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2021.06.03 (Thu)

ビジネスを成功に導く極意(第36回)

建設の人手不足を解消する、子ども向けキャリア教育

 恒常的な人手不足に悩む建設業界で近年、早期キャリア教育が進んでいます。国土交通省の「建設産業の魅力を発信する小学生向けキャラバン」、キッズデザインアワードを受賞した「こどものけんちくがっこう」などが、その一例です。ここでは、工夫を凝らした建設業界の早期キャリア教育の内容を紹介します。

各社が熱を入れる、建設の3Kイメージを変える取り組み

 建設業界は人手不足の慢性化が際立つ業界です。2020年7月に帝国データバンクが発表した調査では「従業員が不足している業種 第1位」でした。

 人手不足解消のために、大手建設会社や関連団体がいま力を入れているのが、子どもや親子をターゲットにしたキャリア教育です。小中学校への出前授業や子どもを対象にしたワークショップに加えて、親子で楽しめるイベントや会社見学などを実施し、「いかに建設業が社会を支える大切な仕事であるか」「テクノロジーの導入が進んでいるか」「高度かつ専門的な知識産業であるか」といったことを広く啓蒙しています。

 建設業界だけでなく、小売業や運輸業、ICT産業など、人手不足に苦しむ業界はほかにも増えています。「建設業のキャリア教育」は、これらの業界にとっても大いに参考になる取り組みと言えそうです。

国交省や大成建設が取り組むキャリア教育とは

 具体的な事例を見ていきましょう。国、NPO法人、民間企業、それぞれの特徴ある取り組みを紹介します。

 国土交通省が実施しているのが、建設業界の社会的な役割やものづくりの素晴らしさを語りかけ、交流する「学校キャラバン」です。2019年9月に千葉市立鶴沢小学校で開催された通算24回目のキャラバンでは、「災害」をテーマに、災害時に建設業界がどのように活躍するかを学んだり、ドローンが飛行する様子を見学できる内容が展開されました。ほかにもミニショベルカーの乗車体験など、小学生5年生を対象に約1時間半、楽しみながら学べるプログラムが提供されました。新型コロナウイルスの影響もあり、2020~2021年は開催されていませんが、対面での交流が可能となったら再開されるかもしれません。

 鹿児島大学建築学科環境建築研究室(鷹野研究室)と株式会社ベガハウスの産学協同により2016年4月に設立され、2018年にNPO法人となったのが、「こどものけんちくがっこう」です。「日ごろ何気なく触れている建物や住環境について、実際のものづくりを通して体験的に学ぶ場」というコンセプトで、月2回、鹿児島大学構内で小学3年生~中学生を対象にしたワークショップが行われています。「電動工具を使って椅子をつくる」「棚をつくる」といった定期授業のほか、「商業施設の屋上に子どもの遊び場をつくる」などの特別授業もあり、外部との連携も盛んです。コロナ禍においては、フィンランドやスウェーデンの人とインターネットを介してコミュニケーションを取りながら北欧の住まいや街を知る「世界の住まいを学ぼう」というオンライン授業も行われました。2020年度には日本建築学会教育賞、第14回キッズデザイン賞を、2021年度には科学技術賞を受賞しています。

 大手ゼネコンの大成建設株式会社は、2019年8月、横浜の技術センターで、小中学生親子を対象とした技術見学会を開催しています。ヘッドマウントディスプレイを装着した状態での重機の遠隔操作や、「無音響風洞実験棟」での高層ビルなどで発生する風切り音の体験など、最新のテクノロジーや高度な建設技術を目の当たりにし、子どもだけでなく保護者に対しても建設業の魅力を伝えることができました。

 ほかにも、株式会社清水建設発のNPO法人が運営する学びと遊びの体験プログラム「CANVAS」や、株式会社鹿島建設が運営する子ども向け建設ポータルサイト「カジマキッズアカデミー」、相羽建設株式会社の「こども工務店」など、さまざまな企業・団体が多くの子ども向け教育プログラムを展開しています。

全国の学校で「キャリア・パスポート」運用開始! 高まるキャリア教育の重要性

 2020年度より、全国の小中高校で「キャリア・パスポート」を活用したキャリア教育の取り組みがスタートしました。キャリア・パスポートとは、将来の夢や自分の成長、学び、感じたことなどを記しておくツールです。児童・生徒が自ら記録するというところと、小学校だけでなく、中学校、高校と引き継がれ、記録と振り返りが続いていくところが特徴となっています。

 こうした学校教育の流れもあり、いま、ますますキャリア教育が注目を集めているのです。子どもたちに仕事について知ってもらい、興味を抱いてもらうことが、いままで以上に人手不足の解消や業界の活性化に大きな意味をもつと考えられています。キャリア教育は、建設業界になくてはならない存在になっていくことでしょう。

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