ビジネスマガジン(第6回)

お客さまとの関係作り~Facebookで何を発信する?

posted by 須田 俊江

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Facebookで自社の情報を発信する企業が増えています。しかし「コストがかからないから」という安易な動機で開設したところは、事業に活用しきれていません。以下にご紹介するA社もその内の1つです。A社が上手く活用できなかったのは何故なのでしょうか。今回はその理由をひも解きながら、Facebookのビジネス活用について考察します。

A社のチャレンジ

A社は業歴60年以上、飲食店向けにある食材を扱う卸売業です。拠点とする地元の飲食店と密な関係を築いて、事業を展開してきました。しかし消費者の嗜好の変化や店主の高齢化で、店をたたむ得意先が相次ぎ、従来の事業だけで売上を維持していくのは困難になってきました。そこでA社は今後の生き残り策として、高い評価を受けているA社名を冠した自社ブランド商品を一般消費者向けにリニューアルし、店頭や直販で展開することを決断しました。そして既存業務の傍ら、新事業の立ち上げに着手しました。
A社の最盛期には多くの従業員がいましたが、現在は5名体制。しかも本業の売上低迷のなか、新事業に投資できる潤沢な資金はありません。しかし従業員のチャレンジ意欲は高く、消費者向けにパッケージングした商品を地元小売スーパーなどの店頭に置いてもらい、陳列の魅せ方やPOP等を工夫、改良を重ねながら、小売ノウハウを蓄積しています。
またA社は、新しい販路としてネット通販も視野に入れています。ここ数年、卸売業の漸減を多少なりともカバーするために、伝手のある商材をネット通販してきた経験があり、期待を寄せています。しかし既存の通販サイトは、本腰を入れて運用してきたわけではなく、ネット通販のノウハウは皆無です。

社長の失敗

新事業に着手して1年弱が経過し、消費者向け商品は地元スーパー等での取扱いが増え、また売上も少しずつですが増えてきました。リピート客もついたようです。地元における企業の知名度、信頼感、卸売業で培った営業力が発揮された結果です。
一方、当初の目論見のネット通販は、通販サイトに商品はアップしたものの、未だ成果には結びついていません。社長はホームページで商品や会社についての詳細な情報発信が必要だと考えました。しかしホームページは業者に更新を依頼しなければならないので、費用が発生します。それならば無料で、しかも自社でサイトが更新できるFacebookをホームページの代わりにしようと考えました。勢い込んではじめてみたものの、数回程度、情報をアップしただけで、その後は放置されています。「どのような情報を載せればいいのかわからない。」というのが、しばらくやってみた社長の感想です。
ところでFacebookは2種類あります。個人アカウントによる「個人ページ」と、会社等でアカウントが持てる「Facebookページ」です。Facebookデビューの社長は、操作に慣れるつもりで、まず「個人ページ」をスタートさせました。このようにFacebook機能の全体像を理解した上でビジネス版に移行するという選択は賢明です。しかし社長がFacebookの基本機能を理解していなかったことは問題でした。
Facebookは情報に接した利用者(「友達」)がその内容に共感すると、「それはいいね。」(【いいね!】ボタンを押す)と軽い意思表示を行い、「友達」をとおして情報が他の「友達」に拡散(【シェア】)するコミュニケーションツールです。Facebook上には、実に多くの情報が投稿されます。情報は”旬”のものであり、面白い情報であれば注目を集めて瞬時に拡散しますが、時間が経つと、ほとんど閲覧されなくなります。Facebookは人に興味を抱かせる、そして共感したらそれが拡散するツールなのです。Facebookが提供するこのような本質的な価値を理解せず、会社の基本的な情報を発信するホームページの代わりにFacebookを利用しようとしたことが、社長の混乱の根源にあったと考えられます。

Facebookのビジネス活用

Facebookでは、社長や担当者が日々の出来事や考えなどを発信すると、そこから消費者に人間性が伝わり、「こんな素敵な会社なんだ。」と感じるファンと信頼の絆を強くすることが期待できます。また、新しく取り組んでいること、専門性の高い情報を提供することで、さりげなく自社のアピールを行うこともできるのです。このように理解できると、A社の社長もFacebookで何を発信すべきかをイメージできたのではないでしょうか。
実は、A社の強みは、飲食店である得意先の要望に応えて、最適な商品が提案できることです。消費者向けに商品を提供する場合、プロフェッショナルの商品知識は、食材にこだわりを持つ消費者にとって、とても魅力的な情報です。社長が分かりやすく説明する季節の変化で変わる商品の特徴や、取り扱いの注意点などは、商品に高い関心を持つ多くの消費者の好奇心をくすぐるはずです。そうなれば、FacebookはA社と顧客の信頼を築くコミュニケーションツールとして、またホームページに誘導する媒体として機能するのです。
Facebookを活用するポイントは、Facebookを万能選手と考えず、情報が蓄積するホームページと役割を分担させ、その特性にあった使い方をすることです。また、Facebookの目的を明確にしておくことも重要です。例えば目的には「会社紹介」、「集客」、「販売促進」、「サポート」等が考えられますが、どれを目的とするかによって、当然、ターゲットが異なり、ターゲットが期待するコンテンツが求められることになります。

自社の経営戦略において、ホームページやFacebook等が果たす役割は何でしょうか。これらは経営目標を実現するための手段ですが、戦略の全体像においてそれが不明確であると、手段ではなくお荷物になります。反対に「集客」「販売促進」などの目的が明確であれば、どのように運用すればよいかが自ずと明らかになります。Facebookのように簡易に扱えるツールは、ともすれば「やってみる」ことに意義を見出しがちですが、事業に資するツールに育てるためには、やはり経営の全体戦略における役割を認識することからスタートすることが重要です。

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須田 俊江

須田 俊江

中小企業診断士。情報処理技術者。中小企業のモノづくりから出口戦略まで、マーケティングを見据え一貫したご支援を得意とする。現場に密着し、経営者の想いを具現化することを信条とする。経営革新支援、企業再生支援実績多数。

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