各支店や拠点間でデータのやり取りを行う際に、通信速度や転送データ量、セキュリティ面で、自社のネットワーク環境を改善できないかと考える経営者は多いことでしょう。データのやり取りでメールやストレージサービスを介して行った場合、通信速度や転送できるデータ量には限界があります。また本社のサーバへ支社からアクセスしたい、または出張先からデータをダウンロードしたいというときに、通常のインターネット回線を利用すると情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティ面で不安が生じます。
それらの問題解決として、拠点同士を専用回線で結ぶという手段を講じる企業もありますが、拠点間の距離に応じた回線の敷設工事費などの初期費用や、その後の運用費用が大きな支出負担となっていました。
それらの問題を解消するためのネットワーク環境の1つが、VPN(Virtual Private Network)です。インターネット回線内に、仮想的な専用ネットワークを構築して、通信速度とセキュリティを確保しつつも、初期費用などの負担が軽減できるものです。
ICTへの設備投資は増加している
安定した社内ネットワーク環境の構築・改善など含めたICTへの設備投資を行う企業は、少なくありません。ネットワーク環境によって、企業の生産性を向上させられるという面もあり取り組んでいるのです。総務省の情報通信白書(平成28年度版)でも、企業のICT投資額や設備投資全体に占める割合が増えつつあると報告されており、ICT投資は生産性向上に必要なものの1つと考えられています。
しかし生産性の面も重要ですが、そのコストを抑えることも課題です。さらに、情報漏えいや不正アクセスなどへのセキュリティの確保も同時並行で進めなくてはなりません。
コスト・生産性・安全を両立するサービス
まず生産性を高めるようなネットワーク構築への投資を検討する前に、拠点間を結ぶようなネットワークの構造を理解する必要があります。
ネットワークは2種類あり、社屋内やオフィス一室のみのように1カ所でネットワークが構築されるようなものを、LAN(Local Area Network)と呼びます。一方、本社と支店、拠点といったように、複数のLANを外部回線で接続するものがWAN(Wide Area Network)です。WANのネットワークを構築するには、外部回線と接続するサービスが必要となります。
WANを接続する回線サービスには大きく分けて、専用線とVPNの2種類があります。専用線は自社で専有している回線のことです。1990年代までのインターネット勃興期までは、専用線を本店と支店、支店と支店などにWANのネットワークを構築している企業が多く見受けられました。
しかし専用回線は敷設のたびに工事が必要で、拠点の数や距離に応じてコストがかさみます。このような初期費用の問題点を解消してくれる接続サービスが、VPN(Virtual Private Network)です。VPNは、既存のインターネット回線などを利用しますので、敷設工事の必要がないため、初期費用を抑えることができます。また仮想的に他ユーザーの通信と分離する仕組みになっているので、専用回線に近い通信速度やセキュリティを確保できます。
VPNは生産を高めるようなテレワークが可能に
VPNは拠点間のデータやり取りだけでなく、出張や在宅勤務などといったテレワークにおいても、セキュリティ対策が可能なネットワークです。たとえば、出張は拠点などの特定の場所で通信を行うのと違い、その都度で場所が変わります。また在宅勤務となれば、不特定多数からのアクセスが増えるでしょう。そのような利用状況でも、仮想的な専用回線となるVPNならセキュリティの安全を確保しながら、オフィス外での業務が行えます。今までセキュリティなどの面から、移動や出社に費やしていた時間を業務に回せるようになるというメリットがVPNにはあり、従業員の生産性向上を期待できるのです。
VPNの導入は、コストやセキュリティといったニーズだけでなく、生産性にも寄与するソリューションといえるでしょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年1月25日)のものです。
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