営業を支える速効プラン(第1回)

攻める営業に必要なのは「後顧の憂い」をなくすこと

posted by 中村 俊之

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 攻めの営業で新規顧客を積極的に開拓するか、しっかり守って既存顧客をがっちり固めるか。会社にとってはどちらも欠かせない要素。このバランスをいかに決めるかが経営の舵取りです。しかしその前に、外へ向かうべき営業担当者たちの足下がしっかり固まっているか点検してみましょう。

もっと会社を出て顧客を開拓しろ、と言いたいが……

 会社にとって営業力は業績に直結するといえます。新規顧客を開拓する力だけが営業力ではありません。これまで積み上げてきた既存顧客、社長や設立時のスタッフが実績で集めてきた顔なじみ、こつこつ磨いてきた会社の評判や「看板商品」など、多くのものが営業力に含まれます。

 とはいえ、会社をさらに前進させ、10年、20年先の変化にも対応できる状態にしていくためには、顧客の新たなニーズを捉え、そして新たな顧客を作り続けることもやはり不可欠です。

 だからこそ、営業担当者には、社内にとどまらず、積極的に開拓にでかけてほしい、と思うのが経営者の本音でしょう。しかし、なかなか思うようには動いてもらえないこともあるでしょう。例えば、新規顧客に向かう前に片付けておくことが山ほどある、既存顧客からの連絡を待たねばならない、アフターケアも営業の役割、などなど、社員たちが「出かけることのできない理由」がすらすらと列挙するようなことはないでしょうか。そして、そんなとき、「言い訳はいらない!」と話を封じてしまえばよいのでしょうか。

既存顧客か新規顧客か。「1:5の法則」と「5:25の法則」

 既存顧客と新規顧客、どちらが大切か、という議論はどこでも発生するものです。この2つの顧客層に関する分析で、「1:5の法則」や「5:25の法則」と言われるものあります。

 「1:5の法則」とは、新規顧客に対する販売コストは、既存顧客の5倍かかる傾向がある、というもの。そして、「5:25の法則」は、既存顧客の離脱を5%改善すると、利益が25%も改善されるという法則です。どちらも既存顧客の重要性を伝えるものです。派手な新規顧客開拓戦略に注力しすぎると、コストばかりかかってたいへんなことになる、といったことをたしなめる考え方でもあります。こういった経験則からも、出かけない理由として、「既存顧客の重視」を挙げることはもちろん正しいといえるのです。

 しかし、ビジネスは生き物。同じ場所、同じ顧客でビジネスが続くかどうかわからないのも確かなことです。コストや手間がかかるとしても、会社にとって新規顧客の開拓はやはり重要なことなのです。

「言い訳」ではなく「言い分」に耳を傾ける

 この「正しいこと」と「重要なこと」のせめぎ合いに、会社としてどう立ち向かえばいいのでしょうか。シンプルな回答としては、リソースの状況を考えながらバランスを見て判断せよ、ということです。まずは、「リソースの状況を考える」、つまり社員たちの問題の整理を行ってみましょう。外に出ない社員の言葉を「言い訳」と捉えるのではなく、「言い分」としてしっかり整理するのです。

 たとえば、なぜ社内にいなければならないと思っているか。「あの人に電話をしてもいつも外出中と言われる」「朝から急ぎのお願いがあったのに連絡がとれたのは夕方だった」「留守電にいれた伝言が伝わっているか心配されてしまった」「不在時の顧客からの伝言がうまいこと伝わってこない」「慌ただしい時に顧客の伝言を取り違えてしまった」……

 こういった言い分をまずは俎上に挙げてみましょう。そして、どんな解決策が可能か、あらためて点検していくのです。本当に必要なのは、自分がその場で電話に出ることなのか、誰かに顧客の要望を聞いてもらうことか、留守番電話の内容を忘れないようにすることか。智恵を絞るべきところは、見えてきた本当の問題をどのように解決するかです。新規顧客か既存顧客かを悩む前に、目の前で解決できる課題があるのです。

「後顧の憂い」をなくすことは営業支援に直結する

 営業担当者は、社長や役員たちと並ぶ会社の顔。対外的な最前線といえる営業には、やはり前を向いていてほしいところです。自分が不在の際や電話に出られない際に、何が起こるかわからないという不安は、全面的に払拭しなければなりません。

 解決方法は実は単純なケースもしばしばです。たとえば、社外にいる際にも自分にどんな連絡が入ってきているかリアルタイムで把握できる仕組みや、留守番電話の履歴をメールのように社内で共有し確認できるシステムがあります。こういったシステムを導入するだけで、後ろ髪引かれる思いは軽くなるはずです。システム導入に合わせてルール作りを行えば、不在時対応のレギュレーションも一気に決めていけそうです。あるいは、社内のスタッフ同士のコミュニケーションをもっと密にすることが決め手になることもあるでしょう。

 整理された問題にあわせ、システムやレギュレーションを導入できれば、不在が欠点にはなりません。不在時の対応もまた、顧客からの情報整理や、顧客に対して会社の底力を示せるチャンスと見なせるようなタフな体制にすることも可能です。「後顧の憂い」がない状態こそ、営業がのびのび動けるとき。新規顧客か既存顧客かで悩んでいる時間などありません。経営者が真に作るべき戦略は、次のステップでどこに踏み出すかを考えることなのです。

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中村 俊之

中村 俊之(中村社会保険労務パートナーズ
【記事監修】

特定社会保険労務士、中村社会保険労務パートナーズ代表。1954年、東京都生まれ。2005年、社会保険労務士登録、同年に「中村社会保険労務パートナーズ」(文京区本郷)設立、代表として現在にいたる。30年以上にわたり人事・労務一筋に携わり、人事労務相談・研修講師・人事制度設計・書籍の執筆監修等を行っている。

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