2016.2.1 (Mon)

ビジネスマガジン(第3回)

見逃すな!お客様の課題解決こそビジネスチャンス~マーケティング・ミックスの4Cで顧客視点にスイッチする~

posted by 須田 俊江

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企業は事業活動を営むことで、社会に貢献しています。商品やサービスを売ることは、顧客にとって価値を提供しており、企業の存在意義はそこにあります。
今回から3回にわたり「マーケティング・ミックス」を取り上げ、顧客に価値を届けるマーケティングについて考えます。

1.「売るための仕組み」を顧客起点で考える

「マーケティング」とは、「売るための仕組み」のことです。しかし「どうやったら売れるだろう」と闇雲にアイデアを出してみても考えはまとまりません。
商品開発からプロモーションまでの一連の流れを「マーケティング・ミックス」というフレームワークに当てはめて考えると、マーケティング戦略をシンプルに体系化することができます。これらは各要素の頭文字をとって、4Pと呼ばれています。

【マーケティング・ミックスの4P】
•Product(製品)・・・・・・何を
•Price(価格)・・・・・・・いくらで
•Place(流通)・・・・・・・どこで
•Promotion(広告・宣伝)・・どのようにして

4Pは別個に検討するものではありません。ターゲット層に対して「優れた商品を開発し、それに適正な価格を設定し、商品を届ける適切な流通網を構築して、効果的な販売促進を行う」一連の戦略を策定するのです。4Pがバランスよく組み合わさり、整合性があって、はじめて「売るための仕組み」となって機能します。
4Pは、1960年代前半に登場した理論ですが、50年経た現在でも、マーケティングを考える際の基本となるフレームワークです。しかし社会の価値観が変わり、商品が市場に溢れ、顧客が多様化してくると、商品やサービスを提供する企業側の「売りたい」という考えだけで策定したマーケティングは、市場で通用しなくなってきました。
顧客は「商品やサービスが必要」だから「選んで、買う」のです。「どんな商品を作って売るか」では顧客のニーズとズレが生じます。「顧客は何らかの問題を抱えている。それを解決するためにはどのような商品・サービスが必要で、どのように提供すれば顧客が求める価値に合致するか。」という観点が求められているのです。顧客を起点としたマーケティングが、とても重要になってきました。それを考えるためのフレームワークが「マーケティング・ミックスの4C」です。各要素の頭文字をとって4Cと呼ばれています。

【マーケティング・ミックスの4C】
•Customer Value(顧客の価値)・・・その商品・サービスが顧客にもたらす価値は何か
•Customer Cost(顧客の負担)・・・その価値を入手するのに顧客はいくら負担するのか
•Convenience(顧客の利便性)・・・その価値を顧客は容易に入手できるか
•Communication(顧客とのコミュニケーション)・・・企業のメッセージを顧客に正確に届け、逆に顧客の声を企業が聞く仕組み

4Pと4Cは、「売り手の視点」と「買い手の視点」という対の関係にありますが、マーケティング・ミックスには、双方の視点が必要です。さらに4Cは、「顧客が抱える問題と真正面から向き合う」ことです。ビジネスの種は、その解決にあるといえるでしょう。
以下にご紹介するA社は、顧客の「お困りごと」を解決して成長している企業です。A社のマーケティング戦略をマーケティング・ミックスの4Cで整理すると、得意先から圧倒的な支持を得ている競争優位の要因が見えます。

2.顧客の課題解決が支持を得る

A社は飲食店向けにカタログ通販を行う食品卸売業で、ある分野の食材を扱っています。競合が不在の早期に通販市場に進出して事業を拡大し、今でも高い市場シェアを維持しています。

【A社の4C】

■Customer Value
いつでも安定した品質の食材調達が可能なので、仕入時間が節約され、人件費が削減できる。また注文した翌日には、指定した時間に食材が配達されるので、在庫を抱える必要がない。

■Customer Cost
相対的に価格が安い上に、カタログ販売なので価格変動がなく、仕入コストが安定する。

■Convenience
店から電話やFAXで注文するので手間がかからない。1点からの注文が可能。取扱いアイテムは幅広く、必要なものがほぼ揃っているので、まとめて注文できるのも便利である。

■Communication
カタログは年2回届けられる。紙面は随所に飲食店を意識した工夫がされていて、分かりやすい。電話注文の対応オペレーターは取扱商品を熟知し、店に合った食材を提案する。

このようにA社のビジネスは、飲食店にとって単に原価削減につながるだけでなく、仕入業務にかかる問題を解決することで、トータルの経費削減を実現するものです。顧客を起点としたマーケティング戦略が策定されています。

3.ICTの活用が顧客に新しい価値を生み出す

ところでこのビジネスモデルは、ICTの活用がポイントです。A社はICTを導入することで、顧客の価値に応え、利便性を提供して事業を成長させています。

(1)ERPで得意先の課題に応える(Customer Value)
得意先は経費削減に直面していますが、A社は仕入負担軽減、小ロット、即納を可能にすることで、その解決策を提供しています。これは、受注から出荷までの業務を統合的に管理するICTシステム(ERP:Enterprise Resource Planning)の導入で実現しました。オペレーターが電話やFAXで受注した情報は、瞬時に配送センターと共有し、自社倉庫の在庫から商品がピッキング、梱包されて、その日のうちに出荷されます。
さらに商品管理のシステム化に伴い納品ミスがなくなり、また倉庫業務の人材を食品加工部門に移動させて付加価値の高い商品群を強化したことで、顧客満足の向上につなげています。

(2)CTIで注文の煩わしさを低減する(Convenience)
電話を顧客データベースと連携させたシステム(CTI:Computer Telephony Integration)も導入しました。これにより、注文の電話を受けたオペレーターは顧客情報を参照しながら的確な受注を行うため、得意先にとって注文にかかる時間はさらに短縮されました。

このようにA社では、「顧客が抱える課題を解決する」ためにICTがあり、A社ビジネスの根幹を支えています。そして顧客の利便性もICTで向上させています。一般的に業務効率化を目的とすることが多いICT活用ですが、4C視点に置き換えてみると、それも顧客に対して価値を提供していることに気づきます。
4Cは「売れる仕組みづくり」において、とかく「売り手の視点」になりがちなところを「買い手の視点」にスイッチさせる機能を持っています。それはまた、新たなビジネスチャンスにつながるものでもあります。

今回はA社事例から「マーケティング・ミックスの4C」のCustomer ValueとConvenienceについて取り上げましたが、次回は「Customer Cost」をテーマにして、顧客にとっての費用負担について考えます。

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須田 俊江

須田 俊江

中小企業診断士。情報処理技術者。中小企業のモノづくりから出口戦略まで、マーケティングを見据え一貫したご支援を得意とする。現場に密着し、経営者の想いを具現化することを信条とする。経営革新支援、企業再生支援実績多数。

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