継続的にサービスが利用できることで、「所有」から「利用」へと購買行動を大きく変化させたビジネスモデル、サブスクリプション(以下、サブスク)。コロナ禍の環境でも、サブスクでビジネスを成功させている企業は少なくありません。ここでは、コロナ禍で注目されているサブスクビジネスや、サブスクビジネスを導入する際のポイントなどを紹介します。
「新型コロナの影響なし」が半数以上、「コロナ禍で成長」も2割超え
サブスクビジネスの支援を行うZuora Japan株式会社は、2020年3月に実施した「サブスクリプションビジネスにおける新型コロナウイルスCOVID-19のインパクト」という調査レポートを公表しました。調査レポートによると、サブスク事業をベースとしている企業のうち、「新型コロナの影響を受けていない」と回答した企業が53.3%。さらに、「サブスクの成長率が加速している」と回答した企業が22.5%もありました。多くの企業が苦境に陥る中、サブスクビジネスが強い理由はなぜでしょうか。
まず挙げられるのは、定期的な収益が期待できる点です。売り切り型ビジネスの場合、たとえば今回のような新型コロナによる災害時は、経済活動が停滞してしまい、ユーザーを獲得することが難しくなります。一方、サブスクビジネスであれば、過去に積み上げてきたユーザーの売上が成り立つため、災害の影響に左右されにくいのです。
定期的な収益を得ていくビジネスモデルのため、継続率・解約率といった情報からユーザーの推移が予測しやすく、先の売上の見通しが立てやすい点も、サブスクビジネスの利点です。
在宅時の「生活の質」を高めるサブスクが急成長
テレワークにより在宅時間が長くなった影響もあり、最近は花や菓子といった生活を彩るための商品を定額で届けるサブスクビジネスに注目が集まっています。
株式会社Crunch Styleが運営する「Bloomee LIFE」は、提携する全国の生花店から、毎週異なる花が届くサブスクサービスです。在宅時間の増加により、少しでも生活を彩ろうというユーザーの需要により、1月と比較してユーザー数が3倍にまで伸長しました。
さまざまな種類の菓子が定期的に届くサブスクサービス「snaq.me」を運営する株式会社スナックミー。100種類以上の菓子の中からユーザーの嗜好をもとにセレクトされた8種類を、2週あるいは4週に1回、定期便で届けています。利用者の95%が女性で、利用者数は毎月5~10%の割合で伸びているとのこと。新型コロナの影響で売上が減少した菓子メーカーへの支援策として、新商品を共同開発し、オンラインで販売するというコラボ企画も実施しています。
コロナ禍で苦境に立たされている小売店などの支援に特化したサブスクも。株式会社LD&Kを事務局とし、7月にスタートした「サブスクLIVE」。月額580円で、イナズマロックフェスなど全国の音楽ライブが見放題となるサービスです。「SAVE THE LIVE」をテーマに掲げ、会費収益を提携ライブハウスに分配することで、ライブハウスの存続を支援しています。また、ライブハウスやアーティストの負担が増えないよう、2021年3月までの配信に関わる機材やオペレーターは事務局が無償で支給するとしています。
今がサブスクビジネスの仕込み時、リスクを把握した事業計画の立案を
以上のように、サブスクを利用したサービスは数多く見受けられるようになりましたが、自社ビジネスに採用する場合にはいくつかおさえておきたい点があります。
まず、ユーザー数が損益分岐点を超えるまでに時間がかかるため、資金の捻出方法を検討しておくことが必要です。ユーザー数を増やすための宣伝広告費のほか、開発費や人件費といったコストが継続的にかかります。また、サービス内容はもちろん料金プランなどにも工夫を凝らし、対象とするユーザーが継続的に高い満足度を得られる仕組みを考慮することもポイントです。「SNSでサブスクを告知しよう」「利用頻度に合わせて複数のプランを選べるようにしよう」「海外出張などで利用できないユーザー向けに休会制度を設けよう」など、さまざまなアイデアを検討しましょう。
サブスクビジネスを軌道に乗せることができれば、継続的な収益を企業にもたらすチャンスとなります。With/Afterコロナの世界に向けて、今のうちにサブスクビジネスの導入計画を立てておくことは、事業継続と成長のカギとなるかもしれません。
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