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ビジネスマガジン(第14回)

コスト削減だけではない、BYOD(私的情報端末の業務活用)導入のメリット~成功のカギは、制度・ルールの整備にあり~

posted by 岡安 裕一

個人レベルでのスマートフォンやタブレット端末の利用が浸透し、大企業だけでなく、中小企業でもBYOD(私的情報端末の業務活用)が検討され、導入されるようになりました。
しかし、コスト削減を主目的としてBYODを導入した企業では、必ずしも成功とはいえない事例も見られるようになりました。BYODのメリットや問題点を整理し、単に流行に乗るだけではない、BYOD導入の成功の勘所をお伝えします。

1.BYOD(私的情報端末の業務活用)とは?

BYODは、”Bring Your Own Device”の頭文字をとった略語であり、「私的情報端末の業務活用」や「私有IT機器の業務利用」などと訳されます。
つまりBYODは、「従業員が保有するパソコンやスマートフォンを業務に利用すること」を企業が制度として導入することと説明できます。
BYODが多くの企業で導入されつつある背景には、スマートフォンやタブレット端末が市場に浸透し、個人の保有率が非常に高くなっていること、BYODの導入により業務効率化が見込まれること、様々なワークスタイルが求められていること、企業側と従業員側双方にコストメリットがあることなどが挙げられます。
しかし、単にコストメリットだけを追い求めてBYODを導入した企業では、本来の目的である従業員の生産性向上などの恩恵を受けることができず、セキュリティに対するコストやリスクの増大、従業員に不満が生まれるなどのデメリットが目立ってしまうことも増えています。

2.BYODのメリットとデメリット

BYOD導入の検討にあたっては、何のためにBYODを導入するのかという目的を明確化し、メリットとデメリットを正しく認識して、その目的を達成できるかどうかを正しく判断する必要があります。
一般的なBYODのメリットとデメリットを整理すると、以下のようになります。

まず、メリットですが、コスト面では企業・従業員ともに双方が費用を負担する形にすることで、双方にメリットをもたらすことができます。企業側が費用を負担しない場合には、従業員の反発などが起こる可能性がありますので、注意が必要です。

次に、業務効率化の面では、必要な情報に必要なタイミングでアクセスでき、いつでもどこでも業務を行えることがメリットとして挙げられます。例えば営業担当者が見積書作成のために会社に戻る必要もありませんし、小さなお子さんのいる従業員の在宅勤務を認めることにより、様々なワークスタイルを実現することも可能になります。また、業務効率化により残業時間の削減などが実現できれば、企業・従業員双方にメリットがあるといえます。ただし、コストを考慮しないならば、これはBYODではなく、業務用端末を支給することでも実現できます。コストを押さえつつ、業務効率化を行えることが、BYODのメリットといえるでしょう。

セキュリティ面では、主にデメリットが語られることが多いBYODですが、適切な対策を取ることでそのデメリットは回避できます。スマートフォンの普及などにより、実際には企業側が認めていないにも関わらず、私的情報端末が無許可で利用されていることが増えてきていますが、BYOD導入をきっかけとして、私的情報端末の利用のルールを整備し、技術的な対策を行うことで、隠れたBYODをなくし、セキュリティリスクを減少させることが可能なのです。

その他に、会社が従業員の通信費などを負担することで実質的に福利厚生を手厚くできることや、従業員から見た場合、自分の好きな端末を選べるということで、従業員満足度の向上につながる可能性もあります。

次に、デメリットを見てみましょう。

コスト面では、セキュリティ対策に持ち込まれる私的な情報端末を管理するためのソフトウェアやサービスの導入を行う場合、新たな費用負担が発生することになります。従業員から見た場合、個人で情報端末を保有していない場合には、新たな費用負担が発生する可能性があります。

業務効率化の面では、主に従業員側の問題として、業務とプライベートな時間の区別が不明瞭になることが挙げられます。いつでもどこでも業務が行えるということで、実質的な業務時間外のサービス残業を誘発することにもなりかねません。
業務用の情報端末であれば、電源を切っておくという対応ができますが、私的情報端末を利用する場合、業務から逃げられないという心理的負担にもつながります。

セキュリティリスクは、BYOD導入の際の大きなデメリットとして挙げられ、基本的には、企業・個人双方にとって増大すると考えてよいでしょう。ただし、私的情報端末からアクセスできる情報を制限し、端末上に業務関連のデータを残さないような仕組みなどを利用するで、ほとんどの場合そのリスクは抑制することが可能です。

その他のデメリットとしては、例えば社外で業務を行うことがない管理部門の従業員のみが、個人的な通信費削減の恩恵に与れない場合、一部の従業員の間で不満が募るといったことも考えられます。

3.BYOD導入における3つのポイント

BYODのメリットとデメリットを踏まえることで、どのように制度を導入すれば、その効果を最大限に得ることができるのかが見えてきます。
BYODの導入にあたって重要なポイントを3つご紹介しましょう。

1点目は、「コスト的なメリットだけを追い求めない」ということです。

BYODの導入に当たっては、コストが優先されがちではありますが、「業務の効率化」や「業務改善」、「ワークスタイル変革」などを主たる目的として考えるべきです。
コストを優先させてしまうと、一方的に従業員にコスト負担や精神的な負担を強いるようなことになり、セキュリティ対策が疎かになってしまいます。
BYOD導入の検討の際には、「ほんとうに業務効率化が図れるのか」、「顧客に対して新たな価値を提供できるのか」、「従業員に新たな負担が発生しないか」といった視点を持ちながら、自社にとっての最適なワークスタイルを検討することが重要です。

2点目は、「ソフトウェアでのセキュリティ対策」です。

セキュリティ対策では、通常、限られた場所でしか利用できないようにするなどの物理的な対策、セキュリティ機能を実現するソフトウェアによる対策、ルールの整備や社員教育を中心とした運用・教育による対策などが実施されます。
BYODでは、物理的対策に限界がありますので、ソフトウェアと教育・運用を併せての対策が中心となりますが、教育や運用ではどうしてもミスなどを防ぐことはできません。そのため、万一紛失などのセキュリティ事故が発生しても最終的な情報漏えいにはつながらないようなソフトウェア上の対策が必須です。

3点目は、「社員間の公平性をきちんと担保する」ということです。

一部の従業員のみにメリットが発生したり、逆に負担を強いたりするような制度の場合、従業員に何らかの不満が募ることになります。例えば、業務時間外の作業が増えてしまう可能性がある場合には、労働裁量性の対象となる従業員にのみBYODを導入し、プライベートと業務はきっちり切り分けたいという従業員が一定数いるような場合には、BYODを強制するのではなく、企業からの情報端末の支給も選択肢として選べるような形が望ましいでしょう。

BYODは多くのメリットとデメリットをもたらす可能性があります。表面的なメリットを追い求めてしまうと、デメリットだけが目立ってしまうことになりかねません。コスト削減や技術的な方法論だけではなく、自社にとっての最適なワークスタイルを実現するための手段としてBYODを活用し、自社に最適な制度やルールを整備することが、その成功の第一歩となり得るのです。

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岡安 裕一

岡安 裕一

中小企業診断士。ITコンサルティング企業で営業・マーケティング業務に従事後、教育ビジネスのベンチャー企業の創業期に参画。中堅・中小企業へのWebマーケティング支援やクラウドサービス導入支援を中心に活動中。

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