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2016.02.01 (Mon)

経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第7回)

人材育成にも助成金の利用を!

1.自社にとって必要な人材育成を考える

企業経営においては「人材」が最も大切あるとよく言われます。特に大企業に比べて「カネ」や「モノ」の面で制約条件が多い中小企業にとって、「人材育成」こそが会社の存続・成長へのカギであると言っていいでしょう。とりわけ若い会社では、従業員育成とともに、経営者、管理者自らも己を高めてゆくことで、会社は成長してゆきます。

会社としてどのように人材を育成していくべきかを考え、また社員自身に自分がどのように成長していきたいかを決意させる時間を持つことは会社の成長にも必要な機会といえるでしょう。

人材育成とは、「仕事ができる社員を育てる」といった単純な目的で行うものではありません。もちろんビジネスマンとしてのマナーや対人感受性など、どの会社で働くにせよ最低限必要な能力はあります。

しかしながら一般論ではなく、あくまで「自社で働く社員」の人材育成を考えるときには当然ながら、「自社でどのような役割を発揮してもらうか」という視点が欠かせません。

人材育成は「会社は将来的にこうなっていきたいが、そのためにはこんな人材が必要になる。だから社員にはいつまでにこんな能力を身に付けて欲しい」という会社としてのあるべき姿にリンクして行われるべきものです。

したがって自社にとって本当に意味のある人材育成のためには、

①自社の長期ビジョン、経営戦略等も踏まえ、いつまでにどのような人材が必要であるかを明確にする
②人材育成のための長期的な育成方針・教育プログラムを策定し、実践する

という2つのステップが必要になります。人材育成とは社員に目先の仕事を覚えさせることではなく、自社の未来を担ってくれる人材を育てることに他ならないのです。

2.社員の自覚を促す

会社として必要な人材像が明確になったら、社員自身に自分がどんな人材に育ちたいのかを真剣に考えさせることも大切です。

たとえば社員に自分自身の3年後の姿について考えさせます。「営業部門のトップになりたい」、「幹部として経営に関わりたい」などいろいろな希望が出てくるでしょう。それらが会社として必要な人材像と整合性がとれていることが確認できれば、社員は安心して努力していくことができます。

ここまで見てきたように、会社として「どんな人材を育てないのか」、社員として「どんな人材に育ちたいのか」、この2点を明確にすることが人材育成の出発点です。

3.人材育成の3つの手法

人材育成の代表的な手法に「OJT(On the Job Training)」、「OFF-JT(Off the Job Training)」、「自己啓発」があります。

OJTとは上司や先輩社員が実際の仕事を通じて必要な技術、能力、知識などを身に付けさせる教育訓練のことです。職場のミーティングや朝礼などもOJTの一種です。

OFF-JTとは日々の業務を離れて行う訓練のことで、代表的なものが自社内で集合教育を行うこと、外部の教育機関が主催するセミナーに参加させることなどです。また長期的な視点で他企業や研究機関などに出向させることなどがあります。

自己啓発とは社員が自分の能力を高めるために自主的に行う学習のことです。あくまで社員の自主性次第ですが、会社としてはその自主性を引き出すための雰囲気作り、きっかけ作りなどの工夫が必要になります。

人材育成においては、これらの3つの手法を上手に組み合わせて総合的に行っていくことが重要になります。

■人材育成の3つの手法

  内容 特徴 代表例
OJT 実際の仕事を通じて、必要な技術、能力、知識などを身に付けさせる 個々の社員の特性を踏まえた上で、マンツーマンで、じっくりとした指導ができる ・上司や先輩による日々の指導
・職場ごとのミーティングや朝礼
OFF-JT 日々の業務を離れて、特定のテーマについて集中して学習する 特定テーマについて体系的に学べる。OJTと違い、上司による指導のバラツキがない ・自社内での集合研修
・外部機関主催セミナーへの参加
・他企業、教育機関への出向
自己啓発 社員が自分の能力を高めるために自主的に学習する なぜ自己啓発が必要かという動機付けが不可欠。場合によっては教材取得費補助などの援助も効果的 ・専門分野の知識習得のための勉強
・ビジネスマンとしての教養を深めるために必要な様々な知識の習得

4.人材育成に使える助成金

さて、人材育成にかかる費用は、一定の要件を満たすことで国から助成金を受け取ることができます。助成金には教育を受けさせた事業主が受け取るタイプと、費用を払った受講者自らが申請し、費用の一部を受け取るタイプがあります。後者についても、会社は社員に制度の存在を告知したり、申請をサポートするなどで、利用を促進することが大切です。

これらの制度は雇用保険加入者が対象なので、残念ながら社長は利用することができませんが、会社中枢を担う管理職でも広く利用できるため、管理者の育成へも役立ててみればいかがでしょうか。

・キャリア形成促進助成金

(1)制度の目的・概要
企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、その雇用する労働者を対象として、目標が明確化された職業訓練の実施、職業能力開発休暇の付与、長期教育訓練休暇制度の導入、職業能力評価の実施又はキャリア・コンサルティングの機会の確保を行う事業主に対して助成金を支給

(2)要件
・年間職業能力開発計画に基づき、従業員に職業訓練を受けさせる場合
・中小企業事業主が、従業員の自発的な職業訓練などの受講を支援する制度を整備した場合

(3)給付の例
・技術部社員に情報技術関連の国家資格を取得させるために、職業訓練センターに通わせた。受講費用の一部と受講時の賃金の一部が助成された
・意欲と能力が高いパート社員達の正社員転換を促進するため、外部講師を招いて専門知識習得の研修を行った。講師費用の一部と受講時の賃金の一部が助成された

詳細は以下URLを参照
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/dl/pamphlet.pdf

・教育訓練給付

(1)制度の目的・概要
働く方の主体的な能力開発の取組みを支援し、雇用の安定を図ることが目的。

(2)要件
一定の要件を満たす雇用保険の一般被保険者(在職者)が厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の一定割合に相当する額 (上限あり)を支給。申請は原則として受講者本人が行う

詳細は以下URLを参照
https://www.hellowork.go.jp/dbps_data/_material_/localhost/doc/kunren_kyufu.pdf

(3)給付の例
・不動産会社の社員が自身のキャリアアップのために、宅地建物取引主任者の資格を取得するために通信教育を受けた。受講費用の一部が助成された
・新設させる海外営業部への異動を希望する社員が、英会話学校に通った。受講費用の一部が助成された

労働法制や労働政策に基づく制度は、経営者からみると「ひょっとすると、経営を害するおそれがあるのでは」と構えてしまいがちですが、実際には企業経営をサポートするものが多々あります。いろいろ利用してみてはいかがでしょうか。

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