といったように、“もらう”行為が中心でした。もらうことばかりする人には、お客さまは簡単に会ってくれません。

 そこで、これからは『気づきを与える』『課題解決策を与える』『成功を与える』といったように、“与える”営業になればいいのです。インターネットを使えば、お客さま自身で調べたいことを簡単に調べられる時代です。成果を出すには、お客さまが簡単には得られないような情報を提供して『他の営業とは違う意味のある人』『必要な人』にならなければなりません」(今井氏)

顧客の3Cを分析して「与える営業」になる

 これまでの「もらう営業」とは異なる「与える営業」を、今井氏は「Giveモデル」として提唱し、そのアプローチを解説します。

 「直接対面して話す機会の少ない今は、営業力のうち、トークや立ち振る舞いが影響する割合も少なくなりました。会ったときにどのように見られるかを気にするよりも、まずはお客さまの役に立てることを考えてください」と今井氏。さらにこう続けます。

 「例えば、助成金を活用して低コストでシステムを導入できる業界であれば、どういった製品にどの程度の助成金が出るかをまとめた資料を提供してみるのです。すると、今まで聞く耳を持たなかったお客さまが資料に興味を示した、という例もあります。単に提案の時間をくださいといったアプローチをするのではなく、『お客さまの役に立つ情報があるので提供したい』というアプローチにシフトすることで、信頼を得られる確率が高まります」

 では、肝心の「役立つ情報」をどのように集めればよいのでしょうか。そのヒントとして今井氏は、「3C分析」を挙げます。

 3Cとは、マーケティング戦略を検討する際に分析すべき「Company(自社)」「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」の3つのCを指します。これを応用して「例えばA社に営業をかける場合、自らがA社の立場に立ち、『A社について』『A社の顧客について』『A社の競合について』を分析するとよいでしょう」と今井氏は説明します。

「A社のお客さまが求めていることやA社が競合に勝っている点や劣っている点を調査した上で、今後自社がどのように変化するべきかという気づきをA社に与えられるようになれば、これまでは邪魔だとお客さまが思っていた営業が必要な人に変わります。つまり、商品基点で営業するのではなく、営業担当者がお客さまの立場に立って事業を成功に導くにあたり、自社が提案する商品が必要になるという道筋を描くことが大切なのです」(今井氏)

 今井氏の所属するセレブリックスが支援する企業の中でも、Giveモデルを取り入れ、役立つ資料をメールで送ることで新規案件を獲得した企業が出てきています。Giveモデルは実践にあたって場所に縛られません。従来の訪問営業では接触できなかった地方の企業までアプローチが可能になるのです。

「対面形式の商談が中心だった頃は、自分たちが行きやすいエリアを中心に事業展開していたのが、オンライン商談ではエリアの垣根がなくなりました。アプローチ先が増えたことに伴って受注が増えたケースも多くなってきています」と今井氏は述べています。

トーク力よりもリストの精度と鮮度が重要

 Giveモデルによって顧客に役立つ営業になれば、顧客側もより多くの情報を提供してくれるようになります。

 「『返報性の原理』という心理学用語があります。何かの施しをされた人は、恩返ししようと感じるので、ヒアリングしやすくなります。先に資料送付などで情報提供を行ってから、関心のある商品はどのようなものかなど、自分たちの商品を提案するにあたって必要な関連情報をヒアリングし、どのタイミングであれば買ってもらえる可能性があるかを探っていくのです」(今井氏)

 Giveモデルは有効ですが、営業活動を最終的に成功させるためには、営業対象リストの作り込みが重要だといいます。「特に重要なのはリストの精度と鮮度。この2点がしっかりしているリストを用意できるかどうかが、受注率を左右します」と今井氏は主張します。

