2021.9.14 (Tue)

社員のモチベーションを高めるヒント(第33回)

優秀な人材は「ナラティブ」(物語)で採用する時代

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 Z世代(1990年代半ば~2000年代半ばごろに生まれた世代)やミレニアル世代(1980年代前半~1990年代半ばごろに生まれた世代)の若者たちは、働く企業を待遇や条件よりも、「志」や「物語」で選ぶ傾向が強いと言われています。そこで近年、注目を集めているのが「ナラティブ・マーケティング」と呼ばれる手法です。「ナラティブ」とは日本語で「物語」のこと。企業の志や思いなどを、物語を基点にして見せていき、共感と信頼を得る手法のことを指しています。今後、採用活動の中心となっていくであろうナラティブ・マーケティング。その概要や特徴、メリット、事例などを紹介します。

Z世代・ミレニアル世代は、給与よりもやりがい・志を重視

 日本最大級の学生コミュニティが実施した就職活動に関する調査によると、Z世代・ミレニアル世代の若者が「入社企業を選んだ理由」の第1位が「仕事の内容」で、続く第2位が「企業のビジョン・ミッション」であることがわかりました。一方で、「給与・待遇」と答えた人は全体の約25%(第4位)とやや少なめ。他の調査でも、「入社企業の決め手の第1位は『やりたい仕事ができる』、第2位は『働きがいがある』」「入社企業を『給与の高さ』で選んだ学生は約6%(第8位)」など、前述の調査と似たような結果が報告されています。

 これらの調査からもわかるように、近年の若者は、給与や待遇よりも、「どんな仕事ができるのか」や「仕事のやりがい」「企業のビジョン」を重視して入社する企業を選ぶ傾向があると言われています。また、生まれたときから社会課題に囲まれて生きてきた「SDGsネイティブ」であることが影響して社会貢献意識が高い人材が増えており、多くの調査で「企業の社会貢献度やその内容」「将来性・持続性」「理念・パーパス」を重視する向きが強まっていると指摘されています。

人の心を物語で動かす「ナラティブ・マーケティング」

 こうした世代的価値観に後押しされ、注目を集めているのが、企業の魅力を数字やデータではなく物語で伝える、ナラティブ・マーケティング(ナラティブ・アプローチ、ナラティブ・コミュニケーション)と呼ばれる手法です。

 ナラティブ・マーケティグは、もともと商品広告の世界で注目を集めていた手法です。例えば、実際の商品購入者からドラマチックな物語を聞き出して読み応えのあるインタビュー記事や動画の形にして多数展開したり、購入者への取材をベースにして物語性のある広告をつくるなどが挙げられます。実在の人物のドラマを多面的に見せることで、多様な価値観をもつ消費者が「購入後のイメージを自分事として捉えられる」「自分に重ねられる」というメリットがあるとして活用されてきました。また、物語のなかに商品の哲学や思いを盛り込むことで、お金やスペックでは伝えられない本質的な情報をじっくりと伝えられるようになる点も特徴です。本質的な情報を伝えることで、消費者と商品(企業)の間に、より強い共感や信頼感が醸成されるようになるのです。ナラティブ・マーケティングは、単に商品の売上が上がるというだけでなく、ブランドイメージを向上させ、消費者とのエンゲージメントを高める手法として、いまでは多くの広告で活用されるようになっています。

 こうした手法が採用広告の領域で広がるきっかけのひとつになったのが、物語訴求型の求人情報サイト「Wantedly」です。同サイトには、給与や休日といった条件を記載する箇所が一切ありません。あるのは、企業の理念や姿勢、考え方、メンバーやプロジェクトに関するストーリーを語るページのみ。Z世代・ミレニアル世代が求める「物語」を中心に見せることで、求職者側からは「企業の本質や顔が見える」、企業側からは「志の高い優秀な人材が確保できる」「ミスマッチを減らすことができる」と評価されています。

 Wantedlyが台頭してきた頃から、他の求人情報サイトや企業の採用サイトでも、多くの物語が掲載されるようになってきました。従業員のインタビューやプロジェクトストーリーに関するリッチな記事や動画を、定期的に、多数アップする企業が増えています。

ベンチャー企業や外資系企業なども採用、今後も広がりが予測される

 最後に、ナラティブ・マーケティングによって採用を展開している企業の事例をいくつか紹介しましょう。

 Wantedlyを活用し積極的な採用活動を行っているのが、オンライン診療に関するソリューションを開発するベンチャー企業です。元医師、元バレリーナ、元SEなど、さまざまなバックグラウンドを持つ従業員のインタビューを多数掲載することで、多様な人材が活躍する環境があることをアピール。また、定期的にMEET UP(カジュアルな会社説明会)を実施することで、求職者との結びつきをより強固なものにしています。募集を開始した当初は未上場の企業でしたが、ナラティブを意識した採用によって優秀な人材を獲得し、2019年に上場を果たしました。

 グローバルに展開する外資系のコンサルティング企業は、自社の採用サイトに、テーマに沿った多数のインタビューコンテンツを掲載しています。新入社員の1日を紹介する記事や、プロジェクトの幅広さを伝える座談会形式のインタビュー記事、若手の活躍について語り合う動画など、多種多様なコンテンツをラインアップ。多くの物語をさまざまな切口で見せることで、幅広い分野における優秀な人材を獲得することをめざしています。

 商品広告や採用広告だけでなく、例えばプロジェクトへの思いを伝えて資金を集めるクラウド・ファンディングなどもナラティブの流れを汲んだものだと言えるでしょう。人の心を動かすナラティブ・マーケティング。あらゆるPR活動の鍵になるものとして、今後も、強く意識しておきたい手法のひとつです。

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