接客の現場では、これまでマスク着用が禁止されていたケースもあるほどでした。しかし、コロナ禍において価値観は一変し、マスクを着用が当然、という風潮が強まっています。一方で、「笑顔がお客さまに届きにくい」、「話していることが伝わりにくい」という課題もあります。ここでは、マスクを着用した接客時の工夫例や接客業向けのマスク紹介など、Withコロナ時代に求められるマスク接客のポイントを探ります。
マスク禁止から一変、接客業におけるマスクへの見方が変化
ライフプランや保険の相談サービス「ほけんROOM」を運営する株式会社Wizleapが2020年1月に実施した調査によると、これまでの接客ではマスク着用が禁止されていたという回答が30%以上だったのに対し、「今回のコロナウイルス対策として、接客業の方がマスクをすることをどう思いますか?」という問いに対しては、「良いと思う」もしくは「どちらかと言えば良いと思う」との回答が96.77%に上りました。新型コロナの影響で、消費者の価値観が変化していることがわかります。
また、飲食店向けの不動産事業を行う株式会社ABC店舗が、2020年3月に都心の複合型商業施設で行った調査によると、施設内の8割以上の飲食店がマスクを着用して営業を実施。さらに、調査を実施した施設では「一部の従業員が任意でマスクを着用していた飲食店」は存在せず、全員の着用が徹底されていることが確認されました。
このように、新型コロナウイルスによる予防・拡散防止への意識の高まりにより、マスクを着用しての接客は当然の状況になっています。現在ではさらに一歩進み、マスクを着用した中で、より良い接客を提供するための取り組みも始まっています。
普段より大きな笑顔を、マスク越しの笑顔の作り方
ここで、マスク着用時の接客のポイントをご紹介します。
ひとつ目は、普段以上に表情を豊かにすること。マスクで顔が半分以上隠れているからといっていいかげんな笑顔で済ませようとすると、目が無表情になり、冷たい印象を与えてしまいます。思いきり口角を上げ、目尻を下げることを意識する必要があります。
2つ目は、いつも以上にハキハキと話すこと。口を大きく開ける、声のボリュームを上げるなど、相手にしっかりと伝えることを意識した話し方を心がけましょう。
マスクを正しく着用することもポイントです。顔とマスクの間に隙間ができないよう、顔にフィットするサイズ・形のマスクを選び、鼻と口の両方を確実に覆うのが正しい着用法です。ゆがんだまま着用していたり、マスクの表面が汚れていたりすると、相手を不快な気持ちにさせてしまいかねません。
マスク着用接客の社員研修を行う企業が増えています。いち早く研修を導入したのは、日本航空株式会社 (JAL)の客室本部。同社ではさらに、心も楽しくポジティブでいることが自然と目元まで明るい表情につながるとし、「常に感謝の言葉を伝える」など、上司や先輩が率先して明るい環境づくりを推進しています。株式会社名鉄百貨店 の本店でも、週に一回、開店前に各売り場のマネージャーが集まり、マスクをつけて「笑顔トレーニング」を実施。その効果もあってか、マスクをした顧客の感情を読み取ることも接客の一部という考えが浸透し始めています。
笑顔の口元をマスクに印刷!? 接客業向けマスクも
マスク越しの笑顔の練習ではなく、好きな写真やイラストなどをプリントできる「オリジナルプリントマスク」を活用し、マスクのデメリットをカバーしようという動きも見られます。
上野の総合ディスカウント店「多慶屋(たけや)」では、布製品への写真印刷サービスを利用し、同社スタッフの、白い歯の見える笑顔の口元の写真をマスクにプリント。スタッフ全員が着用したところ、「いい取り組みだね」と声を掛けられるほか、記念撮影を求める顧客も。SNS上でも大きな反響を呼んでいます。
ウェブ制作会社の株式会社リーピーでも、会社のロゴをマスクに刺繍できるサービスを利用し、ロゴ入りマスクを会社の制服として導入。商談が必ず、「そのマスクどうしたんですか?」という会話からスタートし、場を和ませる一種の営業ツールとしても大活躍しています。
その他、ヘアケア商品の販売を行う株式会社earchが発売した耳にかけないマスクにも注目が集まっています。ヘアサロンからの「シャンプー時にひもが濡れてしまう」、「耳周りの髪をカットする際にハサミがひもにひっかかる」、「顔の輪郭や目・鼻・口のバランスが確認しにくく、最良のサービスを提供できない」といった声を受け開発されたもので、発売から約1カ月で、5万枚以上の売上数になったとのことです。
このように、Withコロナ時代においては、マスク着用は安心・安全のためのエチケットにとどまりません。オリジナルの工夫を加えることで、社員の一体感の向上や、他社をリードした接客にもつながるきっかけにもなるのです。
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