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ビジネスマガジン(第1回)

“共感”が人を動かす~インターネットで変わった消費者の購買行動~

posted by 須田 俊江

Facebookで産地が動き出しました

イメージ写真ある織物産地のメーカー数社が、近隣の美術大学で織物を学ぶ学生とコラボレーションして、オリジナル商品を作っています。学生たちは産地で織物技術を学び、若い感性でデザインを起こします。それをメーカーが商品化する取り組みで、すでに4年目を迎えています。東京での合同展、展示会出展をとおして商品力を磨き、商標を取得して商品化して、市場に投入したものも多々あります。

産地のメーカーは、高い技術力で得意先のOEMも受注が安定していた時代はよかったのですが、今やモノづくりの拠点は海外に移り、低価格競争にさらされています。得意の技術をどうやって活かしていくかは、今後の事業方針と相まって、喫緊の課題です。新たな挑戦の一つが、自社商品を作り、ブランドをつけて販売することであり、学生とのコラボレーションも、そうした取り組みの延長線上にあります。

学生たちにとっても、自分の作品を職人がカタチあるものにし、場合によっては商品化につながるこの取り組みは極めて意義あることです。多くの学生が自分の活動をFacebook、TwitterなどのSNS(交流サイト)で発信しています。このSNSをとおして、実際に産地に足を運ぶ人が生まれています。人の気持ちを産地に向かわせているのは、SNSのどのような力なのでしょうか。

インターネットで顧客の購買行動が変化しています

インターネットのインフラが整備され、ユーザー自身がインターネット上に容易に発信できるようになりました。この小さいけれど多数の情報がインターネット上に蓄積されるようになり、ユーザーは購入したい商品、行ってみたい店舗、受けてみたいサービスを検討するにあたって、自分と等身大の経験者の感想やアドバイス、いわゆる「口コミ」を参考にすることができるようになりました。これが消費者の購買行動に大きな影響を与えました。①インターネットで商品・サービスについての情報を自ら探し求める、②同じ消費者や専門家の意見を参考にする、③購入後は実際に使った感想をインターネット上に公開して他の消費者と情報共有する、というプロセスです。提供元による情報発信と広告では作り出せない「口コミ(称賛)」がポイントなのです。

一方、生活者の消費の現象は「消費」より「倹約」へ、「過剰」より「適量」へ、「虚飾」より「実質・本質」が求められています。その中で、消費そのものが「自分の生き方」に関わるものとなり、消費する商品やサービスが持つストーリー(フェアトレード、産地技術、復興支援など)、提供する企業の普段の姿や社会活動などが重要になっています。単に商品の良し悪しだけでなく、その商品に「共感」できるかどうかが、生活者にとって極めて重要な要素となっています。消費の考え方が、これまでの「“量”の追及」から、「“質”の追及」に、そして「生活の“質”」から「生き方の“質”」に変わっているのです。

こうした消費の現象に、Facebook、TwitterをはじめとするSNS上で、ユーザーは情報に共感すると、例えばFacebookの「いいね!」、TwitterのRT(リツイート)を押します。SNSはそれらを集約し、各ユーザーにとって有益な情報を等身大の知人のフィルターを通して選別して提供します。この情報連鎖のプラットフォームにおけるキーが、「共感(いいね!)」であり、その根底には、共感した情報を友人・知人に教えたいとする想いがあります。

このようにユーザー同志のSNSを介した情報拡散が顕著になり、SNS上に発信された情報に対する賛同や共感する気持ちが、購買行動をはじめとする次のアクションの誘引となっています。織物産地から学生たち自身によって発信された情報は、それぞれの友達の関心と共感を呼び、「いいね!」をとおしてひとつのコミュニティを形成しています。織物産地に実際に足を運ぶ人々は、このコミュニティで産地の取り組みに興味を抱き、行動した人々です。現地で商品が生み出される背景を知り、納得して購入する新しい流れが、この産地で始まっているのです。

顧客は「どこで」でも購入します

時代はSNS、スマートフォンの普及と相まって、販売チャネルをも変化させています。
従来、顧客にとって商品の購入は店舗、通信販売、ネットなど複数のチャネルがあり、売り手はそれら顧客接点に個別に対応(マルチチャネル)してきました。しかし現在、顧客はそれらの垣根を越えて行動し、例えばネットで商品情報を取得し、リアル店舗で商品を確認し、在庫がなければネットで商品を購入することもあります。あらゆる顧客接点の統合・管理(オムニチャネル)が必要な時代となり、そこにおいては売り手目線の「いかに売るか」から、買い手目線の「いかに買っていただくか」という発想の転換が必要です。リアル店舗とネット販売をつなぐ顧客管理や販促管理、販売管理などがポイントとなり、顧客はターゲットではなく、共感者・ファンであるという認識を持ったコミュニケーション手法が求められるなど、ICT活用の環境づくりが進んでいます。

社会の消費に対する意識の変化、そしてSNSとスマートフォンの普及で、購買における顧客心理は大きく変容しています。顧客心理の変化をキャッチすることが、行動を理解し、「買っていただく」ための施策を検討することにつながります。そこにICT活用が不可欠となっていることを理解しておきたいものです。

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須田 俊江

須田 俊江

中小企業診断士。情報処理技術者。中小企業のモノづくりから出口戦略まで、マーケティングを見据え一貫したご支援を得意とする。現場に密着し、経営者の想いを具現化することを信条とする。経営革新支援、企業再生支援実績多数。

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