2016.2.1 (Mon)

ビジネスマガジン(第10回)

自社にしかできないことがお客さまにとっての魅力~独自のポジションを確立する

posted by 吉野 太佳子

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

マーケティングをテーマとした連載の3回目です。前回は具体的にお客さま像をイメージすることで、自社がやるべきことが明らかになることをご説明しました。最終回となる今回は、ターゲットとする市場で独自のポジションを確立していく方法と、中小企業にこそ有効なホームページでの訴求について取り上げます。

独自ポジションで競争を回避する

市場における「ポジション」とは、その市場における自社の立ち位置を表します。
市場は、競合他社でひしめき合っています。そのような市場で、中小企業が大企業と同じようなことをしようとしても、非常に困難だということは容易に想像がつくと思います。仮に大企業が存在せず、似たような規模の企業が多数存在する場合でも、熾烈な価格競争に陥って企業体力が消耗し、得られる利益はわずか、もしくはマイナスになっているかもしれません。しかし、独自ポジションを確立することで、商品やサービスを提供する上で優位にコトを進められるようになります。自社の優位性を発揮して市場を獲得するポジションが必要なのです。
独自ポジションの確立ができている市場には、競合他社はいません。そのため価格競争を回避します。「そんな市場が一体どこにあるのか」といった声が聞こえてきそうです。そのとおり、今はどこにも存在しません。その市場を自ら創り出し、その市場で自社の立ち位置を確立する、それが独自ポジションを確立するということなのです。

「潜在ニーズ」で独自ポジションを見出す

「独自」とは「オリジナルである」ことで、「他にない」「他と違う」ということです。独自ポジションを確立する方法の一つは、前回のコラムでご説明した顧客の「潜在ニーズ」に着目し、既存の商品・サービスを「潜在ニーズ」に合わせて改善し、自社以外では提供できないオリジナリティを持たせることです。
以下、事例をご紹介して、具体的にご説明いたします。

【満足度が高まらないICT研修サービス】

A社は法人向けにICT研修サービスを提供する企業です。パソコンが社会に普及するに伴い、企業はICT研修を盛んに行ってきました。しかし今や学校教育で学ぶ時代となり、パソコンが使えるのは、もはや当たり前になっています。研修市場は以前に比べ衰退しているのですが、まだまだ大手研修企業が存在しており、多くの中小企業も追随しています。そのような中でA社は、お客さまから聞こえてきた不満の声に「潜在ニーズ」を見出します。

<お客さまの不満>

研修の窓口となる人事部は、社員によりよい研修をと毎年企画を練って、その企画に沿った研修会社を探して導入しています。しかしその努力は報われず、社員からは「忙しいのに…」と不満の声、経営層からは「研修の成果が事業に反映できていない」と人事部の評価は下がる。なぜそのような不満がでるのでしょうか。

<切り口の変更>

A社は、その不満は実務と研修内容の乖離にあると考えました。そこで、ICT研修を「スキルアップ研修」ではなく、「業績向上に直結する研修」に切り口を変更し、テーマに沿った研修内容にアレンジを加えていきます。それがA社の「実務に沿ってカスタマイズされた研修」となり、実際に業務の現場で扱うデータを用いて業績に直結する研修を行います。

<お客さまの満足度向上>

お客さまにおいては、その成果はすぐに出ました。Webマーケティングで実際のログを使った研修だったため、研修受講者(お客さまである会社の社員)の受講姿勢に変化が現れ、翌月には売上が前月比で32%アップという大きな成果に貢献しました。経営層の人事部に対する評価は大いに向上し、その結果、A社はお客さまと長期契約を結び、その関連子会社の受注にもつながりました。

<A社の強みを活かす>

A社では、研修を担当する講師自身がA社の経営に参画しており、業績向上につながる経営的視点を持ち合わせていました。そのような視点を活かすことを自社の強みとして、お客さまに魅力のあるサービスを提供する(選んでいただく)ことができた事例といえるでしょう。

このように、お客さまの不満や、「こういうものがあったら、いいのに」といった要望や期待は、自社の商品やサービスを見直すきっかけを与えてくれます。

ホームページを発信ポイントにする

「潜在ニーズ」から市場を創造した場合、独自のポジションを築けても、確立するためには、お客さまに創造した市場を見つけてもらわなければなりません。「潜在ニーズ」とはお客さま自身がまだ気づいていないものであり、探していないからです。気づいていないお客さまとつながる取組みが必要です。
費用対効果を考慮すると、中小企業ではインターネットの活用が最も有効です。その方法は、お客さまの購買行動から検討します。
お客さまが問題解決を検討する場合、多くはインターネットで「顕在ニーズ」から発想されるキーワードを用いて検索します。そのため、ホームページの集客は「顕在ニーズ」を想定した「キーワード」対策が欠かせません。
自社のホームページに誘導できれば、次は「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」をシームレスにつなぐコンテンツ作りがポイントとなります。お客さま自らが「自分が必要としていたのは、本当はこういうことだった。」という「潜在ニーズ」に気づかせるコンテンツ作りです。つまりホームページで単に商品やサービスの紹介をするだけでは不十分で、商品やサービスを通して「お客さまのお困りごとを解決する」という提案をするのです。
事例A社も、ホームページによるお客さまへの訴求を本業と同等の経営戦略に位置づけ、経営資源を集中させることで、多数のお客さまを獲得しました。

独自ポジションを持ち競合の追随を防ぐ

独自ポジションを確立し、その市場にいるお客さまに訴求できると、お客さまから「選んでいただける」ようになります。価値を実感したお客さまとの間には、強い信頼関係が生まれます。信頼関係で結ばれ、自社の商品やサービスをご愛顧いただけるお客さまは他の商品やサービスに乗り換えないので、追随する競合が参入する隙を与えません。このように独自ポジションの確立とは、先駆者としての優位性も継続して手にすることができるのです。
中小企業の強みは、柔軟性、迅速性、機動性の高さです。経営環境の変化に素早く対応し、強みとする市場に価値を提供できるのです。これまでのマーケティングで成果を手にできなかった中小企業こそ、自社にしかできないことを磨き、ニッチ市場を創造し、そこで優位性を発揮するチャンスは広がっています。

このエントリーをはてなブックマークに追加
Evernoteに保存
印刷

連載記事一覧

吉野 太佳子

吉野 太佳子

中小企業診断士。不動産、ファッション、製造業と幅広い業界で、商品企画、情報システム、ウェブサイト業務に従事した経験を持つ。ICTの利活用、ウェブマーケティング戦略で企業の成長を支援する経営コンサルタントとして活躍中。

メルマガ登録


「人材不足」を働き方改革で乗り越える


教育機関向け特集


自治体向け特集


イベント・セミナー情報


ICTコンサルティングセンタ

ページトップへ

close