「なぜこの仕事に、そんなに時間がかかるのか?」「そんなどうでもいいことを、どうして一生懸命やっているのか?」
部下に対し、誰もがこのような疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
ひとつのことに集中して、手を抜くことを知らない部下は、ある意味では熱心ではありますが、時間を意識せずに仕事をしている点で大いに問題です。こんな部下に対して、上司はうまい「手抜き」のやり方を教えて、部下をマネジメントする必要があります。
ここでいう「手抜き」とは、「サボる」ということではなく、「効率化」するということです。作業を省きつつ、スピードと生産性を維持することができれば、組織全体のパフォーマンスは確実に向上します。
今回は、部下に対して上手な「手抜き」を教えて、業務を効率化する方法について考えてみます。
些細なことにこだわりすぎる部下をどう変えるか
部下が1つの仕事に時間を掛けすぎるのには、もちろん理由があります。たとえば、「一度でも上司から注意されれば終わり」というプレッシャーを感じているケースです。ミスしないように気を配りすぎて、些細なことで時間を費やしてしまうのです。
こうした部下には、仕事が7~8割できた段階で上司のチェックを入れることを命じましょう。上司に「資料を仕上げるように」と命じられると、自分がこだわる部分には力を入れて仕上げるものの、そのほかの部分は手を抜いてしまうことも多いため、結局上司が補足をするハメになります。それならば、本人が不要な確認作業で満足してしまう前に上司がチェックを入れた方が、効率は良くなります。
また、やりかけの仕事をチェックすると、部下が資料を作成する過程がわかるため、方向性も修正できます。これを繰り返せば、部下の方も「ここは省いてもいいんだな」ということが判って来るでしょう。
既存のマニュアルを重視して業務を改善しない部下をどう変えるか
うまく手抜きできない部下の中には、社内の慣習を過剰に意識したり、前任者の残したマニュアル通りに従うことにこだわりすぎるような、型にはまったタイプの人もいます。一言で言えば「マニュアル人間」です。
たしかに既存の方法に徹底して従えば、失敗してもリスクを負うことは無く、波風が立つこともありません。しかし、それではいつまで経っても、効率は現状から改善されません。
こういう部下がいる場合は、定期的に新しい仕事に関わらせるようにすることが大切です。たとえば、一度もマニュアルに触ったことの無いような業務を、年に一回は任せてみましょう。人は自分の仕事のルーチンを離れると、目の前のことに対しての観察眼や集中力が増します。先入観が無い状態では、効率化できる手順も目につきやすいはずです。
そして、ある程度仕事を覚えたら、改善点について「文書で」報告するよう告げましょう。口頭ではなくわざわざ文書にするのは、部下が上司に文書報告をする際に、「特に何もない」とは書きづらいためです。文書を作成する中で、部下の頭の中には、無駄を省くためのアイデアが浮かんでくるはずです。そして報告を受けた内容で、良いものがあれば実際に採用してみましょう。こうすることで、ただのマニュアル人間だった部下も、業務を見直し、より良いマニュアルを作る、良い意味でのマニュアル人間に変わっていくことでしょう。
まとめると、部下が良い意味での「手抜き」を覚えるためには、手を抜く部分とこだわる部分を上司と部下で意識を合わせること、既存のマニュアルから新たなアイデアを生み出す機会を作ることの2点が重要です。これにより、部下は業務の隙間に“閃き”を発見し、会社に新たな利益を還元してくれることでしょう。
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