 「精度とは、提案する商品でお客さまの問題をどれだけ解決できるかということです。お客さまのニーズに対し、どれだけ適切な商品を提案できるか、そのマッチング度合いが精度です。鮮度とは、いかにお客さまの関心が高い“旬”に近いタイミングでアプローチできるかどうかです。人材募集の広告を販売する企業であれば、社員の退職や事業成長でお客さまがちょうど人材不足に陥りそうなタイミングを見計らって営業をかけるといいですよね。お客さまが困っている時期にアプローチすれば、邪魔ではなくなります」(今井氏)

 営業活動の中では、このリストの精度と鮮度をメンテナンスし、チューニングすることが大切だといいます。

 「良いリストを作ることは、営業がアプローチできる見込み客(Sales Opportunity
Lead:SOL)を集めることにつながります。SOLを揃えるには、『お客さまの検討時期などの情報を引き出す』、そのために『Giveモデルで先に役立っておく』というように、逆算で考えるのです。新規営業の場合は、特に鮮度の方をうまくコントロールしてアプローチする必要がありますね。これはトーク力よりも営業結果を左右します」(今井氏)

 もし検討のタイミングが「今」でない場合、つまり自社が売り込みたい商材に対して顧客が「今は必要ない」という場合はどうすればよいのでしょうか。その際は、「未来の話をするように」と今井氏はアドバイスします。

 「『今は特に課題がない』と思っている方でも、未来の理想の姿を聞き出すと、理想と現実にギャップがあることがわかり、そこで課題を認識することもあります。3年後も今のままでいいと考える企業など存在しません。理想を実現するための未来の話をすると、提案しやすくなるのです」(今井氏)

お客さまの“最初に思い出す人”を目指す

 コロナ禍では、対面営業ができずにモノが売れにくいと悩む企業も少なくありません。このような時代の営業活動ではソーシャルメディアを用いた営業活動である「ソーシャルセリング」の実践が有効になるというのが今井氏の考えです。

 「新規でテレアポが取れなくても、LinkedInやFacebook、Twitterなど、お客さまとつながる方法はたくさん存在します。実際にセレブリックスの2020年の新規受注は、30%以上がSNS経由の受注です。以前は新規受注のほとんどがWebサイト経由でしたが、最近ではソーシャルセリングでの割合が増加しています」と今井氏は説明します。

 活動の場がSNSであっても本質的な手法は同じだといいます。つまり、顧客に役立つ情報を発信していくのです。「こうすることでお客さまの関心を引き、その関連領域で困ったときに最初に思い出してもらえるようになります。これからの営業で重要なのは、お客さまにとっての“第一想起人物※”になることです」と今井氏は強調します。

※第一想起…例えばブランド認知調査などの際に、「この製品ジャンルで頭に思い浮かぶブランド名を1つ挙げてください」という質問に対して最初に挙がるブランド名のこと。トップ・オブ・マインドとも。

 「営業力の強化にはブランディングの観点も重要だと考えています。ブランディングというと、幅広く多くの人に愛され選ばれることが重要だと思いがちですが、1対1のブランディングを確立し、ターゲットとするリストの中で影響力を高めていく“マイクロブランド”でいいのです。セレブリックスの場合も、『営業で困ったとき最初に思い出すのがセレブリックス』と考えていただけるよう活動しています。

テレワークが普及して、この先オンラインの営業活動が一般的になっていく可能性は高いのではないでしょうか。だからこそ、ソーシャルを生かした情報発信やGiveモデルを活用し、”会いたい”と思ってもらうことが大切。やみくもに新規開拓をして数を増やしても、なかなか成果にはつながりません。お客さま1人ひとりの心の中で“最初に思い出す人”になることが、これからの営業にとっては必要なのです」(今井氏)

今井 晶也(いまい まさや)
株式会社セレブリックス セールスカンパニー 執行役員、マーケティング本部長。
セールスエバンジェリストとして営業モデルの研究、開発、講演にも従事。長野県の中小企業振興センターとの製造業向け新規開拓講座や宣伝会議主催のセールスコンテンツ講義、営業のNo.1を決める大会S1グランプリの審査員など多方面で活躍。

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