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他人には聞けないICTの“いま”(第48回)

薬局DXのいま、ロボット活用やドローン配送なども

 2020年の改正薬機法で解禁されたオンライン服薬指導。全国の調剤薬局や大学病院の薬剤部で導入が始まり、患者は薬局へ足を運ばなくても薬が手に入るようになりました。これに伴い、薬局業界のDXが急速に進んでいます。オンライン服薬指導にとどまらない、薬局×テクノロジーの先進事例を紹介しましょう。

診療から薬の受け取りまでを非対面で完結

 薬剤師向け情報サイトを運営するスマスタが薬剤師に実施したアンケート調査によると、「今後、薬局が生き残るのに必要な条件は何だと思いますか?」という質問に対する回答の第1位は「在宅対応」と「オンライン服薬指導」でした。

 コンビニよりも多いと言われている薬局が生き残るためには、オンライン服薬指導をはじめとするDX化が急務であり、すでにいくつかの地域で先進的な実証実験が行われています。

 最初に紹介するのは、ロボットを活用した事例です。アイン薬局を展開するアインホールディングスは、パナソニック、神奈川県藤沢市のFujisawa サスティナブル・スマートタウン協議会と連携し、医薬品のロボット配送に関する実証実験を行いました。これは、公道を自動走行する小型低速ロボットに処方箋医薬品を載せて、薬局から自宅へと配送する取り組みです。オンライン診療・オンライン服薬指導と組み合わせることで、診療から、服薬指導、医薬品の受け取りまで非対面で完結できます。

 大胆にロボットを取り入れているのが、大阪府の梅田薬局。医薬品棚の前にロボットアームを設置し、薬のピッキングや入庫作業をロボットが自動で行います。患者の待ち時間を大幅に削減するだけでなく、在庫管理や棚卸し作業も不要に。日本初のロボット薬局の開発に成功した事例として注目を集めています。

ドローン活用で、医薬品の即日配送を実現

 離島・へき地に住む人や、高齢で薬局に足を運ぶことが難しい人にとって、オンライン服薬指導は医療アクセシビリティの向上に大きく貢献します。しかし、通常の配送ルートでは処方当日に薬を自宅まで届けることはなかなかできません。

 そこで参考にしたいのが、JA愛知厚生連知多厚生病院と日本調剤、名鉄グループドローン共同事業体によるドローン活用の実証実験です。この取り組みでは、医薬品をドローンに荷積みし、知多半島の沖合約14㎞にある篠島へ20分程度で届けることに成功。振動や温度変化のデータも記録し、品質を保持しながら安全に飛行できることが立証できています。

 ほかにも、武田薬品工業とANAホールディングスが長崎県の離島間でドローンを使った医薬品輸送にチャレンジしたり、エー・ディー・イーら7団体が大分県竹田市宮砥地区に医薬品をドローンで即日配送する実験をしたりと、ドローン×医薬品配送の取り組みは活発に行われています。

 最近では、アメリカのドローン企業Ziplineが新型コロナウイルスのワクチンをドローンでガーナに輸送したことが話題になりました。コロナ禍の影響もあって、いまや薬局業界のドローン活用は世界的なトレンドになりつつあるのです。

医療型MaaSは、自治体が本格運用をスタート

 もう一つ紹介したいのが、長野県伊那市で2年間にわたって実証実験が行われた「モバイルクリニック事業」。トヨタ自動車とソフトバンクが共同出資するモネ・テクノロジーズと医療機器メーカーのフィリップス・ジャパンが連携し、モビリティー(移動手段)と医療を組み合わせた「医療型MaaS(Mobility as a Service)」をめざすプロジェクトです。病院や薬局に通うのが難しい高齢者へスムーズに対応し、また、医療従事者不足を解決するために、医療機器を搭載した専用車両に看護師を乗せて患者宅を訪問し、医師はオンラインで診療を行います。改正薬機法の施行に伴い、2020年からはオンライン服薬指導も取り入れました。実験の結果、患者からも医療従事者からもポジティブな意見が多かったことから、2021年4月からは伊那市の公共サービスとして本格運用が始まっています。

 近年はスタートアップ企業を中心に、薬局業界のDXを後押しする新しいサービスも続々と登場しています。一例として紹介するのは、薬剤師の働き方改革を軸にした薬局体験向上サービス「Musubi」です。業務状況や収益の見える化、薬歴業務の省力化、在宅業務の効率化を通して薬剤師と患者の双方の満足度を高めることができます。その他、オンライン服薬指導を中心とした調剤業務をサポートするクラウドサービス「Pharms」、かかりつけ薬局化を支援する薬局アプリ「kakari」、患者向けのオンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS」といったものがあります。

 これらのサービスやテクノロジーを組み合わせることで、薬局の可能性はさらに広がっていくでしょう。もしかすると、そう遠くないうちに、薬局業界から、医療の根幹を変えるような大きなイノベーションが巻き起こる日がやってくるかもしれません。

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